「恫喝と虚勢」

画像の説明 南シナ海で米国が行う「航行の自由作戦」参加の是非をめぐる議論が活発化しているオーストラリアに対し、中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報が「豪軍など取るに足りない。

張り子のトラならぬ張り子のネコだ」などと酷評。「南シナ海に足を踏み入れれば理想の攻撃対象になる」などとする社説を掲載した。北朝鮮ばりの激しい恫喝に、豪国内で対中警戒論が高まっている。

「精神が錯乱した国」

環球時報は、中国の主張が全面的に退けられた仲裁裁判所の裁定について、中国に順守を求め日米両国と共同声明を出したオーストラリアは、「最も精神が錯乱した国のひとつだった」と酷評。「自由貿易協定を結ぶ中国は最大の貿易国なのに、南シナ海をかき乱すような行動は驚きだ」と記した。

さらに「経済協力が欲しいときは中豪関係を持ち上げ、米国を喜ばせたいときには同盟のために何でもするという態度を取る」と二面性を批判。「オーストラリア軍など中国の防衛力に比べればほとんど無力であり、格好の警告・攻撃の対象になる」と威嚇した。

社説は、英国の国外刑務所として始まるなど「不名誉な歴史がある」、「わずかな人口で広大な土地がありながら南極大陸の領有権も主張する」などと、「北朝鮮の毒舌を彷彿とさせる」(豪メディア)調子でオーストラリアをこき下ろした。

中国は7月に仲裁裁の裁定が出たあと、近隣国の分断工作を一層強化している。東南アジア諸国連合(ASEAN)ではカンボジアやラオスを抱き込み、外相会議の声明でも裁定に言及させないことに成功した。こうしたなか、日米豪同盟ラインの一角をなすオーストラリアに対するバッシングは、豪メディアに強い警戒感をかき立てている。

「南シナ海から豪軍の永久排除を意図」

豪紙オーストラリアンには著名シンクタンク研究員が寄稿し、「政府フィルターを通って出たものだ」とした上で「航行の自由作戦への参加を拒むのみならず、豪軍の南シナ海からの永久排除を意図したものかもしれない」と記した。

一方、豪ABCテレビは、さまざまな形で対豪圧力の強化がみられると報道。小規模ながらよく組織化された中国系住民によるデモがメルボルンであり、インターネットでは豪州旅行のボイコットが呼びかけられているとした。いずれも民間の活動ながら「対豪圧力を強化する政府の指示を反映したもの」と分析している。

オーストラリア軍は南シナ海で監視活動を行っているものの、「航行の自由作戦」に参加して中国の領有権主張に明確なノーを示すべきだとする声も国内に強い。中国の圧力強化は、経済と安保のバランスに腐心するターンブル政権に対する、強い牽制(けんせい)を意図したともいえそうだ。

コメント


認証コード6657

コメントは管理者の承認後に表示されます。