「何かおかしい」

画像の説明 北朝鮮では要人にまで脱北や外国への亡命が続き、深刻な亀裂の兆候を見せており、体制動揺の可能性が高まっている」

こう危機感を露わにするのは、韓国の朴槿恵大統領だ。韓国は北朝鮮と国境を挟んで事実上の戦闘状態だけに、北朝鮮情勢に関するインテリジェンスは豊富であり、かつ正確だ。その韓国の最高指導者が北朝鮮の指導体制に「深刻な亀裂」が走り、「体制動揺」の危機が高まっているというのだから、ただごとではない。

この数カ月間で、北朝鮮の体制内で起こった事実をみれば、それは一目瞭然だ。

最近では駐ロンドンの北朝鮮大使館公使といったエリート外交官一家が亡命。

また、4月には中国内の北朝鮮レストラン従業員13人が集団脱北し、すでに韓国入りした。このほか、朝鮮人民軍やスパイ組織である国家安全保衛部に所属する高級幹部も、相次いで韓国に亡命しているとの情報も流れている。

脱北や亡命事件が相次いでいることについて、北朝鮮の最高指導者である金正恩・朝鮮労働党委員長は激怒。

中国を中心に海外各地に、亡命や脱北を阻止するための監視グループを急派したという。また、北朝鮮軍が南北の軍事国境線付近に対人地雷を埋設したが、この目的は北朝鮮軍兵士の脱北を阻止するためだという信じがたいニュースも飛び込んできた。

これに加えて、金氏はさらなる強硬手段に訴えていることがわかった。北京の外交筋が明らかにしたところでは、北朝鮮国内では国民に恐怖心を植え付け、政治的な統制強化を図るために、住民の公開処刑が急増し、今年は7月末現在、60人以上と、2011年末の金正恩政権発足後、年間平均約30人の倍以上に達している。

公開処刑されたのは韓国内の脱北者から秘密裏に送金を受けていた国内在住の家族と、送金の仲介をしていたブローカーのほか、韓国の映画やドラマなどのビデオを視聴する人、麻薬密売グループ、麻薬常習者らだ。

金正恩主席の異常行動

これらの違法事件の取り締まりが強化され、公開処刑が急増したのは、今年初めに発令された金氏の「最高指示」に基づいている。それは、「民衆に自由な時間を与えれば、金儲けのことしか考えず、不平不満ばかりで、党の統治に反対する陰謀が増え続ける。これを防ぐには、党による統制を強化しなければならない」というものである。

金正恩氏は北朝鮮崩壊をおそれて、深酒をしたあと夜な夜な愛車のベンツで平壌市内をドライブ

このような金氏の発言の裏側には、北朝鮮の最高指導者として、3代続いてきた金王朝による指導体制が自分の代で崩壊してしまうことへの強い危機感がある。北朝鮮の内部情報では、金氏は軍のクーデターや住民の暴動などが発生することを恐れて、強いストレスを感じ、夜も寝ることができず、深酒をしたあとに深夜や早朝にかけて、自ら愛車のベンツを運転し、平壌市内をドライブしているという。

金氏の父、金正日総書記の料理人として仕えた藤本健二氏は今年4月の平壌滞在中、金正恩氏主催の宴会に出席のため、自分を迎えに来たベンツの運転席をみると、金氏自身がハンドルを握っていたのが目に入り非常に驚いた、とのエピソードを一部メディアに明らかにしている。

さらに、金氏はドライブの途中で、重要建設プロジェクトの「視察」も行っている。今年7月11日付の党機関紙「労働新聞」によると、金氏は13年9月の早朝に重要建設プロジェクトに指定されていた平壌市内のレジャー施設「紋繍(ムンス)ウォーター・パーク」の建設現場を視察。さらに、ほぼ1カ月後の10月中旬の深夜にも前触れもなく突然、同じ現場を訪れたという。

同紙は金氏が寝る間も惜しんで、北朝鮮の国家建設の進展に気をかけており、これこそ金氏の「人民を思いやる深い心がけ」であると“美談”として報道しているが、これは金氏のたんなるストレス発散としかいいようがないのである。

平壌市内では金氏の「夜討ち朝駆け」は有名で、市民の間では「元帥さま(金氏のこと)が深夜から朝早く、ベンツに乗って、こっそり市内を流している」との噂がたっているほどだという。

また、労働新聞が報じたエピソードの時期は、金氏の最側近だった張成沢・元国防委員会副委員長が処刑された13年12月と近いことから、前出の外交筋は「金氏はこのころから最高指導者として極度のストレスを抱えており、いまだに精神的に不安定な状況にあるようだ。この情報は中国最高指導部にも伝えられており、中国は北朝鮮情勢の急変に備え、国境地帯に常時、多数の中国軍部隊を配置しているほどだ」と明らかにしている。

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