2018年11月1日よりタイトルをWCA(世界の時事)に変更しました。
「ビジネス」
ヤマト運輸が3年前にまいた種が、今夏、開花し始めた。
2012年、ヤマトは全日本空輸(ANA)と提携、沖縄県那覇市の沖縄国際物流ハブを拠点として、国際的な物流事業に乗り出した。「物を早く届ける」というヤマトのお家芸を海外にも展開しようともくろんだのだ。
沖縄国際物流ハブのある那覇空港からアジア各国へは、深夜便が多く行き来している上、貨物の手続きの速度が速く利便性も高い。こうしたメリットを利用すれば実現可能と踏んだのだ。
しかし、一般的に海外に素早く物を届けることに対するハードルは高い。何しろ空輸のコストは船の10倍ともいわれており、事実、日本の貿易量の99.7%は船によるものだ。
多くの物流会社が航空貨物事業で失敗をしてきた歴史もあり、普通に考えれば船に太刀打ちすることは難しい。
そこで、ヤマトが目を付けたのが、「高価格」かつ「速さ」が必要とされる“特別”な荷物だ。
まず13年から、香港向けのクール宅急便事業をスタート。北海道で捕れた魚介類であれば、それまで3日ほどかかっていたものが翌日にはテーブルに並ぶとあって、香港の高級ホテルやレストランからの注文が相次いでいる。
15年に入り、さらに対象エリアを拡大。3月には台湾、8月にはシンガポールにもクール便のサービスを始めたのだ。
在庫管理まで請け負う
ヤマトが生鮮品の次に目を付けたのが、メーカーの保守部品だ。
アフターケアは、海外で製品を販売するメーカーにとって常に悩みの一つだ。例えばオフィスのコピー機が動かなくなったときに、「部品は船便で来るので時間がかかります」というのは許されない。そのため各メーカーは、進出した国に大量の在庫を抱えることで対応してきた。
そこでヤマトは、沖縄とシンガポールに部品の在庫を分散させながら、運用は一体的に行うサービスを開始した。
シンガポールの在庫が減ればすぐに沖縄から補充、顧客からすれば沖縄とシンガポールにある在庫が、まるで一つの棚にあるように見える。これにより、顧客は沖縄の担当者とやりとりさえすればよく、現地に倉庫を持つ必要はなくなる。
しかも、シンガポールで部品が必要になった場合、ヤマトが現場まで届けてくれるから便利だ。
今後、他国にも展開されれば、広いエリアでの在庫管理をヤマトに任せることが可能になる。このサービスを利用しているのはまだ1社だが「引き合いは強い」。
「すぐに届く」というお家芸がアジア全域で受け入れられれば、船便の“壁”を突き破ることも夢ではない。