「分からない国」

画像の説明 安倍晋三首相への猛バッシングや、5月末のオバマ米大統領の広島訪問への過剰な干渉など、「日本!日本!」と日々、騒々しかった韓国。

現在は北朝鮮の核・ミサイルに対処する「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備や、これに反発する中国との問題に関心が集中している。“つかの間の日本離れ”の一方で、核をちらつかせる北朝鮮の脅威もよそに、世論の分裂、政権批判、内紛はつづいている。相変わらずの“韓国らしい”騒がしさと同時に、不安感も漂っている。

噂の流布、噂の利用

韓国で最近、世間が騒いでいるのは、THAADが米韓の合意に基づき、南部の慶尚北道・星州に配備されること。北朝鮮のミサイルから韓国の国民はもちろん、原発や石油貯蔵施設を守る防衛手段だ。

ところが、ミサイルを捕捉するレーダーが人体や農作物に被害を与えるとの噂がすぐに広まり、地元の星州では「主要な農産物であるマクワウリが被害を受ける!」などと騒ぎになった。

朴槿恵大統領はアジア欧州会議(ASEM)首脳会議への出席のためモンゴルにいて不在。

地元に説明に行った黄教安首相は、生卵をぶつけられるわ、ペットボトルを投げつけられるわ、揚げ句の果てには韓民求国防相と6時間も車の中に事実上の“監禁状態”に置かれるわ、散々な目に遭った。知的でスマートなイメージがある黄首相の憔悴(しょうすい)しきった変わり果てた姿からは、騒ぎの激しさが嫌というほど伝わってきた。

実はこの騒動。THAAD配備に反対する野党や、反米・親北朝鮮の左翼勢力が加勢、扇動していた。

特に、親北政党で昨年、解散に追い込まれた統合進歩党勢力が加わっていたことが論議をかもした。

国防省をはじめ韓国政府は「レーダーが人体に及ぼす影響は問題がない」と根拠を挙げて説明した。だが、反対勢力にはそんなことは関係ない。気に入らないもの(韓国政府や米軍)を攻撃できれば何だっていい。THAADはその格好の材料なわけだ。

蒸し返して大騒ぎ

THAADの星州への配備発表を前に、別の騒動もあった。今月8日に米韓が配備(当時、配備先は未定)を発表した際、尹炳世外相がソウル市内のデパートでズボンを買っていたことに韓国メディアがかみついた。

尹外相は「外務省庁舎で転び、ズボンが破れたために」などと釈明したそうだが、「こんな大事な時に!」とメディアは許しておかない。本人が言うように破れたのかどうかは分からない。でも、大韓民国の外相も人の子。ズボンの一つぐらい買いに行きますよ。知人の外交官(韓国人ではない)は「厳しいねえ。大変だねえ」としきりに驚いていた。

尹外相のズボン騒動はともかく、国と国が決めたことは守って、粛々と履行しなければ困る。THAAD配備の無効化を訴える勢力は、明らかに決定を蒸し返そうと騒いでいた。現在開かれている韓国国会でも、THAAD配備は格好な政争の具にされている。

国会の質疑で野党の有力議員が、こんなことを言って黄教安首相をしつこく攻撃していた。

「THAADの韓国への配備を日本はどう見ていますか。日本は歓迎しているのではないですか?」「日本の国益にTHAAD配備が決定的に寄与します。韓国の国益は何ですか?」

このように日本まで持ち出して、ネチネチと敵を攻撃する。「日本の利益になること」を悪いことのように指摘するのは、韓国では相手を追い詰めるための手軽な材料なのだ。日本そのものを非難するような発言ではなかったが、相変わらずの光景だった。

コロコロ変わる方針。180度転換も

THAAD配備をめぐって、韓国、特にメディアが騒がしいのは中国の動向だ。

朴槿恵大統領は昨年9月に北京で行われた「抗日戦勝70年」の記念式典に出席し、習近平国家主席とロシアのプーチン大統領と並んで天安門の楼上から軍事パレードを観閲した。

当時、韓国国内でも是非が論議された、いろいろな意味で今も記憶に新しい“歴史的な場面”だった。

しかし、THAAD配備に中国が反発していることで、「喜び」は一転。今や「憂慮」に変わってしまった。

「中国が韓国に経済制裁を加えてくる」「韓中関係が大きく後退」と、韓国メディアは連日、中韓関係に関して悲観的な論調を展開し、テレビのニュースや討論番組では「ああでもない。こうでもない」と論争ばかりが続いている。

韓国政府の心中も似たような感じのようだ。南シナ海問題をめぐる仲裁裁判所の裁定(7月12日)について、韓国外務省は翌13日に、「仲裁裁判の裁定に留意しつつ、これを契機に南シナ海の紛争が平和的で創意的な外交努力を通して解決されることを期待する」との報道官声明を発表した。

しかし、THAAD配備に中国が反発していることで、「喜び」は一転。今や「憂慮」に変わってしまった。「中国が韓国に経済制裁を加えてくる」「韓中関係が大きく後退」と、韓国メディアは連日、中韓関係に関して悲観的な論調を展開し、テレビのニュースや討論番組では「ああでもない。こうでもない」と論争ばかりが続いている。

韓国政府の心中も似たような感じのようだ。南シナ海問題をめぐる仲裁裁判所の裁定(7月12日)について、韓国外務省は翌13日に、「仲裁裁判の裁定に留意しつつ、これを契機に南シナ海の紛争が平和的で創意的な外交努力を通して解決されることを期待する」との報道官声明を発表した。

仲裁裁判所の裁定に強く反発する中国に対し、裁定履行を直接求めることは避けたわけだ。日本や米国とは違い、中国に対し神経を逆なでしないように気を使っているのだ。韓国らしい対応ではあるのだが、歓喜しまくっていたのが突然、うろたえと不安に陥る。このブレの激しさ、政策方針の転換、なりふり構わぬ変わり身の速さ。こうした韓国らしさが、ソウルでは日々、目に入ってくる。

気に入らないが、日本に見習おう

韓国の政府、メディアが不機嫌そうな中国の顔色をうかがっているなか、主要韓国紙で驚くべきコラムを見た。

米国などで爆発的な人気の、任天堂などが開発したスマートフォン向けのゲーム「ポケモンGO(ゴー)」が、利用できないはずの韓国の一部地域で楽しめ、利用可能地域の北東部、束草などに若者が続々集結しているのだ。それも、日本国内での配信開始に何週間も先立って。

報道によれば、釜山の高校でも、スマホの画面でキャラクターのポケットモンスターをつかまえた生徒がおり、注目されているという。

大人がTHAAD配備で騒ぎ、中国の経済的報復にビクビクしている一方で、若者は黄色いピカチューとやらを追いかけて楽しんでいる。面白いものは面白い。楽しいものは楽しい。新しいモノ大好き。これも韓国らしい、実にほのぼのとした現象である。

このポケモンGO現象について、韓国メディアは「一時は倒産の危機にあった任天堂が一気に蘇り、羽ばたいた」などと、一企業のことではあるが日本を高く評価している。

さらに、「なぜ韓国にはできないのか」「わが国も遅れをとってはならない」といった主張も目立っている。歴史認識で日本をコキ降ろしまくっている韓国メディアなどの「日本に学べ!」「わが国の企業もやるべきだ!」との、これもおなじみの主張だ。

自己激励の末は

「また日本と比べての“われわれも論”か」と韓国メディアの報道ぶりを見ていて思う。安易な“われわれも論”を戒める意見も含め、「あれもやれ、これもやれ」「こうするべき、そうあるべき」と韓国メディアは日々「べき論」や「ねばならない論」に相変わらずいそしんでいる。「勝手にやってちょうだい」といったところか。

メディアは韓国らしい“自己叱咤(しった)激励”の主張を続けている。

自国にハッパをかけ続けている韓国ではあるが、時間がたてば、騒いだ割に結局は何も変わっていない。この夏も、また、おなじみの韓国らしい一段落を見て終わりそうな気がする。

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