「デフォルトの変形?」

画像の説明 銀行の前に並ぶ市民ら=ニューデリー、

インドでモディ政権が高額紙幣の切り替えを抜き打ち的に実施し、全土に影響が広がっている。偽造紙幣の横行や現金取引による税逃れを根絶やしにするのが目的だが、市民生活の混乱や経済の落ち込みは避けられそうにない。

発端は8日午後8時に始まったモディ首相のテレビ演説だった。「今晩12時で1千ルピー(約1600円)札と500ルピー(約800円)札は無効にする。銀行で新紙幣と交換して下さい」

各銀行には新たな高額紙幣(2千ルピー)の導入は知らされていたが、旧紙幣の廃止までは伝えられていなかったようだ。翌9日、銀行は一斉に休業となり、営業を再開した10日に混乱が顕在化。ニューデリー中心部の銀行はどこも、朝から数百人の客が列を作った。

だが、銀行の資金ショートを避けるため当面、預金の引き出しは1週間に2万ルピー(約3万2千円)、新紙幣への交換は1日あたり4千ルピー(約6400円)に制限された。

列に並んだ東部ビハール州出身のオム・ナラヤンさん(33)は、中東へ出稼ぎに行くために必要な健康診断証明書を取るため首都にやってきた矢先に騒ぎに遭遇した。「病院で払うはずの1万ルピー分の旧紙幣が使えなくなったことを、駅に着いて初めて知った。3日間並ぶしかない」

普段は外国人旅行者でにぎわう土産物店の通りは客足がまばら。オーストラリア人のシェリア・モリスさん(44)は「明日帰るのに、残った数千ルピーの旧紙幣をどうしたらいいのか。土産物も買えない」と嘆く。

現金取引に頼る小規模業者は深刻だ。旅行者相手の無認可の両替商は「旧紙幣が手元に2千万ルピーぐらいある。とんでもないことになった」と途方に暮れた。

モディ政権は徴税を徹底するため、銀行口座やカードを使う「キャッシュレス社会」を目指し、低所得層にも口座を持たせる運動を進めてきた。

ジャイトリー財務相は「不正蓄財者は報いを受ける」と述べ、抜き打ち実施で一網打尽を狙ったことを示唆した。

ただ、インド全体の商取引の8割はいまだに現金決済とみられ、経済アナリストのマヘシュ・プロヒット氏は「急に転換するのは容易ではない」と指摘する。

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