「脱原発の先進国ドイツを見習え」という考えの大間違い

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「脱原発の先進国ドイツを見習え」という考えの大間違い

東日本大震災で発生した原発事故を受け、「原発」と聞くだけで「廃止すべき」と答える「脱原発」な人々は意外と多いと思いますが、原子力エネルギーを日本からすべて失わせることは本当に正しい選択と言えるのでしょうか?

今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』では編集長の柴田忠男さんが、実際に脱原発をしたイギリスなどの事例を挙げてわかりやすく説明した、ある一冊の本を紹介しています。

『小池・小泉「脱原発」のウソ』

金子熊夫・小野章昌・河田東海夫『小池・小泉「脱原発」のウソ』を読んだ。タイトルは版元がつけたのであろうが、小池・小泉などイントロに過ぎない。

現在日本の「反原発」の強い逆風の中で、あえて信念をもって「原子力は日本にとって必要不可欠だ」と主張することが、日本人としての務めであると考える、極めて真摯でバランスのとれた内容の本である。

東京都知事、元首相の「原発ゼロ」は非常に無責任である。「一国の長期的なエネルギー政策は、国家百年の命運にかかわる大問題であり、一度や二度の総選挙の争点で終わるテーマではなく、そもそも目先の政争の具にすべきではありません」。小泉は元首相という立場上、それなりの影響力があるから問題だ。

小泉は、いわゆる「核のゴミ」の永久処分場を見つけられないことを挙げて、即時「原発ゼロ」を提唱し、原発問題を争点にして総選挙をやれば自民党は必ず負けると、野党や反原発派を煽りまくる。

ならば、日本のエネルギー政策はどうすべきか、原発の穴埋めを何でするのかと聞くと、再生可能エネルギーでできるというだけで、具体的な代案を全く示さない。無責任な言説である。

原子力発電は、郵政民営化といったチープな話とは次元の違う重要問題なのだ。

原子力発電は決して制御不能な技術ではない。著者らはもちろん再生可能エネルギーの一層の普及には基本的に大賛成であり、在来の火力、原子力、水力とバランスよく効率よく使っていくことが必要だという。

ただし火力の燃料はすべて海外からの輸入であり、毎年3兆円もの国費が海外に流出している。

我々は40数年前の石油ショックのとき、国家的危機を原子力発電で乗り越え、経済大国の地位を得たことを忘れている。燃やせば必ずCO2が出る化石燃料は、地球温暖化の観点から今後一層の規制強化が行われるし、安定
して輸入できるかは分からない。原子力は日本にとって必要不可欠なエネルギーなのである。

「ドイツを見習え」の大間違い

福島事故以来、集団ヒステリーになった日本人は正しいエネルギー選択ができなくなった。この本は文系的な人にもよくわかるよう書かれている。

エネルギーの奪い合いとなった21世紀の世界に「原発ゼロ」では、従来のような繁栄は望めないことがよくわかる。再生可能エネルギーはクリーンだが安定電源ではない。原子力をやるリスクとやらないリスクを比較すると、やるが正解と出る。

小泉が「原発ゼロ」を主張する一番の理由「核のゴミ」処理問題は、技術的に解決しているが、理解と支持が得られていない状態にある。

金子熊夫は「沿岸海底下に最終処分場を作る」という発想の転換を示す。陸地(例えば既存の原発の敷地内か国有地)から海に向かって斜めに坑道を堀り、海底下数百メートルの安定した地層の中に埋設する方式を公開している。

再生可能エネルギーと美しい呼び方をされている水力、バイオマス、地熱などがあるが、現実に多くを望むことはできない。主力は太陽光と風力になる。

ところが日本の太陽光発電の稼働率(年間8760時間のうち動く時間の割合)は12%、風力は20%程度だ。火力や原子力は80%である。需要に応じて安定した電力を供給できる火力発電や原子力発電の、代わりを務めるのは不可能である。

原子力発電にはベースロード電源として、年間を通して安定発電する役割を担わせ、太陽光、風力は、火力発電のバックアップを得ながら電力量(kWh)の供給をやらせればいいのだ。再生可能エネルギーは、決して火力や原子力の代替にはならない。発電割合25%が太陽光、風力発電の導入限度といえる。

脱原発の先行国として「ドイツを見習え」という意見があるが、これは大間違いである。

メルケルの政治的判断で2022年までに原発を全廃すると決めたが、実際はまだ半数が稼働中、電力の15%は原発で賄っている。2022年までに原発ゼロになり、それを埋めるだけの再生可能エネルギーが伸びなかったら、豊富な石炭で火力発電に頼れるが、CO2排出がともなうだけに必ず行き詰まる。

欧州諸国の中で日本の参考(反面教師)となる国はイギリスである。かつて世界有数の原発技術大国だったが、北海油田の発見で1980年代以降、原発新設がなくなった。近年、油田の枯渇が始まり、再び原発に依存しなければならなくなったが、長いこと原発を製造してこなかったため、技術力が失われ、現在では自力では建設ができなくなった。仕方なく、フランス、日本、中国に頼る。

日本の進むべき道は「原発推進」

「人間は常にプラス=ベネフィット(利益)とマイナス=リスク(危険性)を考えながら、現実的な判断をしてきた。原子力をやるリスクとやらないリスクがあるが、国家、社会レベルで考えたとき、ある程度のリスクがあっても、それを相殺するだけのプラスがあると思われるときには、それを実行する理性的な判断力が求められる」。原発を推進するのが日本の進むべき道だと思う。

好き嫌いにかかわらず、原子力はエネルギー資源小国日本にとっては、かけがえのないエネルギーであり、これを最大限利用することがわが国にとってベストの選択だ。

怖いから、嫌いだから、ということで原発ゼロにしてしまったら、日本はどうなるか。信頼できる安定的な電気が失われると、日本沈没である。

事故後、原発の安全性はどこまで向上したか?

世界で最も厳しい新規制基準を作ったのが、極めて高い独立性と権限を持つ原子力規制委員会と原子力規制庁である。

津波防護壁の設置と建屋の防水化、電源車や可搬式ポンプ・移動式ポンプ車などの配備、過酷事故への備えも万全である。福島事故の再来は必ず防げる。原発コワイの人もこの本を読めば、必ず安心できると思う。

それにつけても、この本のタイトルはバカすぎる。最も読んで欲しい若い人には見向きもされまい。タイトルを変えて出版し直して欲しい。

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