「クーデター」

画像の説明 夜霧に紛れて戦車が街中に繰り出すと、身の危険もかえりみず、市民らが砲口の前に立ち塞がった。

中東の大国トルコで軍の一部が試みたクーデターは、鎮圧された。「多くの国民が死んだ」−−。1600人以上の死傷者を出した反乱劇から一夜明けた16日午前(日本時間同日午後)、国民の怒りと混乱が伝わってきた。

人口約1400万人の最大都市イスタンブール。記者は16日午前8時(日本時間同日午後2時)過ぎ、市郊外のサビハ・ギョクチェン空港に到着した。

空港ロビーを出ると、タクシーもバスも待っていない。「異様な静けさ」を感じた。多くの到着客が途方に暮れ、携帯電話を取り出して迎えを頼んでいた。小さな子供3人を連れたアキンさん(38)は「イスタンブールの自宅に戻りたいが、バスも船も、公共交通機関がすべて遮断されていて、移動方法がない」とぼうぜんとした。

市中心部へ向かう途中、戦車の上に乗り警戒していた警官のサメットさん(25)を見かけた。「我々がここにいるということは安全ということだ」と政権側の「勝利」を誇らしげに語った。

イスタンブールで「反乱」が起きたのは、週末の夜が深まった15日午後10時半(日本時間16日午前4時半)ごろ。軍の一部が各所に戦車を展開させた。中心部のタクシム広場では15日午後11時ごろから、上空にヘリコプターや軍用機が激しく旋回し、プロペラ音やごう音が鳴り響いたという。警官数百人が集まって上空に向けて発砲し、夜空に銃声が激しく反響した。

市民の多くが赤地に白の三日月が描かれた国旗を身にまとい、反乱勢力と向き合った。要衝ボスポラス海峡にかかる橋、タクシム広場、首都アンカラの街中−−。非合法の権力奪取に「ノー」を突きつけた。反乱勢力の一部は市民への発砲をいとわず、各地で流血の事態に発展した。

16日午前になると、反乱勢力の投降が伝えられ始めた。市民も落ち着きを取り戻し、鎮圧された反乱の背景を自分なりに語り始めた。タクシム広場に面するホテルの従業員、アティラさん(23)は「軍の中に潜む、一部のイスラム系過激派がやったという情報もあるようだ。国民を殺す、残酷な犯罪者だ。こういう事件があると、人々はもっと団結し、政府を支援するのに分かっていない」と反発した。

かつてトルコ軍は強い権限を持ち、政治介入も珍しくなかった。それでも現大統領のエルドアン氏が首相として権力の座に就いた2003年以降は、軍は鳴りを潜めていたかのようだった。「今回のことには腹も立てているが、とにかく驚いている。今年で41歳になるが、軍の介入を見るのは初めてだ」。別のホテルの従業員のサディさんがそう話した。

首都の様子はどうだったか。「戦闘機が頭上を飛んでいくのを見た。クーデターが成功しなかったのが、唯一の朗報だ」。アンカラ市内のホテルで働く35歳の男性従業員は電話取材にこう語った。

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