「ミサイル撃墜」

画像の説明 ウクライナ東部上空で昨年7月にマレーシア機が撃墜された事件で、原因の調査を主導するオランダ安全委員会が13日、最終報告書を発表した。

ウクライナ東部から発射されたロシア製ミサイルに撃墜されたと結論づける一方、誰が発射したかは特定しなかった。今後は、刑事的な責任追及に焦点が移る。

■どこから誰が発ログイン前の続き射、明言せず

アムステルダム発クアラルンプール行きのマレーシア機には乗員乗客298人が搭乗、全員死亡した。ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力がウクライナ東部で激しい戦闘を続けていたさなかに発生した。

事件後、欧州連合(EU)が金融などロシアの主要産業の経済制裁に踏み切り、欧州とロシアの亀裂は決定的となった。

調査は最多の犠牲者が出たオランダが主導。報告書は撃墜にはロシア製の地対空ミサイルシステム「BUK(ブーク)」が使われ、ウクライナ東部から発射されたミサイルが、操縦室の左側上部で爆発したと結論づけた。事件前には、戦闘機が頻繁に撃墜されており、ウクライナ当局は現場空域を閉鎖すべきだったとも指摘した。

ミサイルの発射地点については明言していないが、報告書に付された地図からは、ドネツク州東部の親ロシア派が支配していた地域だったことがうかがえる。

これに対し、ロシアのリャプコフ外務次官は報告書について「政治的な要請に応えたものだ」と批判。BUKを製造しているロシアの「アルマズ・アンテイ」社は13日、モスクワで記者会見をし、「ミサイルは当時ウクライナ政府軍の支配下にあったウクライナ東部ドネツク州のザロシェンスコエ村付近から発射されたとみられる」という同社独自の調査結果を発表した。

今後の焦点は、オランダやウクライナ、オーストラリア、マレーシアなどが参加する国際合同チームによる刑事事件の捜査に移る。オランダのルッテ首相は13日、会見で「ロシアに協力を求める」と述べた。

ロイター通信によると、今年6月までウクライナの調査責任者を務めた治安当局関係者は9日、「(マレーシア機を撃墜した)ミサイルシステムが、高度な技術力がある要員とともに、ロシアから送られたと確信している」と語った。

ウクライナ東部では、政府と親ロシア派が今年2月、ウクライナとロシアにドイツ、フランスを交えた4首脳会議をへて停戦に合意。しかし、戦闘は続き、9月にやっと小康状態になった。4首脳は10月初めに再度会談し、年内とされた合意事項の実施期限を事実上延長した。

今後の捜査で撃墜事件へのロシアの関与に踏み込めば、停戦合意の履行に影響が出ることもあり得る。

■遺族、刑事捜査に期待

調査報告書は、ミサイルを発射した主体にまでは踏み込まなかった。誰が家族の命を奪ったのか。遺族は答えを待ち続けている。

オランダ南部ハーグの元公務員のレギー・スペッケンさん(65)は事件で長男レインさん(31)を亡くした。恋人とインドネシア旅行に行く途中だった。

レインさんは「自慢の息子」だった。写真やサーフィン、サッカーなど趣味が多く、いつもリーダー的な存在。大学卒業後は、市役所などで都市計画に携わっていた父の背中を追うように建築会社に入った。「息子は人生を謳歌(おうか)していた。これからという時だった」と悔しくてたまらない。

事件から1カ月半後、遺体が見つかった。190センチ近い大柄なレインさんは「土にまみれた三つの小さな骨片」で戻ってきた。

今年6月、ウクライナを訪れ、遺体の回収を手伝った少年らに話を聞いた。空から人間が降ってくるのを見た悲惨な体験を聞いて「この人たちも自分と同じようにつらい思いをしたのだ」と、涙があふれた。

スペッケンさんは13日、遺族向けの報告書の説明会に参加した。報告書では、機体の爆発後すぐ、乗客が意識を失ったことも明らかになった。「息子が死ぬ前に痛みや苦しみを感じることがなかったことが、せめてもの救いだ。今後の刑事捜査に期待したい」

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