「国連」

画像の説明 国連創設70年、問われる日本の存在感 発言力強める中国 「戦勝国」は特権手放さず

国連は24日、創設70年を迎える。貧困や気候変動対策などで成果を上げる一方で、世界規模の大戦勃発阻止に向け、頻発する局地紛争の解決に当たる安全保障理事会は事実上、“機能不全”に陥っている。21世紀に入り、常任理事国の中国が強大な経済力を背景に国連内で発言力を強めており、日本の存在感が問われる状況にもなっている。

成果はPKO

「誰も置き去りにしない」。今年9月、創設70年に当たって開催された国連総会に合わせ、貧困や教育格差、気候変動対策などを討議する国連本部でのサミットには、“地球市民”を救うスローガンが掲げられた。「193カ国が入る普遍的な機関は国連しかない。決定したことが世界的な権威を持つのは、70年の成果といえる」。吉川元偉(もとひで)国連大使は国連の意義を強調する。

1945年に発足した国連の功績の1つは平和維持活動(PKO)だ。紛争が絶えないアフリカなど16カ国に総勢12万人以上を展開。PKO部隊が派遣されたインドシナが今、「繁栄のエンジンになっている」(国連外交筋)のは、部隊派遣の成果といっていい。

「戦勝国が支配」

ただ、ここ数年の安保理は機能不全が目立つ。

中でも、シリア内戦では2011年の「アラブの春」以降、内戦での死者数が20万人を超えた。アサド政権の後ろ盾であるロシアは、シリアをめぐる問題で拒否権を4回行使した。

現在は、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が跋扈(ばっこ)する事態に発展し、今年だけで50万人以上の難民や移民が欧州に押し寄せる原因の一つとなった。

ファビウス仏外相は9月、国連総会と並行して開催したニューヨークの会合で、「拒否権は特権ではなく責任だ」と述べ、非人道的な虐殺行為がある場合、大国は拒否権の発動を控えるべきだと提言した。

意表を突く発言に対し、賛同する国は約75カ国に上ったが、ロシアのチュルキン国連大使は「勝手に自分の権利を制限すればいい」と同調しない姿勢を鮮明にした。

アナン前事務総長ら有識者で作る国際的非政府組織「エルダーズ(長老たち)」は今年2月、国連改革を求める提言を発表し、「安保理はなぜ、いまだに第二次世界大戦の戦勝国5カ国に支配されているのか理解に苦しむ」と国際社会に訴えた。

中国の存在感

日本の国連内での存在感を着実に脅かしつつあるのが中国だ。通常予算の分担率は16~18年、現在の6位から3位(7.92%)へと一気に上昇する見通しだ。日本は2位(9.68%)を維持するものの、下げ幅は加盟国中最大で、発言力の低下が懸念されている。

吉川大使は中国の台頭に警戒感を見せつつも、(1)PKOへの「人的」貢献(2)国連分担金とは異なる難民対策への各国の経費供出(3)途上国への政府開発援助(ODA)支出-といった分野も「加盟国の存在感」を示す上で重要なバロメーターであると指摘。

また、加盟国が国連総会に独自に提出する決議案が採択されるか否か、国際機関の各ポストをめぐる選挙で勝利できるかも重要な指標だとした上で、「来年からの2年間、非常任理事国として安保理に席をおくことで発言力を伸ばすチャンスにしたい」と意気込む。

米ニューヨーク大のジェローム・コーエン教授(法学)は「(第二次大戦中に)強権国家だった日本が戦後に大変革を遂げ、民主主義を実践している。世界の手本になり得る」と日本に期待を寄せる。

国連憲章には、日本やドイツなどを対象とする「旧敵国条項」が厳然として残る。95年の国連総会で「死文化」が確認されたが、削除は実現していない。日本政府は「葬式は2回行う必要はない」(外務省筋)と、現時点では追加的な対応に消極的な姿勢を示している。

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