「進歩派学者に批判された文在寅政権の官製民族主義」

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進歩派学者に批判された文在寅政権の官製民族主義

2008年4月、北京オリンピックの聖火がソウル市内のオリンピック公園に到着して行われた聖火イベントの際、北京オリンピックを支持する数千人の中国人留学生と反対するチベットの人権団体「チベット平和連帯」が衝突する事件が起こった。

金属の破片や石などが飛び交う非常に危険な暴力事件だった。チベット平和連帯は「(留学生たちは)50人一組、合計90組でデモ参加者は4500人に達した」「大量の中国国旗があったのはやはり組織的な介入があったからだ」などと主張した。

この中国人留学生による集会は中国式の「官製民族主義」との批判が相次いだ。1940年代に毛沢東が共産主義を中国に根付かせる際、その原動力として下降浸透式の民族主義を形成させようとしたが、その古い手口をソウルで目の当たりにできたのだ。

『想像の共同体』の著者ベネディクト・アンダーソンは「19世紀の帝政ロシアが官製民族主義の起源」との見方を示している。王権が弱体化すると、権力を正当性化するため王が民族を前面に出したわけだが、これが官製民族主義の始まりという見方だ。

ニコライ一世当時のロシア教育大臣は国家としての三大原則を「ロシア正教」「全体主義」「民族主義」と規定したが、中でも先の二つの原則は「精神的隷属」とツァーリによる「絶対不可侵性」を強調するものだった。当時の民族主義は「国民を単一体とする政治的な紐帯」でこれは想像の産物とみなされていたが、ツァーリが前面に出ることでここから「官製民族主義」が形成されたという。もちろん官僚や御用学者たちがこれに荷担したのは言うまでもない。

この「官製民族主義」という言葉を久しぶりに耳にした。「進歩学者」として知られる高麗大学の崔章集(チェ・ジャンジプ)名誉教授がある学術大会で文在寅(ムン・ジェイン)大統領による三一節記念演説を「典型的な官製民族主義」と批判したのだ。韓国外交部(省に相当)と韓国国際政治学会が主催した学術大会だったが、崔氏は今の政府による日帝残滓清算の動きについて「官製キャンペーン」などと批判した上で「あまりにも葛藤的な文化闘争」と指摘し「文大統領と政府は官製民族主義を複数のイベントを通じて意識させようとしている」と主張した。

崔氏は文大統領が複数回にわたり「アカ」という言葉を使ったことについて「政府はイデオロギー対立を刺激し、その結果、キャンドル集会以前よりも激しいイデオロギー対立を引き起こしている」「今後100年は政治の発展など期待できないだろう」などとも述べた。

これに対してすぐとなりにいた韓国大統領府の文正仁(ムン・ジョンイン)外交・安保特別補佐官は「(文大統領による)アカ論争はイデオロギー対立の克服を呼びかけたものだ。これがそれほど大きな問題になるとは考えられない」と反論した。しかし崔氏の現状に対する見方については「本質を突いた」との評価が支配的だ。政府が自信を失ったときほど「官製民族主義」に走りやすいからだ。

キム・グァンイル論説委員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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