「所有者の罪」

画像の説明 2013年に全国で820万戸を突破した空き家。単に街の景観を損ねるだけでなく、放火されたり、害獣が住み着くなどの被害もまき散らす困った存在だ。周辺に被害を与えた場合、持ち主に賠償責任が及ぶ場合もある。

空き家の火事で責任を問われる!? 恐ろしい「重過失」

少子高齢化が進み、過疎地のみならず、都心部でも増えている空き家。今年5月には「空き家対策特別措置法」が施行され、空き家のまま放置し続ける持ち主に対して、修繕や撤去・解体を促す流れはできた。しかし、空き家の解体には、東京なら100~200万円ものお金がかかることから、特措法ができたからといって、すぐさま空き家問題が解決するにはほど遠い状況だ。

誰も住んでいないのに、空き家が火元となる火事は後を絶たない。重過失を問われれば、持ち主に巨額の賠償金支払いが発生してしまう可能性もある

そんな中、乾燥する季節になると注目されるのが、空き家での火事。誰もいないはずの空き家から出火したり、周辺住宅の火事が空き家に燃え移るなどの火災が後を絶たない。

空き家から出火する事件の多くは、放火が原因だ。また、ネズミなどが住み着き、配線をかじって火事になることもある。ネズミだけではない。東京都内でも野生動物の「ハクビシン」が空き家に住み着いて繁殖してしまい、大問題となっている。

「空き家が出火元になった場合、所有者が重過失を問われる可能性があります」。そう話すのは、不動産コンサルティング会社・さくら事務所の浅井理恵コンサルタント。

重過失は事件ごとに判断されるため、一概に該当するケースを語ることは難しいのだが、空き家が出火元になって隣近所に延焼した場合、管理状況など所有者の重過失が問われる可能性はあるのだという。そうなれば、空き家の持ち主に賠償責任が発生してしまう。

火事だけではない! 台風や爆弾低気圧も脅威に

「火災保険に入っていれば大丈夫」と思うかもしれないが、話はそう簡単ではない。

 そもそも、いったん空き家となってしまえば、火災保険には入りにくい。保険会社から断られてしまったり、一般住戸よりも極めて高い保険料がかかってしまう。

さらに話を難しくするのが、「賠償責任」の所在。火災保険の特約に「個人賠償責任保険」がある。これは自分や家族が他人の物を壊したり、ケガをさせるなどしたときに補償が下りる仕組みだ。しかし、空き家の場合、誰も住んでいないのだから、「個人賠償責任保険」は適用外だ。

代わりに必要になるのは「施設賠償責任保険」。つまり、人ではなく施設(空き家)そのものが、誰かや何かに損害を与えてしまったときに補償してもらえる保険だ。

もっとも、この「施設賠償責任保険」も空き家の場合は、加入を断られることもある。保険会社にとって、何が起きるか分からないリスクを秘めている空き家は、決してありがたい顧客ではないのだ。

重過失を問われかねない事件・事故はほかにもある。たとえば台風や爆弾低気圧の通過時に屋根瓦が吹っ飛んだり、はがれ落ちた外壁が歩道に落ちる、などの事故だ。運悪く通行人に当たってしまい、持ち主が重過失を問われれば、莫大な補償金が発生する可能性もある。

解体費用を出し惜しんだり、どうすれば良いか分からず放っておくことで、とんでもない事態を引き起こしかねない空き家。「放っておくことで発生する思わぬリスク」をきちんと把握しておく必要がある。

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