まやかしの歴史

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「まやかし」という言葉がある。大抵はここで『広辞苑』を引くが、あんな左翼偏向辞典は使わない方がいい。ネット検索すると「人目をごまかそうと、見掛けを似せて作り構えること」「ごまかすこと」「いかさま」「いんちき」「人を惑わせるもの」「でっち上げ」などとある。
ロシアは16世紀からの東方侵略(東漸)によってシベリア諸民族を征服し、17世紀にはシナ北方に至った。19世紀半ばには樺太に先んじて清国から東韃靼(ひがしだったん)・外満洲(そとまんしゅう)を掠め取った。それが現在のアムール川(黒龍江)左岸地方や沿海州だ。これに味をしめたロシアは同じ手口で、明治維新をはさんで崩壊寸前の江戸幕府や成立直後で脆弱な明治新政府を脅し、広大な樺太などを奪った。
北方領域を掠め取られる際、日本は武力威圧を背景にしたロシアと日露和親条約、樺太島仮規則、樺太千島交換条約を結ばされた。いずれも、まだアジアの小国だった日本が、ヨーロッパから軍事力で東漸する大国ロシアに結ばされた不平等条約である。
「不平等条約だ」と言うと、左翼や親露勢力には「日本は武力を背景に韓国に日韓併合条約を押し付けて併合したではないか。だからロシアとの条約のことを批判できない」という者がいる。
日本にとって北方領域を奪われたロシアの脅威は建国以来未曽有のもので、それは清から奪った沿海州に隣接する朝鮮に及ぼうとしていた。「ロシア南下」である。だから日本は、崩壊寸前の清朝の属国としてやはり崩壊寸前だった李氏朝鮮に自立と近代化をさまざまに働きかけた。
だが腐敗し切った李朝にその能力はなく、日本が代わりに日清戦争を戦い、朝鮮の冊封を解いて大韓帝国として独立させ、半島史上初の「皇帝」が即位した。ところが、愚かな皇帝一族は閔妃らが中心になって自らロシアを招き入れようとした。ロシアはすでに沿海州北方の満洲を着々と侵略しており、このままでは朝鮮が支配されることは時間の問題だった。日露戦末期の明治38年7月9日朝、日本軍が樺太・九春古丹(大泊)に上陸した時、ロシアは街を焼き払って退却していた(『日露戦役海軍写真帖』明治39)もしロシアが朝鮮半島を併合すれば、次は九州だ。すでに樺太を奪われた北方では、北海道にも牙を剥いている。事ここに至って日本は自衛に立ち上がらざるを得ず、日露開戦となった。
勝利した日本は樺太南半を回復。同時に国際法に則り、列強各国の承認を得たうえで韓国を保護下に置いた。初代韓国統監となった伊藤博文は、韓国を保護国にしても併合は考えず、自立できる近代国家に育てようとした。併合などすれば、朝鮮を内地並みにするのにどれほど莫大な費用がかかるか知れたものではなかった。
しかし、実際に統監府を置いて内情を詳しく知れば知るほど、朝鮮の王族も民衆も腐敗・堕落して自立・近代化の能力がないことがわかった。それでも統監府は奴隷を含む極端な身分差別を廃止して平等化し、特権階級「両班(ヤンバン)」の私刑を禁じ、近代司法・警察制度を導入し、教育の機会均等を図るなどした。
これだけの努力を続けてなお、李朝は国を治める能力を持ち得ず、日本は莫大な出血を覚悟して併合という手段を取ることになった。
当初から侵略・支配を目的としたロシアによる対日姿勢や諸条約と、日本の朝鮮に対する姿勢や諸条約を全く同列に見做すことは、「まやかし」に他ならない。
「まやかし」を口にして憚らない者たちは、占領政策の〝戦前全否定〟による戦後教育で教えられたことを愚かにも信じ込んでいるだけなのか。それとも、コミンテルンの残滓にまみれ、ロシア思想工作に染まって「ロシアの正義」を意図しているのか。
恐ろしいのは、こうした者たちが小学校から大学まで教育機関に入り込み、中央・地方の官庁にも潜り込んでは、歴史の基本認識部分で 「ロシアの正義」ばかりか「シナの正義」「朝鮮の正義」を知らず知らずに浸透させていることだ。露、シナ、韓国・朝鮮の主張や資料に沿って、日本で把握される事実や史料を無視した研究に科学研究費として莫大な血税からの助成が行われている。
まずは別冊正論『「樺太」を知る』で、樺太の歴史の事実を知っていただきたい。全国樺太連盟でも活動した樺太研究者の高橋是清氏が、現在の日本で樺太がどう位置付けられているのか、その歴史の事実はどうなのかを検証しているので、ご紹介する。
元樺太住民らで組織する全国樺太連盟は元民主党北海道議の現会長になって、遅くとも平成32年度までに解散することを決めた。会員減少などを理由にするが、樺太の「語り部」たる同連盟が解散して喜ぶのはロシアだ。このため連盟関係者らが「樺太の歴史の事実を継承していこう」と一般社団法人「全国樺太連盟会」を設立したが、同連盟からの申し入れで「全日本樺太研究会」への改称を余儀なくされている。樺太問題はこれほど深刻な状況になっている。
幕末から維新直後にかけてのわが国北方領域をめぐるロシアの対日不平等条約が、武力威圧を背景にして結ばれ、強引に入り込んだロシア軍によって樺太占拠が既成事実化され乗っ取られた事実を、軍事史学会理事で日本大学国際関係学部教授の淺川道夫氏が論考しているので、お読みいただきたい。
さらに、昭和の末まで活動が続いた「南樺太返還期成同盟」について、手弁当で海外まで東奔西走した渡辺国武氏の講演録と資料も紹介する。「領土」というものは、奪われても決して口をつぐんではいけないことを渡辺氏は身をもって伝えている。今、私たちの目前に出現している、尖閣諸島を狙うシナ中共の脅威も、樺太・千島の二の舞であることを知っていただきたい。

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