「経済オンチ」

画像の説明 力で押さえ込もうという中国政府の愚かな考え

中国発の市場混乱の懸念が、世界の金融市場を振り回している。その背景には、中国経済の減速、株式市場でのサーキットブレーカーの発動、人民元の基準値引き下げなどが上げられる。世界的な原油価格の下落も重なり、多くの大手投資家がリスク回避的に動いており、当面、世界の金融市場は不安定な展開になるだろう。

特に重要なポイントは、中国政府が市場での売り圧力を人為的に食い止めようとしていることだ。共産党政権は力づくで、市場を押さえこむことができると過信している。そうした対応をとる限り、投資家の不安心理は高まりやすい。市場がより不安定になりやすい、ということだ。市場を長期間、力で抑えつけることはできないだろう。

今回の市場混乱を考える上で重要なことは、中国政府の高圧的な政策だ。特に、為替、株式市場での当局の力づくで押さえつける対応は、むしろ投資家の懸念を煽ってしまった。その背景には、中国経済の減速が一段と鮮明化していることがある。

昨年末から8日まで、人民銀行は人民元の基準値を1%以上引き下げた。これが人民元への売り圧力を高め、資本流出懸念を引き起こした。12月の外貨準備の減少額が過去最大だったことも重なり、人民元への売り圧力は高まった。

その結果、当局は為替相場でドル売り介入を行い、人民元の過度な下落を食い止めざるを得なくなっている。今後、人民銀行は為替相場での投機的な取引に対する監視を強める可能性もあり、市場に対する管理はより強くなるだろう。

また年初以降、深セン、上海の株式市場は10%程度下落した。市場の混乱を防ぐために、当局はサーキットブレーカーの発動による取引の停止、株式市場への介入や大株主に対する株式売却の制限を打ち出した。特に、7日には取引開始後30分足らずでサーキットブレーカーが発動し、終日取引が停止された。

当局は、度重なる売買停止の影響を懸念してサーキットブレーカーの停止を発表した。しかし、多くの投資家は当局の対応力や市場の流動性に不安を感じている。その結果、投資家が現金化を急ぎ、中国株の投げ売りが連鎖的に起きるのではないかという懸念も高まっているようだ。

教訓を活かせない中国

昨年夏の株価急落の際も、中国は株式の取引制限などを打ち出し、相場の管理を強めた。それが投資家の行動を制限し、世界的なリスクオフを引き起こしたことは記憶に新しい。しかし、なぜ中国はその教訓を活かせないのか。おそらく活かしたくても、そうはできないというのが中国の本音だろう。

なぜなら、中国は成長率維持のために金融市場での期待をつなぎ留めたいからだ。介入などによって売り圧力を封じ込めれば、一時的には株価の下落を抑えることはできるかもしれない。そのうちに政府は景気刺激策を出して景気を支えたいと考えているはずだ。

また、市場の混乱は景気への不安や不満を高め、政策の効果を低減させてしまうかもしれない。そうなれば過剰な供給能力の解消、消費拡大も進めづらくなる。そうしたリスクを避けるために、中国政府は相場管理を続け、時にはより厳格な姿勢で臨む可能性がある。

中国政府が景気刺激策を発表すれば、一時的には景気への期待が高まり、人民元や株価の反発を誘うだろう。同時に、それは不安を感じる投資家にとって絶好の売り場にもなるはずだ。そのため、今後は為替レートや株価が乱高下しやすい状況が続く可能性がある。

すでに市場は中国発のリスクに備えつつあるようだ。予想を上回った12月の米雇用統計に対し、初動動作として、これまでのような円安、米金利の上昇は確認できなかった。この動きは昨年までの反応とは異なる。

徐々に市場がリスクオフモードに動きつつあることは考慮すべきだろう。

コメント


認証コード4256

コメントは管理者の承認後に表示されます。