「余計な事だよ」

画像の説明 舛添要一東京都知事の豪華な外遊が批判を浴びている。昨年、10~11月にかけてロンドン、パリに5泊7日で出かけた海外出張費が総額5042万円もかかったそうだ。総員20人の視察だったそうで、一人当たりの費用は約250万円である。

もちろん、東京都知事が外遊先でビジネスホテルに泊まるわけにもいかないだろう。飛行機だって最低でもビジネスクラスで問題ない。それぐらい都知事は忙しいし、いわゆる「格」も高いはずだ。

国際親善の一環として、日本の地方自治体が海外の都市と姉妹都市提携することは珍しくない。もちろん、基本的にこれを政府が咎めることはない。ただし、それがあくまでも国際親善である限りは。

本来、外交は政府の専権事項である。厳密に言えば、地方自治体は外交などやってはいけない。

例えば、IS(自称、イスラム国)が首都だと勝手に決めているシリアのラッカや、北朝鮮の弾道ミサイルの発射地点とされている東倉里と姉妹都市提携することは可能だろうか? もちろん、それは不可能だ。

念のため調べてみたが、日本国内で唯一北朝鮮の元山市と姉妹都市提携していたのは鳥取県境港市だった。ところが、1992年に結ばれた姉妹都市協定は、14年後の2006年に破棄されている。

理由は、2002年に北朝鮮が正式に拉致問題を認めたこと、そして2006年9月に核実験を行ったことだ。実は、拉致の犯人が北朝鮮だったということが判明した時点で、この姉妹都市提携は実質的にはこの時点で儀礼的なやりとり以外、交流はストップしていたそうだ。そして、核実験が決定的な事件となり、形式上も姉妹都市提携は破棄された。もちろん、破棄を申し入れたのは境港市側からだ。

このように、都市間の国際交流は国と国との外交関係をベースとして維持されるものである。

北朝鮮のように、未だに日本人を拉致し、核実験や弾道ミサイル発射を繰り返す国とは外交上の問題を抱えており、ハッキリ言って国際親善なんてやっている場合ではない。こんなことは当たり前だ。

政府の外交活動を妨害してはいけない

では、同じ文脈で日韓関係について考えてみよう。朴槿恵大統領が就任して以降、韓国は日本を貶め、敵視する政策を続けてきた。

そして、その結果、日韓首脳会談が3年半に渡り開催されないという異常事態が発生した。そもそも、韓国の外交方針はアメリカと支那の間をコウモリのように行き来する二股外交という珍妙なものであった。そのとばっちりを受けたのが日本である。

しかし、ご存知の通りこの浅はかな外交戦略は昨年完全に破たんしてしまった。

いま韓国は日本に対して振り上げた拳を振り下ろす場所がなくて困っている。そんな中、おそらくアメリカの強い意向と仲介により、日韓両国が何とか歩み寄った。昨年末の日韓共同宣言はまさにサプライズであった。

さて、このような緊迫した状況において、地方自治体の長が「国際親善」を進める際に気を付けるべきことは何か? 

それは両国国民が無用な感情的対立に至らないように配慮することである。いや、もっと直接的にいえば勝手に外交して、政府の外交活動を妨害しないことだ。そういう観点から今回の舛添都知事の問題を考えてみよう。

今年に入り、舛添都知事は、韓国人学校の増設のために、新宿区にある都有地を韓国政府に貸し出す方針を固めた。この土地は、新宿区から保育所の用地として貸し出してほしいと何度も打診された土地であり、都民からも待機児童問題解決を優先すべきだという声が多数寄せられている。

これに対して舛添都知事は記者の質問に答えて次のように言っている。

「保育園があった方がいいという声がある」と問いただすと、舛添氏は「何でもかんでも保育園のニーズ、ニーズ。じゃあ、高齢者どうするんですか? ソウルで日本人学校をつくるときに、(韓国に)大変お世話になっている。こちらも、お返しはちゃんとしないといけない。都有地を国際親善に使うことが問題ならば、どうぞ(北区の)フランス人学校についても、同じキャンペーンをしたらどうですか」

「都民って誰なんですか? 1350万人いるんですよ。どんな政策をやったって批判あります。私に対して9割の支持者がいて、1割反対でも135万人ですよ」

まさに逆切れである。ただ、問題はそこではない。

この問題の発端は2014年7月に遡る。

日韓首脳会談は2015年11月まで3年半行われていなかった。舛添都知事が訪韓したのはまさにこの「空白の3年半」の真っただ中だ。

この時に、舛添都知事が朴槿恵大統領と東京の韓国人学校の件を勝手に約束してきたことがすべての始まりなのだ。安倍総理でも会うことができない朴槿恵大統領に自分が会えるということに興奮してしまったのだろうか?

 当時の報道によれば、舛添都知事は訪韓の理由を次のように述べていた。

「姉妹都市で(公式訪問が)18年間無かったっていうのが異常」

「(2020年東京オリンピック・パラリンピック大会は)国家的大事業としてやってるわけだから、主催都市の代表としてどうか皆さんいらしてください…韓国の大統領にも、中国のトップにも『どうぞ来てください』と言わなければならない」

国家の大事業としてやっているからこそ、政府と足並みをそろえて行動することが必要であったはずだ。

しかし、舛添都知事は国際交流の範疇を越えた「外交」をやってしまった。単に目立とうとしただけなのか、日韓関係の改善を本当に目指したのかどうかは分からない。しかし、2014年以降日本人の韓国に対する感情はむしろ悪化している。

舛添「外交」は大失敗だ。極めて微妙な日韓関係に余計な手を突っ込むべきではなかったのは明らかである。

そして、このときの口約束の履行を迫られ、再びこれが外交問題化しつつある。オリンピックの成功に向けて頑張ることと、都知事が韓国の大統領と勝手に「外交」することは違う。舛添都知事にはスタジアムの問題、山積する土木工事、そして待機児童の問題など、まずは自分の守備範囲にある仕事に全力を尽くしていただきたい。一都民として、それが率直なところだ。

ちなみに、2014年の訪韓において、舛添都知事一行が使った経費は2泊3日で1007万円だったそうだ。

随行したのは、政務担当特別秘書、都の部長級幹部2人、局長級幹部2人ら計10人。一人あたり100万円近い金額とのことである。

ロンドン、パリでの豪遊の基本フォーマットはすでにこの時期に出来上がっていたようだ。

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