「同じ轍を踏む・・・」

画像の説明 韓国の歴代政権は、なぜ懲りずにスキャンダルを繰り返すのか

朴大統領の支持率が急低下 スキャンダルで揺らぐ政権基盤

韓国の朴大統領の支持率が急低下している。大統領が機密情報などを親しい友人に渡していたという、政治スキャンダルが発覚し社会を揺るがしている。朴槿恵(パク・クネ)の政権基盤は大きく揺らいでおり、国政の不安定感が急速に高まっている。

今回に限らず、韓国では大統領経験者が引退後や晩年にスキャンダルにまみれることが多い。その背景にはいくつかの要素が考えられる。その一つに韓国の伝統的なカルチャー=文化がある。

元々、韓国では個人的なつながりを重視する傾向がある。確かに、激烈な競争や権力闘争のなかでは、本当に信頼できる人材が有効であることは間違いない。しかし、そうした個人的つながりを重視しすぎると、政府要人などが抱える公的機能との区別が難しくなってしまう。

特に、多くの企業経営者などにとって、一部の有力者との知己を得ることで重要なアドバイスを得るメリットは大きい。同時に、政治家が政府外の知人と国家の情報をやり取りし始めると、機密情報は漏えいしやすくなる。その弊害は小さくない。

今回、情報を受け取っていたことが明らかになった崔順実(チェ・スンシル)という女性は、朴大統領の母親の暗殺を機に、父親の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領に取り入った人物の娘だ。

私的な関係が親から子に引き継がれて崔順実の権力が増すだけでなく、その考えが政治にも影響していたことを考えると、問題の根は深く、事態は深刻だ。こうした状況を長く見逃してきた、韓国の情報管理態勢は根本から見直されるべきだ。

また、韓国社会では一部のエリート層が社会に対して大きな力を持ってきた。そのため、韓国ではソウル大学などの名門大学に入学しようと受験競争がし烈化している。サムスンや現代のような財閥系の企業が経済を仕切っていることもあり、エリートや一部の権力者には、社会をコントロールできるとの意識があるのかもしれない。

今回のスキャンダルを見る限り、権力にすり寄ろう、それを使って私腹を肥やそうという考えも強い。韓国の政治・経済には公明正大とは言えない部分があることは確かだ。

「個人的なつながり」に起因する韓国指導者のスキャンダル

韓国の政治、経済を振り返ると、これまでにも「個人的なつながり」に起因するスキャンダルが社会を揺るがしてきた。1980年~88年まで大統領の座にあった全斗煥(チョン・ドファン)は不正蓄財罪などを問われ、一時は、死刑宣告を受けたほどだ(のちに恩赦)。

大統領の知人は政治判断に大きく影響

また、全元大統領の親族も不正に手を染め、1997年には元大統領に対して追徴金の支払いが命じられた。2013年には朴大統領によって“全斗煥法”が定められ、全元大統領の自宅、長男が経営する企業への捜査が行われた。

その後の大統領経験者も、親族等が収賄や不正献金を受けたことが明らかになっている。全斗煥の不正を明らかにした故金泳三(キム・ヨンサム)元大統領は、次男が民間企業から不正に金銭を授受していた。故盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領も、側近の贈賄や兄弟の不正な金銭授受が明らかになった。

李明博(イ・ミョンバク)前大統領は現代建設社長として同社を大企業にまで育てた手腕から、経済再生への期待を背負って政権の座に就いたが、ここでも不正資金を受け取っていた実兄が逮捕された。

また、経済界でも、自らの地位などを利用して私利私欲を追求した例は多い。中には大韓航空の“ナッツリターン事件”のように常識では考えられないようなケースもある。これは企業統治以前の問題だ。

足元では財閥系企業の経営不安が高まっている。例えば韓国財界5位のロッテは、親族間の内紛だけでなく、不正な政治工作資金のプールへの疑いから創業者である重光武雄会長、その息子らが在宅起訴される状況に陥っている。

そうした状況を見る限り、アジア通貨危機の際にIMFなどから“クローニー(縁故)資本主義”と揶揄された社会構造はいまだ根強い。景況感が悪化するにつれ、こうした問題が市場の関心を集めることも増えるだろう。

日本との外交方針も相談していたとの報道も
大統領の知人は政治判断に大きく影響

朴大統領と崔順実の関係は、1974年8月15日に文世光事件が発生し朴大統領の母親(陸英修〈ユク・ヨンス))が暗殺されたことまでさかのぼる。この事件を契機に現大統領と崔一族の関係が始まったとみられている。

大統領と崔順実は、わが国との外交方針をも相談していたとの報道が出ている。相当に、朴大統領はこの知人との関係を重視し、その存在が政治判断にも影響してきたとみるべきだ。

朴大統領の父親、朴正煕元大統領に関しては様々な評価があるものの、“漢江の奇跡”といわれる輸出重視の成長基盤を実績がある。それだけに、元大統領の娘、エリートとの印象は強く、就任当初は相応の期待を集めた。

現在の朴大統領は中国とは政治・経済面での協調を図り、わが国には歴史問題や領土問題で強硬路線をとった。そこには、国民の反日感情をあおることで、一定の支持率をキープする目論見があったのだろう。

困難が続く韓国経済

しかし、ミサイル配備をめぐる中国との関係悪化、現代自動車でのストライキ発生(ストライキにより12年ぶりに生産ラインが停止)やサムスンのスマートフォン問題(ギャラクシーノート7の発火事故を受けて生産と販売を終了)から、韓国の置かれた状況は不安定だ。特に、ギャラクシーノート7の問題は、韓国中銀が2016年のインフレ率見通しと2017年の経済成長率を下方修正するほど影響が大きい。

今回のスキャンダルは韓国の通貨、株式への売り圧力につながっている。先行き懸念が高まりさらに通貨が売られるなら、わが国との通貨スワップ協定が必要になる可能性は高い。

そうなったとき、はたして朴大統領はこれまでの反日姿勢を撤回し、国民の理解を得えることができるだろうか。支持率が就任以来最低の17%程度に落ち込んだ中、これまでの反日路線を転換するにも、世論の批判が懸念されるため容易ではない。事実上、政権維持は限界を迎えている。

困難が続く韓国経済 韓国といかに付き合って行くべきか

今回のスキャンダルが、恐らく、わが国に与える目立った影響はないだろう。これまで韓国経済は、通貨安を追い風にして自動車や半導体などの売り上げを伸ばしてきた。

しかし、ここへ来て世界的に需要が低迷する中で、韓国企業は自動車のリコールなどを重ね、競争力を低下させてきた。韓進(ハンジン)海運の経営破綻など、韓国財閥系企業の経営は行き詰まっている。

当面、韓国経済は苦しい状況が続くとみる。

その状況を韓国が自力で打開できるかは不透明だ。朴大統領は中国との関係を重視してきた。一方、中国には韓国を使って北朝鮮の暴走を抑え、朝鮮半島の安定を支えたいとの打算がある。

最近、韓国が高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)を配備したことによって、中国の対韓国政策が変化している。そうした状況を考えると、韓国が経済支援などを中国に求めることは現実的ではないだろう。

そうなると、韓国経済を支える頼みの綱の一つはわが国の協力ということになる。この状況をわが国はうまく使っていくべきだ。毅然とした態度で、自らの利益を第一に考え、韓国に接すればよい。

これからも韓国は歴史問題などを取り上げ、過去の反省を迫り有利な条件を引き出そうとするだろう。

わが国は歴史の問題と、韓国の要請を区別し、支援する場合には相応の条件を突きつければよい。支援を求められたからと言ってそれに応えるのが義務ではない。あくまで、支援条件の決定権はわが国にある。

米国の大統領選挙後、国際社会の先行き不透明感は増しやすい。特にアジア太平洋地域では、中国の海洋進出など、安全保障への不安は高まる可能性がある。そうなったとき、最終的に自国の利益は自分で守るしかない。アジア経済の中でも、相対的にわが国が安定していることもあり、交渉の選択肢も柔軟に選べるはずだ。他国からの支援要請をうまく生かし、徐々にわが国のシンパを形成して国際的な連携を強化すべきだ。

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