「日本は中国の漁民を捕まえても罰せられない」

画像の説明 舐められる日本の司法 福岡地裁「無罪判決」の“罪”

昨年秋、小笠原諸島(東京都)周辺には中国からサンゴ密漁船が大挙して押し寄せ、その数は一時200隻以上に膨れ上がった。これほどまでに密漁船が増えたのは、昨年10月に福岡地裁で中国人漁民に出された「無罪判決」が影響したのではないか-との見方が関係者の間で浮上している。判決が出たのは中国船団が急増した時期とちょうど重なっており、判決が漁師たちの“遠征”を後押ししたとの見方も。今月から小笠原沖で逮捕された中国人船長らの公判が相次いで開かれるが、今後の法廷での証言に注目が集まる。

「領海内とはわからなかった」…無罪判決の衝撃

昨年10月15日、外国人漁業規制法違反(領海内操業)の罪に問われた中国国籍の男性に対する判決が、福岡地裁で言い渡された。結果は、「無罪」だった。

男性は平成26年5月、五島列島(長崎県)沖の日本の領海でサンゴ漁をしたとして、水産庁九州漁業調整事務所(福岡市)に現行犯逮捕された。

検察側は「捜査段階の供述では故意(領海内の操業)を認めていた」と主張したが、丸田顕裁判官は「供述調書は、衛星利用測位システム(GPS)の実際の状況と異なり、信用できない。供述を誘導した疑いが拭えない」と指摘。判決理由では、男性の船に搭載されていたGPSは領海内と表示していなかったとして「(男性が日本の)領海内と認識することはできなかった」と無罪を言い渡した。その後、男性の無罪が確定した。

「日本は中国の漁民を捕まえても罰することはできない」…判決に中国ネットユーザーが反応

この無罪判決が注目されたのは、小笠原周辺でサンゴ密漁目的の中国船団が急増した時期と重なったためだ。

9月15日に17隻を数えた中国船団は無罪判決後の10月23日には113隻、同30日にはピークの212隻に膨れ上がった。判決が出た10月15日は、その後の隻数の上昇カーブのきっかけとなった可能性があるのだ。

一方、この判決は中国でも報道され、インターネット上にはさまざまな書き込みがあふれた。

「日本は中国の漁民を捕まえても罰することができなかった。これはわれわれの勝利だ」「日本の領海だって?本当は中国の領海だろ」といった愛国主義をあおるものから、「どこであろうとサンゴを獲るのは罪だ!」「赤サンゴはすぐに再生できない地球の宝。野蛮な中国人!」と冷静な見方まであり、中国国内でこの判決が関心を引いたのは間違いない。

海保幹部は無罪判決と船団の急増との因果関係について「取り調べの中で無罪判決の影響があったとは聞いていない」と懐疑的な見方を示すが、「結果的に見れば、判決が出た時期と中国船団が急増した時期とは重なる」と指摘する。

偶然なのか必然なのか…それでもサンゴブームが続く限り中国船団はやってくる

福岡地裁での無罪判決は実際に密漁者の心理をあおったのだろうか。

小笠原沖で昨年10月以降に逮捕された計9人の中国人船長のうち、排他的経済水域(EEZ)で逮捕された6人は早期釈放制度が適用され、すでに帰国している。領海内で逮捕された残りの3人は外国人漁業規制法違反(領海内操業)の罪で起訴され、12月16日には1人目の初公判が横浜地裁で開かれた。

ただ、1人目の中国人船長は無罪判決が出る前の10月5日に逮捕されており、判決との関係はない。法廷では給料を2倍出すと関係者から持ちかけられ小笠原沖の領海内に来航し密漁したことを認めている。

無罪判決後の11月21日と同23日にそれぞれ逮捕された残り2人は、今月以降に順次公判を控えており、小笠原沖への遠征動機に無罪判決の影響が含まれるか注目される。

2カ月半にわたり中国漁船が小笠原沖の高級サンゴを好き勝手に取り尽くした一連の騒動。船団が現場海域からほぼ消えたことで収束したかに見えるが、取り締まりに当たる海保が警戒を解くことはない。海保の佐藤雄二長官は12月17日の定例会見で長期戦を視野に気を引き締め、こう述べた。

「中国でのサンゴブームは依然として続いており、需要が高い間は、小笠原沖に密漁目的の中国船団がいつ来てもおかしくない」

コメント


認証コード8774

コメントは管理者の承認後に表示されます。