「どっちが勝っても?」

画像の説明 20年以上にわたり韓国経済を支えてきた半導体産業が危機を迎えつつある。

将来の最大のライバルになると警戒してきた中国が今月に入って、1兆円超の巨費を投じる半導体工場の建設を発表し、韓国追撃ののろしを上げた。一方、大学では半導体を専攻する技術人材が不足し、サムスン電子ら半導体メーカーの要請に応えられない状況が続いている。かつて日本から首位の座を奪い、「半導体大国」を築いてきた韓国だが、自国経済の失速とともに、半導体の地盤沈下が現実のものになる可能性が出てきた。

韓国にとって「中国発半導体の脅威」も現実になろうとしている。

朝鮮日報日本語版によると、半導体企業グループ「清華紫光集団(チンファ・ユニグループ)」は6日、600億元(約1兆1630億円)をメモリー半導体工場建設に投じる一方、半導体企業のM&A(企業の合併・買収))にも162億1000万元の投じるなど、合計800億元に達する投資計画を発表した。

清華紫光は中国の名門・清華大学が設立した清華ホールディングスの子会社で、事実上中国政府が経営する国営企業だ。

清華紫光の半導体事業の拡大ピッチはすさまじい。今年7月には世界第3位の半導体メモリー大手である米マイクロン・テクノロジーの買収を試みたが失敗。10月には最大株主となっているハードディスク(HDD)メーカーのウエスタン・デジタルが米国の半導体メモリーの一種、NAND型フラッシュメモリーメーカーのサンディスクを買収し、間接的に半導体メモリー市場進出を果たした。そして、それからたった1カ月後に直接、大規模な半導体メモリー工場の建設発表に踏み切った。

半導体メモリー世界首位の韓国は、中国という最大の消費国でありながら、同時に生産行う国と本格的な競合する時代を今後迎える。朝鮮日報は半導体メモリーの供給過剰と価格下落は時間の問題となる可能性が高いと論じ、すでにメモリーの一種であるパソコン用DRAMの価格は昨年末に比べて50%以上も下がっているとした。

サムスンとSKは中国の追随が難しい微細加工の導入を急いでいるが、キャッチアップされるのは時間の問題といっていいだろう。

一方で、韓国は半導体の技術人材不足という悩みに直面している。朝鮮日報によると、韓国の半導体産業を支える人材を多数教育し、修士・博士クラスの人材1519人を輩出してきたソウル大学半導体共同研究所からの卒業生が細っているという。

同研究所は、世界の半導体メモリー市場を握るサムスン電子、SKハイニックスでは、部長・役員クラスのほとんどがこの研究所で学んだといい、韓国半導体研究の総本山といっていいような存在だ。

だが、大学が半導体専攻の教授の採用を控えていることから、半導体専攻の大学院生が減るという悪循環に陥っている。半導体共同研究所は半導体共同研究所は2008年には103人の修士・博士を輩出したが、その後は減少し続け、昨年の卒業生は42人にとどまったという。

同大学のファン・チョルソン教授は朝鮮日報に対し、半導体専攻の教授を採用してていない理由として「半導体産業が成熟段階に達し、政府の研究課題が少ないとの理由で、工学部では15年間も半導体専攻の教授を採用していない」とし、「半導体を勉強したいという学生がいても、教授がいないため学生を受け入れられない状態」と話している。

そして話が深刻なのは、人材の供給は減っているのに企業からの需要は増えていることにある。半導体人材が不足しているため、ディスプレーや繊維など他の分野を専攻した学生たちが半導体企業に入社しているという。

このため、企業側は即戦力の人材が入ってこないため人材運用に頭を悩ませている。ファン・チョルソン教授は「『トランジスタ』を知らない大学院生が半導体企業に入社すると言っていたので、大変心配になった」と話している。人材の量とともに質の低下も避けられない状態だ。

朝鮮日報によると、半導体素子分野の専門家であるソウル大工学部のイ・ジョンホ企画部学長は「最近では、政府の研究費が集中するナノ・バイオ専攻など新たな分野に移っていく教授も多い。今のような状況が続けば、早ければ7~8年、遅くとも10年以内に中国に追いつかれてしまうだろう」と話した。

かつて日本企業の技術者をスカウトして半導体技術を手に入れ隆盛を遂げてきた韓国だが、自国で人材を育成する努力を怠ってきたツケを今まさに払わせられる状況になりつつある。

かつて日本がたどった半導体縮小の道を、韓国も歩むことになるのか。産業の新陳代謝が早まる今、結果は意外と早く出る可能性もありそうだ。

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