「高い代償」

画像の説明 英政府が「中国製」原発で払う高い代償

10月22日、英国に原子力発電所を新設することは、理に適っている。しかしフランス電力公社と中国国有の中国広核集団の協力を得て180億ポンド規模のヒンクリー・ポイントC原発を建設する合意となると、状況は極めて込み入ってくる。

英国に原子力発電所を新設することは、理に適っている。しかしフランス電力公社(EDF)(EDF.PA)と中国国有の中国広核集団(CGN)の協力を得て180億ポンド規模のヒンクリー・ポイントC原発を建設する合意となると、状況は極めて込み入ってくる。

原発の寿命は60年なので、経済性を判断するのは難しい。今回のケースでは、英国がフランスと中国の投資を呼び込むため、メガワット時当たり92.50ポンドという保証価格でこの原発から電力を買い取ることを提案した。

現在の卸売価格はこの半分前後だ。新原発の年間発電量(推計)25テラワット時にこの差額を掛けると、年間10億ポンドを超える暗黙の補助金を与える計算になる。

保証価格は物価に連動するため、インフレ率を年2%と想定した場合、基準年を2012年として92.50ポンドに設定された価格は、原発の稼働開始が最も遅れた場合の2033年には140ポンドに上昇している。

その時点で市場の実勢価格がどうなっているかは神のみぞ知るだ。実勢価格が上昇し、暗黙の補助金は目減りしているかもしれない。しかしシェールオイル生産、再生可能エネルギーの蓄電方法の進歩など、未知数の要素は山ほどあり、これらが価格の抑制要因として働く可能性がある。また、物価に連動する92.50ポンドという価格は35年間固定される。

さらに大きな問題はリスクの分担方法だ。書面上では、コストの上振れや電力価格の急騰、原子炉解体コストなどのリスクはEDFと中国側が負う。英国側は、実勢価格が低水準で推移して有権者の怒りを買うリスクに加え、実勢価格とコストが上昇して中仏側が約束を放棄するリスクにさらされる。

英国政府が自ら資金を調達し、ヒンクリー・ポイントC原発を建設すれば事はすっきりするだろう。そうしないのはなぜか。原発に対する世論が二分しているゆえかもしれないし、今どきの政治家は簡潔かつ賢明な判断を不明瞭な方法で覆い隠したがるのかもしれない。

●背景となるニュース

*フランスのEDFと中国は英ヒンクリー・ポイントC原発の建設に180億ポンドを投資する。この契約の調印は習近平国家主席の1週間にわたる訪英に合わせて行われた。

*EDFの声明によると、中国広核集団(CGN)が資金の33.5%を、EDFが66.5%を拠出し、将来的には他の投資家の誘致も狙う。

*この原発は当初、生産する電力メガワット時当たり92.50ポンドでの買い取りを保証され、この価格は英国のインフレ率に連動する。現在の電力卸売価格はこの半額前後。実勢価格が保証価格を上回っても英消費者は差額分を支払う必要はない。

*EDFによると、原発の発電能力は年間25テラワット時。1テラワットは10億キロワットに相当する。

*投資の実行には今後、中国政府の承認を得、書類と資金調達を完了させ、2社の取締役会の承認を得る必要がある。

コメント


認証コード9155

コメントは管理者の承認後に表示されます。