「政策」

画像の説明 高い経済成長に陰りが出てきたモンゴルが、豊富な鉱物資源や中国との貿易頼みの成長モデルから脱却し、産業を幅広く育てようと模索している。

期待するのは、日本からの投資だ。人口300万人の資源大国の将来性を見込み、進出する日本企業も増えてきた。

「日本企業への期待高い」モンゴル商工会議所会頭

ここ数年の開発ラッシュで、高層ビルやマンションが急速に増えた首都ウランバートル。ただ、建設会社の関係者は「2~3年前まではもうかったけど、いまは赤字。良い建物をたてても買い手が少ないよ」と、表情はさえない。

海外からの投資が減り、通貨安になって、物価は上がった。市内に暮らす男性(61)は「食品も値上がりして暮らしは大変だ。一生懸命働いた末に、こんな生活になるとは」とこぼす。定職に就けない2人の息子の将来も気がかりという。

日本の4倍ほどの広さがあるモンゴル。2011~13年には10%を超える高い経済成長が続いた。石炭や銅、金などの鉱物資源が輸出の約8割を担う。また輸出全体でみれば8割以上が隣国の中国向けで、中国経済の減速と資源の値下がりは大きな打撃だ。14年の成長率は約8%で、15年はさらに下がる可能性がある。

中国、そして石油の輸入が多いやはり隣国のロシア以外の国との経済交流を増やし、中小企業の育成など「鉱物資源に頼らない、競争力のある産業を育てていく」(モンゴル政府高官)ことが課題だ。そこで期待を寄せるのが日本だ。

エルベグドルジ大統領は8月末、ウランバートルに来た経団連の幹部らに「これからは日本との経済関係をさらに発展させたい」と熱心に投資を呼びかけた。

大相撲の横綱を輩出するモンゴルは日本への留学生も多く、街中では日本車が目につく。モンゴルと日本の貿易額は約360億円にとどまり、大半は自動車や機械など日本からの輸出だ。しかし、数カ月後をめどにEPA(経済連携協定)が発効する見通しだ。

モンゴル国商工会議所のオユンチメグ会頭は「農産品の加工や再生可能エネルギーなどの産業を育てることが必要。豊富な資源と日本が持つ技術をうまく結びつけたい」と力を込める。

■中小企業、将来性に期待

日本企業の関心も高まっている。資源開発のほか空港、発電所といったインフラ整備に大手商社などが参入。外務省によると、出張所などがある日本企業は14年で約350社あった。220社前後だった前年までより増え、中小企業が目立つ。

その一つ、賛光精機(埼玉県本庄市)のウランバートルの工場では、日本から持ち込んだ加工機械が並んでいた。慣れた手つきで操っていたモンゴル人の社員(20)は「機械の扱い方など技術が学べる。ぜひ長く働きたい」と話す。

空圧機器などに使うアルミ部品や太陽光パネルをつくっており、モンゴル人研修生を受け入れたのが縁で10年前に進出。アルミ部品は日本から輸送した材料を切削し、また全量を日本に送る。清水規正取締役は「人件費が安く、まじめで能力も高い。親日的なことも決め手になった」と話す。太陽光パネルは一部をモンゴルでも販売し、遊牧民の移動式住居「ゲル」などで使われているという。

屋内でのエビ養殖を始めた商社のエムズコーポレーション(東京)は、年内の出荷をめざしている。エビを食べる習慣はなかったが、最近は日本食の人気もあって、富裕層に知られるようになった。技術支援するIMTエンジニアリングの冨田ゆきし社長によると、いずれは中国やロシア、カザフスタンなどへの輸出や展開も視野に入れている。

人口が茨城県ほどのモンゴルは市場としては小さいが、ある食品関連企業幹部は「中小企業なら、先行すれば利益が十分得られる」と期待する。一方、「現地で信頼できるパートナーに恵まれず、失敗する例も少なくない」(日本企業関係者)との指摘もある。

コメント


認証コード2603

コメントは管理者の承認後に表示されます。