タイ高速鉄道建設を中国に取られメンツ丸つぶれの日本

画像の説明 舐められるならバラまきやめろ

タイのプラユット暫定首相が近く来日する。安倍晋三首相との首脳会談などが行われる予定で、日本はタイがミャンマーと共同開発するダウェイ経済特区(SEZ)開発支援を表明する予定だ。しかし、同特区開発は資金のめどさえたたず、タイ、ミャンマー両国は日本への丸投げを狙う。日本もそろそろ従来のばらまき姿勢を見直すときだろう。

タイは東南アジア諸国連合(ASEAN)のなかで日本からの投資を最も多く受け入れている。一方、タイの貿易相手国では中国が最大のお得意様だけに、経済面でタイは、中国と日本との間でバランスをとってきた。そのバランスが最近、崩れている。

日本はこの数年、タイ縦断高速鉄道の建設計画を提案してきた。インフラ輸出に力を入れる安倍首相は、昨年11月のミャンマー・ネピドーで行われた首脳会談でも、プラユット首相に鉄道建設を売り込んだ。

しかし、こうした働きかけにもかかわらず、先月、バンコクで開かれたタイ・中国首脳会談でタイ政府は中国と南北縦断鉄道の建設計画で合意した。計画はラオス国境のノンカイからバンコクの南東でタイ湾に面するマプタプット港までをつなぐ路線(734キロ)を中国企業の手で建設するものだ。

日本の外交筋は「ノンカイのような誰もいない所に鉄道を作っても意味がない。それに日本が関心を持っているのは高速鉄道だ。他の場所でいくつも日本に作ってほしいという要望がタイ側から来ている」という。

中国はラオスとも昆明とビエンチャンを結ぶ高速鉄道建設計画を進めており、ノンカイはビエンチャンの目と鼻の先だ。ビエンチャンまで来れば一気にバンコクまで高速鉄道がつながる。日本のメンツは丸つぶれだ。にもかかわらず、日本政府はダウェイ経済特区の開発を支援することにも前向きだ。

ダウェイ開発は当時軍政だったミャンマー政府が、タイの建設大手イタリアンタイ・デベロップメント(イタルタイ)に丸投げしたもの。資金不足で頓挫したのを両国政府が乗り出し、仕切り直したプロジェクトだ。それだけに計画当初から日本の参加は大前提となっている。

「ダウェイはミャンマーにとって、金を借りてまで開発する場所ではない。タイもダウェイ開発の優先度は低い。ダウェイで得をするのはタイ進出日系企業だから、日本の支援は当然だ」(タイ外交筋)というわけだ。

日本政府はタイやミャンマーなどASEAN各国への支援について、域内での影響力を強める中国を牽制(けんせい)するうえで重要と説明する。しかし、ASEAN各国に、中国と対峙(たいじ)するような意思や力があるとは思えない。

もし牽制というならヤンゴン近郊のティラワSEZのように中国と競り合ってプロジェクトを取ればいいが、「中国はダウェイへの関心はまったくない」(外交筋)のが実態だ。これでは牽制などにならない。

今回のタイの鉄道計画を見ていると、日本政府はタイ軍政に舐められているようだ。タイ側には「日本は多額の投資をしており、タイを見捨てることはない」という声さえある。

メンツをつぶされたのだから日本は怒るべきだ。「大人の対応」などと言って怒らなかったから、調子に乗って日本をあしざまに言う国が出てくる。

「不愉快だからダウェイ支援などしない」と言えばいい。相手に厳しいことを言わず、ばらまくだけなら誰でもできる。

コメント


認証コード5074

コメントは管理者の承認後に表示されます。