「愚政」

画像の説明 沖縄県で貧困に苦しむ子供を支援するために、政府が今年度から始めた事業が意外な反響を呼んでいる。

開始からわずか5カ月で、支援を受けた子供または保護者の人数が計2013人(平成28年9月1日時点、内閣府沖縄振興局調べ)。担当者は「約半年でこれほど(の人数に上る)とは思っていなかった」と驚きを隠さないが、それ以上に驚きだったのが、沖縄振興局が公表した支援の具体事例の生々しさだ。

この事業は社会福祉士や保育士などの資格保有者、または教員やスクールソーシャルワーカーといった実務経験者計100人を子供の貧困対策支援員として市町村に配置、学校やNPO法人と連携して就学援助などにあたるというもの。

貧困にあえぐ子供たちに手をさしのべるというのは、今の日本社会に必要とされる重要な施策の一つだろう。しかし、その支援の対象となった個々のケースから浮かび上がってくるのは、沖縄の子供たちが置かれた特殊な環境だ。

シラミ駆除用のシャンプーを買うこともままならないようだ-。

特別支援学級に通うある男子中学生のケースは、学校から支援員に相談があったことが端緒になった。

他にも、子供の制服の汚れや体臭が気になるとの報告を受けて支援員が家庭訪問を実施したところ、制服が1枚しかなかった事例や、朝食を食べる習慣がなく身長や体重が年齢に応じた発達をしていない兄弟の事例などが紹介されている。

これらの事例に共通していえることは、子を育てる親が何かしらの問題や課題を抱えているという点だ。

シラミ駆除用シャンプーを買うことができなかった男子中学生の保護者は養育能力上、支援が必要な状態だった。制服が1枚しかなかった子供は母子家庭で、母親の仕事時間が早朝と夜間のため不安定な生活を強いられていた。

貧困対策事業は支援員の配置だけでなく、子供の居場所作りにも力点を置いた。これは公民館や児童館などの施設で食事の提供を行ったり、生活指導をしながら、日中または夜間に子供が安心して過ごせる場を確保するというもの。

この居場所作りも県内26市町村92カ所で進み、沖縄振興局の想定を上回る設置数になっているという。こうした居場所で受け入れている子供は学習意欲が低く、地域で孤独感を抱えているケースが多い。

居場所ができたことによって生活リズムが改善され、学習意欲が高まった子供もいた一方、居場所事業に依存する親の姿もみられ、子供の貧困の原因が根深いことが浮き彫りとなっている。

内閣府が公表した平成25年度の県民所得調査によると、沖縄県は1人当たり約210万円で全国最下位(全国平均は約307万円)。今年8月の有効求人倍率も1・00倍で全国最低水準にある。県経済を活性化させて雇用を創出することが、子供の貧困状況改善に資することは論をまたないはずだ。

鶴保庸介沖縄北方担当相は「基地が沖縄県の経済の阻害要因になっている」との認識を示し、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の返還などを通じて、基地負担の軽減と跡地利用の促進を図り、沖縄振興を実現する考えだが、翁長雄志知事は同飛行場の名護市辺野古移設をめぐる国との訴訟で敗訴した後も、最高裁での法廷闘争に執念を燃やし、移設に頑として反対している。

子供が貧困から抜け出す上で、政治闘争が阻害要因となっているならば、それはあまりに残酷だ。

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