「大丈夫?」

画像の説明 誰かが引き受けなければならないが、誰も受けたくない-。

さながらトランプの「ババ抜き」のような様相を見せている原発の高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定。国が5月から全国で行っている自治体向けの非公開の説明会で、3割の自治体が出席を見合わせていることが分かった。

「処分場誘致に前向きと取られかねない」という風評被害への不安や、原発立地地域以外での関心の低さが背景にあるとみられる。国は原発の再稼働を前に核のごみの議論を本格化させたい意向だが、思うように進まない。

日時も場所も非公開

「どんな説明を受けても、町が処分場を受け入れることはない」

北海道の厚岸町は、国から核のごみの説明会への出席を求められたが、断固として拒否した。同町は、過去に専門家から処分場の適地として名指しされた経験がある。昨年9月には、「核廃棄物最終処分場はいらない」とする宣言を可決していた。

核のごみの持ち込みを拒否する唯一の条例がある北海道では、6月1、2日に説明会が開かれたが、厚岸町に限らず欠席が相次ぎ、出席は半分に満たなかったという。

説明会は、経済産業省資源エネルギー庁が、処分事業の実施主体の原子力発電環境整備機構(NUMO)と協力し、全国9カ所で行う一般向けのシンポジウムと並行して開催。全国47都道府県のすべての自治体が対象で、国による処分地選定の方法や、地下300メートル以深に放射性廃棄物を閉じ込める「地層処分」の安全性について周知するのが目的だが、自治体側の積極的な出席や発言を促すため、参加自治体名だけでなく、開催日時や場所まで公表していない。

エネ庁によると、7月2日までに約40の都道府県で説明会を開催。各市町村の担当者にメールや電話などで直接参加を呼びかけたが、任意で応じたのは7割弱だった。特に福島県の反発は強く、開催すら困難な状況だ。

岡山県で6月2日に開催された説明会ではトラブルを招いた。

出席した自治体の担当者が終了後にテレビ局のインタビューに応じたところ、インターネット上で「放射性廃棄物の最終処分場ができるらしい」などと誤った情報が拡散し、自治体がホームページ上に「放射性廃棄物の最終処分場には絶対なりません!」と緊急メッセージを掲げる騒ぎとなった。担当者は「国の呼びかけに応じて参加しただけなのに、想定外の事態だった」と困惑する。

受け止めに温度差も

こうした現状について、エネ庁の担当者は「説明会は、処分地選定について広く関心を持ってもらい、自治体との信頼関係を構築するためのもの。本当に残念としか言いようがない」と話す。

一方、使用済み燃料の再処理工場を県内に抱え、核のごみの最終処分地選定について国に積極的な行動を求めてきた青森県の担当者は、「国主導で動き出したことは、前向きに受け止めている。処分場をどこで受け入れるかは別の問題として、説明会の開催には協力したい」と理解を示しており、地域による受け止め方の違いや、温度差が大きいのも現状だ。

核のごみの最終処分地の選定は、海外でも難航している。日本を含め処分場の建設を予定する8カ国のうち、これまでに決まっているのは北欧のフィンランドとスウェーデンのみだ。

いずれも選定開始からおよそ20年かけて、政府や事業者が地域住民と対話の場を設け、地域の発展に寄与することなどを前提に合意に至った経緯がある。

後手に回った処分地選定

国内では、国が平成12年に最終処分に関する法律を施行してNUMOを設置し、14年から候補地を公募してきたが、自治体が手を上げるのを待つ“受け身”の姿勢のまま、候補地の選定は10年近く停滞していた。

処分場の必要性や安全性について、国民に基本的な知識を普及する積極的な広報活動についても、東京電力福島第1原発事故から3年が経過した昨年度からようやく本格化するなど、後手に回った感は否めない。

こうした現状について、経産省総合資源エネルギー調査会放射性廃棄物に関する検討会の増田寛也氏は6月26日の原子力小委員会で、「高レベル放射性廃棄物の問題の所在そのものが、ほとんど国民に知られていなかった」と指摘した上で、建設から閉鎖まで“100年事業”とされる処分場について、若年層への啓発活動の必要性についても訴えた。

政府は15年後の42年度の電源構成比率で、現在全基停止している原発の比率を、20~22%程度に回復させる方針を示している。

その実現には、夏以降に控える原発の再稼働を着実に進めていくとともに、核のごみの問題を含めた原発の中長期的な利用について、現実的なものとして議論する“風土”の醸成が大きな課題となる。

「核のごみ最終処分」

国は原発の使用済み燃料を再処理してプルトニウムやウランを取り出し、混合酸化物(MOX)燃料にして再利用する「核燃料サイクル」を目指している。この過程で出る廃液が高レベル放射性廃棄物(核のごみ)で、強い放射線を出すためガラスと混ぜて固化体にし、地下300メートルより深い岩盤に埋めて数万~10万年間、生活環境から隔離し「地層処分」する。

真剣に考える問題だね・・・

コメント


認証コード4681

コメントは管理者の承認後に表示されます。