「スパイ?」

画像の説明 スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」が世界的な大ブームと大騒動を巻き起こしているが、中国のゲームファンは蚊帳の外におかれている。

プレーするには米グーグルの地図情報ソフト「グーグルマップ」が必要なのだが、中国当局によるネット検閲を嫌い、グーグルが中国から撤退し利用できないためだ。

グーグルの再進出観測は根強いものの、当局に不都合なネット情報を遮断する検閲システム「グレート・ファイア・ウォール」の壁は高い。

中国のネットユーザーからは、「すぐに精巧にパクったパチモンが出る」「ポケモンGOは米日のスパイだ」といった自虐的な嘆きの声が上がっている。

                 
「ポケモンGO」は任天堂とその関連会社、ポケモン、米ゲーム会社のナイアンティックが共同開発したものだが、主体となっているのはナイアンティックだ。

2015年にグーグルの社内ベンチャーから独立する形で設立され、任天堂とポケモンが出資しているという関係にある。

ポケモンGOは、衛星利用測位システム(GPS)を利用し、指定された場所に行き、スマホのカメラに映し出された実際の風景の中に現れたポケモンを獲得して集めるゲーム。GPSと連動したグーグルマップを見ながらポケモンを探す。

グーグルは2010年に主力のネット検索事業について中国から撤退しており、グーグルマップのサービスも提供されていない。撤退は、「天安門事件」といった中国政府にとって都合の悪い情報を検索結果から排除したり、改竄したりする検閲システムや、中国からのサイバー攻撃に嫌気したためだ。

ちなみに韓国でも現時点では、「ポケモンGO」のリリース予定はない。

北朝鮮と緊張関係にある韓国政府は、安全保障上の理由で、精密な国内地図データの国外持ち出しを禁止しており、海外にあるゲームのサーバーに地図データを取り込めないためだ。

ただ、南北を分断する北緯38度線より北側に位置する韓国領の束草(ソクチョ)では利用できることが判明。ファンが殺到する騒ぎになっている。グーグルが、地図データで38度線以北を韓国領外に設定しているためとみられている。

                  
フェイスブックのポケモンGOの公式ホームページでは、プレー可能な国に関する質問に「中国、韓国、台湾、キューバ、イラン、ミャンマー、スーダン以外の全世界でプレーできる」と回答している。

ロイター通信によると、カギを握るナイアンティックのジョン・ハンケCEO(最高経営責任者)はインタビューに、近い将来に約200カ国でリリース(公開)したいと表明した。同社は昨年、GPSとグーグルマップを活用した同種のゲームをリリースしており、1~2カ月で対象国を同規模に拡大したという。

さらにハンケ氏は、韓国でのリリースについて、「解決策はある」として、「最終的にはリリースする予定だ」と述べた。

一方で、中国については、「技術的に可能だ」としながらも、「対応すべきいくつかの規制が存在する」と指摘し、リリースの可否についてはコメントを避けた。

確かに、地図情報は中国のネット検索大手、百度(バイドゥ)などのものを使わせてもらうことで「技術的」にはクリアできそうだ。

一方で、中国でゲームやアプリを販売するには当局の承認が必要で、それには厳しい“検閲”をクリアしなければならない。ハンケ氏の言う「規制」とは、当局による承認とみられる。

                 
ポケモンGOの中国でのリリースは、噂の絶えないグーグルの中国再進出とも密接に関係してくる。

一度は中国に愛想を尽かしたグーグルだが、巨大なネット市場から撤退したことによる逸失利益は大きい。特に、広告ビジネスやアプリ販売で中国市場を欠くのは痛手で、再進出の機会をうかがってきた。

撤退したとはいっても、研究開発拠点や広告営業拠点は維持している。まだ実現はしていないが、昨年には中国向けにアプリを販売する「プレイ・ストア」を立ち上げる方向で当局と水面下で交渉していることが明らかになった。

ポケモンGOのビジネスモデルは、ゲームアプリ自体は無料で、ポケモンをより簡単にゲットするためのアイテムに課金するというもの。

ただ、ポケモンを探す際に表示されるグーグルマップの地図画面上に広告を表示する計画も伝えられている。こうした広告収入を最大化するためにも、是非とも中国でリリースしたいところだ。

中国当局が承認するかどうかにかかっているが、ポケモンGOをめぐり、交通事故や待ち伏せ強盗、不法侵入といったトラブルが多発するなか、中国人ゲーマーの“暴走”を恐れた当局が承認に尻込みする可能性は十分にある。

ポケモンGOとグーグルの中国上陸を阻む「グレート・ファイア・ウォール」は、かなり高そうだ。

中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」などには、ポケモンGOのリリース予定がないことを知らされたファンの嘆きの書き込みがあふれている。

あるファンは「中国という巨大市場を放置すべきではない」と、リリースを嘆願。また、多くのファンは「中国のパクリ能力は高い」「すぐにパチモンが出るから大丈夫だ」と、自虐的に慰め合った。

さらに、ロイター通信や香港メディアによると、あるネットユーザーが、米日よる陰謀説を投稿し話題に。

このユーザーは「ポケモンをあちこちに配置し捕獲状況を分析すれば、一般人が立ち入れない区域が分かり、中国軍の基地の場所を把握できる」と主張している。

一方で、「政府がネット検閲を行っていることは忘れるな!」と、グーグルを撤退させた当局を揶揄する声も。

中国のファンの「ポケモンLOVE」の熱意と怒りが、グレート・ファイア・ウォールに風穴を開けることになるのか、注目される。

コメント


認証コード3237

コメントは管理者の承認後に表示されます。