「影の銀行」

画像の説明 中国では、上場銀行がいわゆる影の銀行(シャドーバンキング)と呼ばれる分野で上半期に与信額を急増させたことが分かった。

金融安定の脅威になりかねないこうした種類の与信を抑えようとしている規制当局にとって、問題の難しさが浮き彫りになっている。

影の銀行を通じた運用は通常の融資よりもリターンが大きく、資本基準の縛りは弱い。半面、銀行のバランスシートの質について実態が見えにくくなり、当局はシステミックリスクや与信規模を把握しにくくなる。

ロイターが銀行の開示文書を分析したところでは、有力上場銀行の1つである上海浦東発展銀行<600000.SS>は上半期にいずれも影の銀行に属する信託商品や理財商品の保有を14%増やし、総額は1兆2700億元(1900億ドル)とこれらの商品の保有額としては中国で最大規模になった。

興業銀行の影の銀行分野の保有資産は4.4%増の1兆2300億元と、通常の融資残高の63%に達している。このほか民生銀行<1988.HK>と浙商銀行<2016.HK>は、保有額の伸びがともに86%と上場銀行で最も高かった。

ABバーンスタインの銀行アナリスト、ウェイ・ホウ氏は「一部の中小銀行がまだこれらの商品の保有を増やしていたとは少しばかり驚いた」と語り、規制当局による規制強化を考えれば本来なら減少の流れになっているはずだと付け加えた。

<締め付け>

中国銀行業監督管理委員会(銀監会)は、とりわけ中堅以下の銀行の影の銀行分野の与信が拡大するのを食い止めようと必死に動いている。今年4月の通達は、銀行が影の銀行の与信について通常の融資と同等の引当金を積むことを強制するもの、とほとんどの業界関係者が解釈した。

UBSの試算では、影の銀行分野の与信総額は昨年末時点で12兆6000億元と、中国の年間国内総生産(GDP)のおよそ5倍にまで膨らんでいる。

フィッチは今年7月、中国の金融システムの与信の3分の1前後は通常の融資勘定以外に存在していて、銀行資産の質に関するデータの信頼性が揺らいでいると警鐘を鳴らした。

特に今は中国の銀行不良債権が政府統計で過去最高に達し、大方の民間アナリストの考えでは実際にその数倍になっているという局面だけに、影の銀行の与信を巡る懸念が大きい。

信託商品や理財商品は、会計処理方法が通常の融資と大きく異なる点にも問題がある。

UBSのアナリスト、ジェーソン・ベッドフォード氏は「こうした商品は性質的に見ればほとんど貸し出しだが、融資勘定と同じルールは適用されない」と指摘。結果として単一の借り手に対するエクスポージャーの上限や不良債権の認定基準といった規制の対象にならないと説明した。

それでも上半期中に影の銀行の与信を圧縮した銀行がわずかにある。その1つである招商銀行<600036.SS><3968.HK>は、信託商品と理財商品の保有を23%減らし、残高は5287億元となった。

同行幹部は、従来はいわゆる「非標準化投資」に仕分けしていたこうした商品も今後は融資に分類していくと表明している。

ABバーンスタインのホウ氏によると、中小銀行は下半期に影の銀行の与信を減らす見通しで、さもなければ当局は「より標的を絞った(取り締まりの)政策」を打ち出すと予想した。

もっともリスク削減や引当金増額などが可能なほど財務基盤が強い銀行はともかく、そうでない銀行にとって経営面の負担は一層大きくなるだろうという。

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