「大手でも・・・?」

画像の説明 三井不動産グループの大規模マンション「パークシティLaLa横浜」で、杭打ち工事に瑕疵があり、マンションが傾いていることが分かって大騒動になっている。この手の欠陥マンション事件は、なぜ繰り返し起きるのだろうか?

専門家も首を傾げる
旭化成建材のお粗末な改ざん

横浜市都筑区にある「パークシティLaLa横浜」。2006年に販売を開始した、全4棟705戸の大型マンションだ。この4棟のうち、傾きが発見された西棟では、打ち込みが足りない8本の杭が発見された。このほかにも、施工データが偽装された杭が多数見つかった。

改ざんを行った動機や、なぜ見抜けなかったかなど、調査しなければならない問題は山積している Photo:Rodrigo Reyes Marin/AFLO

販売主は三井不動産レジデンシャル。施工の元請けゼネコンは三井住友建設だが、問題の杭打ちを行ったのは、下請けの旭化成建材。偽装を行ったのも、旭化成建材の担当者だったことが分かっている。

欠陥マンション自体は、残念なことに決して珍しいことではない。

たとえば、昨年6月には、住友不動産が03年に分譲した「パークスクエア三ツ沢公園」(施工は熊谷組)で、やはり杭が支持層(地中にある固い地盤)に届いていなかったことが発覚。さらに、その半年前には、三菱地所グループと鹿島がタッグを組んだ南青山の億ションで、ずさんな配管工事が行われていることが、完成間近になって内部告発によって明らかになった。

大手デベロッパーの物件だから大丈夫、といった期待は見事に通用しない。最近でこそ、建築需要が復活してきており、ゼネコン業界では無謀な価格での工事請負を避ける風潮が広がっているが、ほんの数年前まで、公共工事の激減によって仕事が足りず、仕方なく安値で受注して糊口をしのぐ傾向が蔓延していた。

そうした“儲からない”仕事の最たるものの1つがマンション。ゼネコン業界関係者が「マンション工事には、ずさんな現場がある」と口にするゆえんだ。

改ざんの動機は、今後の調査結果を待たなければならないが、コスト削減が動機の1つだったのではないかと推測されている。杭打ちの際、事前に想定した杭よりも長い杭が必要になった場合、新しい杭を用意しなければならない。

杭自体はさほど高額なものではないが、新しい杭を準備するとなると、時間がかかる。また、三井不動産レジデンシャルや三井住友建設にどの程度責任があるのかも、今後の調査を待たなければならない。

今回の手抜き工事には、「よりにもよって、建物の基礎に当たる杭打ちでずさんなことをするなんて……」(別のゼネコン関係者)と、驚きの声も上がった。タイル貼りや配管工事で多少手を抜いても、致命的な問題には発展しにくい。言い方は悪いが「バレなければOK」と考える現場担当者がいても不思議ではなく、前述の三菱地所のマンションは「あのまま引き渡してしまっていれば、今もバレてないのでは」。

しかし、杭打ちで手を抜いてしまえば、今回のように建物が傾くなど、いずれ大問題に発展する可能性があることは、さすがに分かっていたはずだ。

建て替えは茨の道か
せめてもの救いは補償の充実

立地の難しさもあったようだ。「『パークシティLaLa横浜』は、南側に川が流れており、砂や泥が堆積した土地と、北側の堅めの地盤の境目に建っています。つまり、柔らかい地盤と固い地盤が混在している。こういう土地は、気をつけなければいけないのです」

武蔵野台地の上のような、強固な地盤の土地ならば、杭は短くて済む。一方、湾岸エリアならば40~50mの杭は当たり前で、地盤改良にも力を入れる。しかし今回のケースのように、どっち付かずの土地の場合、判断には慎重を要するのだという。

いずれにしても、建物の基盤に大問題があるということで、いまさら直すのは難しい。三井不動産側は全棟建て替えも検討しているが、既に入居してしまったマンションの建て替えは、住民の合意を取るのが非常に難しい。引っ越ししたくないと考える人もいるものなのだ。

やはり杭に問題があった住友不動産のマンションも建て替えが検討されたが、いまだに実現はしていない。「住民には、購入価格から住宅ローンの金利、登記などの初期費用に至るまでの手厚い補償が提示され、既に引っ越した人もいるようだ」(不動産業界関係者)。三井不動産の場合も、こうした補償メニューを用意し、残りたい人と、出て行きたい人に分かれる可能性の方が高い。

補償の点では、大手デベロッパーには、安心感がある。三菱地所もやはり、購入者には手厚く補償をした。大手デベロッパーの物件だからといって欠陥マンションではないという保証はまったくないが、何か起きた場合の対応には、それなりのものが期待できるということだ。

もっとも、実際の費用はゼネコン以下が負担させられるのが常。今回の事件であれば、三井住友建設と旭化成グループだろう。

「4棟すべて建て替えるなら、取り壊しと新たな建設費用合わせて280億円程度でしょうか。引っ越し代や、2年半~3年ほどかかるであろう、仮住まいの間の家賃などを負担するとなれば、さらにコストはかさみます」(さくら事務所の長嶋会長)。

欠陥物件を新築時に見抜くのは不可能
中古の方がむしろ安心

建て替えないで住み続ける選択をした場合、中古価格の下落はもちろんのこと、今後さらに傾きが進む可能性があることも覚悟しなければならない。いずれにしても、住民は苦しい選択を迫られることになる。

気になるのは、こうした問題物件をいかにして避けるかだが、「新築マンションで完璧に欠陥を見抜くのは、ほぼ不可能です」(さくら事務所の長嶋会長)。一戸建てであっても、専門家による検査によって、ある程度はチェックできても、今回のような意図的な改ざんまでもを見抜くのは非常に難しい。マンションの場合、入居前に住民が集まって専門家に検査を依頼するのも現実的ではないし、さらにハードルは高くなる。

むしろ「中古で、ある程度の年数が経った物件の中から、丁寧に見極めていいものを選んだ方が確実です」(同)。日本ではいまだに“新築神話”が根強いが、CMやブランドイメージといった表面的な情報ではなく、住宅そのものを冷静に選別したければ、中古物件の方がむしろ安全だ。

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