「内部留保は打出の小槌?」

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内部留保は打出の小槌?

共産党は半世紀以上前から「大企業は労働者から搾取した内部留保を貯めこんでいる。それを賃上げに回せ」と主張し続けている。その共産党が先日の党首討論でもモリカケしか言わずに呆れられたのを気にしたのか、その使い古した主張を引っ張りだしてきた。

共産・小池氏「トヨタの内部留保、使い切るのに5千年」
2018年6月30日06時40分
小池晃・共産党書記局長(発言録)
 
史上空前の利益を上げている大企業への減税をやめれば、社会保障の財源ができる。大企業には十分体力はある。

トヨタ自動車の3月期決算を見てみたら、子会社も含めて連結内部留保は約20兆円。毎日1千万円ずつ使っていくとする。想像できませんが、使い切るのに5480年かかる。縄文時代ぐらいから使い始めて、ようやく最近使い終わる。

このお金を生かしたら、何ができるか。内部留保を賃上げに回す。正社員の雇用を増やす。そうすれば、トヨタの車はもっと売れるようになる。トヨタ自動車の未来を考えて、私は言っている。法人税の減税をやめて社会保障の財源に回せば、将来不安が取り除かれる。そういう人がトヨタの車を買うかもしれない。こういうのを、経済の好循環と言う。

安倍さんの経済政策は破綻(はたん)が続いています。3本の矢、新3本の矢、合計6本も放って一つもまともに当たっていない。(川崎市内の演説会で)
https://www.asahi.com/articles/ASL6Y7JW3L6YUTFK021.html

ネットでは「内部留保が現金で豊田家の金庫に詰まれてると思っているらしい」などと呆れられているが、言葉の意味を知らない人には説得力がある。

「内部留保」という言葉は50年経っても使えるマジックワードなのである。

安倍政権は経済面でも成果を挙げており、政権交代前の2012年度には約44兆円だった税収は2017年度には14億円近く増えて58兆円兆円近くになる見込みだ。経済指標も大きく改善しており攻め手がないのである。

だからケチをつけるには内部留保や実質賃金、非正規雇用、あるいはドル換算のGDPなどを持ち出すしかない。「大企業は内部留保を貯めこんでいるのに、安倍は実質賃金を引き下げてけしからん」というわけだ。

数日前にもこんなツイートがタイムラインに流れてきた。

このツイートは、何日か前に有名ブログ「パチンコ屋の倒産を応援するブログ」さんで取り上げ、実質賃金と企業の内部留保とは関係がないと指摘されている。

関係がないと言い切れないとは思うが、この組み合わせに無理があることは間違いない。

そして、平均値(実質賃金指数)と総額(内部留保)を比較しているところがこのグラフの最大の問題点だ。

名目であれ実質であれ、賃金指数は新入社員も定年退職後も働いている人もパートタイマーで働くようになった主婦も含む平均値だ。新たに職を得た人の賃金は相対的に低いのが普通だから、景気が回復し雇用が改善すれば平均値が下がるのは当たり前なのである。

次のグラフでも分かるように、アベノミクスにより労働者全体の賃金(雇用者報酬)は間違いなく増えている。

アベノミクスが始まった2013年度以降の雇用者報酬はバブル期並みの伸びを示している。

平均値は下がっても全体の賃金は増え、最近はその平均値さえも増加傾向にある。アベノミクスは民主党政権時代より働く人の所得を大きく増やしているのである。

しかし、いまだに上記のような主張が続く。
「実質賃金がー!」も「非正規がー!」もとっくに論破されているのだが、「内部留保がー!」同様、理解には多少の知識が必要だからごまかせるのだ。

もっとも、増え続ける内部留保に目をつけているのは共産党だけではない。

言うだけの共産党と違い、安倍政権はかなり以前から収益を思い切って値上げと設備投資にふり向けるように企業に要請し、税制など政策面でも後押しをしてきた。

それについて、以前、次のようなエントリを書いた。

内部留保に目を付けた安倍政権と共産党
2015-11-20
https://ameblo.jp/akiran1969/entry-12097671300.html

内部留保全体では2012年10-12月期に比べ70兆円近く増加しているが、現預金の増加は27兆円程度となっている。その差額が全部設備投資に回っていれば甘利大臣も文句はないと思うが、おそらく相当額が金融資産などになって眠っていると思われる。その辺りを詳しく知っているから企業に積極的な投資を呼びかけているのだろう。

『内部留保』に着目したのは共産党と同じだが、安倍政権の場合はまず最初に第一の矢と第二の矢により企業の業績を向上させたうえで賃上げや投資を要請しており、とにかく吐き出せという共産党とは全く違う。

さらに、投資を促す分野に対しては様々な政策面の後押しを用意している。

それが、新第一の矢に含まれる成長戦略やTPPであり、新三本の矢の第二・第三の矢を実現するための具体的な政策ということなのだろう。

企業が内部留保を賃金や投資に回しても、それが今後の成長力につながらなければ、打出の小槌から小判は出てこなくなってしまう。今は、政府はその環境を整えるべく動き、企業は目をもう少し将来に向けて積極的な投資を図る時なのだ。

共産党は大企業を打出の小槌のように捉えているが、絶対につぶれないと思われていた優良企業がいくつも消えたりバラバラになった事実を無視している。

打出の小槌が消えたり壊れてしまっては元も子もないのである。

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