「危険すぎるよ」

画像の説明 ウルフドッグの特徴

オオカミと犬を掛け合わせた大型犬「ウルフドッグ」。野性的な外見がファンを引きつけるが、北海道ではブリーダーの女性が襲われて死亡した。種が異なるのに交配された動物は、習性がつかみにくく危険性もはらむ。飼っても大丈夫なのか。

オホーツク海に近い北海道遠軽(えんがる)町の山奥にある一軒家。7月中旬、敷地内の約100平方メートルの手作りの囲いの中で女性(当時52)が倒れているのを遠軽署員が発見した。女性の頭や胸、両腕には、かまれた痕があり、ウルフドッグ4匹がその周囲をうろついていた。遠軽署は、女性が犬にかまれて失血死したとみている。

住人の50代男性は、この囲いの中でウルフドッグを放し飼いにし、熊を追い払うようしつけていた。数日間、家を留守にするため、もともと4匹のうち3匹の飼い主でもあった女性に世話を任せたという。

ログイン前の続き犬の起源などに詳しい岐阜大学の田名部雄一名誉教授(動物系統遺伝学)によると、ウルフドッグは猟犬や番犬にするためにオランダで1920~30年ごろに登場した。体高は約50~80センチ。雌のオオカミと雄のジャーマン・シェパードを掛け合わせるのが主流だという。国内にどれだけいるのかはっきりしないという。

かつてウルフドッグを育てたことがある秋田県の元ブリーダーの女性(51)は、別のブリーダーからウルフドッグを入手。交配させることで約30匹のウルフドッグを育て、東京や横浜の愛好家に1匹10万~25万円で売った。大型で野性的な見た目が人気で、室内で飼う人もいるという。

ウルフドッグに関する本7冊を自費出版したほか、ウルフドッグのポストカードや缶バッジをネットで販売している。愛犬家らのイベントで販売すると売れ行きは上々だという。「小さいときからしつけをして人間社会に慣れさせれば、飼うことは難しくない」と主張する。

ところが、北海道でウルフドッグを飼育する男性(52)は「警戒心がとても強い。体も大きく、じゃれあいでも、人は大けがをするかもしれない」と話す。

■飼育数少なく、規制の対象外

ウルフドッグのような交雑種は情報が少なく、規制の網をかけづらいという状況もある。

茨城、佐賀両県は動物愛護条例で秋田犬やジャーマン・シェパードなどを「特定犬」に指定、おりの中で飼うことや玄関に標識を張るよう求める。だが、ウルフドッグは特定犬に指定されておらず、飼育上の制約はない。

また、動物愛護法では、人に危害を与える恐れのある動物を「特定動物」に指定し、飼育方法や管理の仕方に基準を設けている。2012年の検討会では、ウルフドッグのほか、ネコ科・サーバルとネコの交雑種「サバンナキャット」や、イヌ科・ジャッカルと犬の交雑種「スリモヴドッグ」についても規制の対象にするか話題に上った。

ただ、国内での飼育数は限られ、大きな事故も確認されていなかったことなどから、「未知の部分が多く、情報収集を含めて今後の検討課題にする」として、指定は見送られたという。

日本ではこれらの交雑種の流通は少ないとされるが、環境省は「希少であることに価値を感じる愛好家は多い。輸入も難しくなく、一気に広まる可能性がある」とみる。

動物の生態に詳しい東北大学大学院の河田雅圭教授(進化学)は「交雑種は習性や性格がつかみにくい。見た目はなじみ深い動物でも、野性味が強く危険性をはらんでいるかもしれず、ペットには向かない」と指摘する。

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