京都市の砂防ダム内に集落 60年にわたり“不法占拠”

画像の説明 京都府、退去求めて本格対策へ

京都市北区の砂防ダムの内側に約60年にわたって不法占拠状態で居住している住民がいるとして、河川管理者の京都府が平成27年度に、移転要請を含めた本格的な対策に乗り出すことが4日、分かった。現場は国有地で現在、約50人が居住しているが、災害の危険があるものの長年、居住していた実態から反発する住民もいるという。府は住民らの説得作業を進め、まずは自主移転を呼びかける方針だ。

京都府砂防課によると、現場は、紙屋川にある砂防ダムの内側。土砂災害の防止のために設けられたダムで、昭和28年にダムが建設された直後から川べりに在日韓国人や在日朝鮮人らが住む集落がつくられていたという。

府は集落を認知していたものの、これまでは居住を続けることを事実上、黙認していた。しかし、昨年8月に広島市で土砂災害が発生し、防災に注目が集まる中、この地域が大雨で集落が繰り返し浸水していることなどから方針を転換。居住者の安全を確保する必要性があることから、移転を求めることを決めたという。

府が行った事前の調査では、集落には約30世帯の約50人が居住している。なかには小学校に通う児童もいるという。建物は民家など全体で約50棟あり、空き家も10棟以上が確認された。

府の担当者は移転を打診したが、聞き取り調査に対し、住民側の一部は「50年近く暮らしている」「なぜ今さらそうなるのか」と反発しているといい、移転作業はスムーズには進みそうにない。

府は新年度予算に空き家の撤去費用を計上。まずは空き家となっている建物の撤去を行い、不法占拠となっている状態の解決に向けて着手していくとしている。しかし、長年にわたって居住してきた実態もあることから、即座に強制撤去を行うなどの強硬策は考えていないという。担当者は「すぐに解決できる問題ではないかもしれないが、話し合いの中で解決策を見いだしたい」としている。

行政放置…豪雨災害でクローズアップ、住民と交渉難航

京都府は、なぜ国有地の不法占拠状態を放置してきたのだろうか。

府の担当者は「何も対策を取ってこなかったわけではない」と話す。集落には老朽化した物件も多く、改築や増築している家屋には、建設中止の指導や是正指示などをしていた、としている。しかし、ある府関係者は「集落の人数が少なかったこともあり、府政の課題としてクローズアップされにくかったのではないか」と打ち明ける。

方針を転換するきっかけとなったのは、平成24年夏に起きた豪雨災害だった。浸水被害時にゴムボートで救出される住民が報道されるなどして注目を集め、対策を進めることになったという。当初は集落の居住者数も把握できておらず、まずは現場の調査を実施し、そのうえで対策に乗り出すことになった。

集落側には自治会のような住民組織がなく、住民代表もいないため、府の交渉は一軒一軒との個別対応を迫られている。生活の基盤にかかわる問題でもあり、住民側との協議は難航しているという。

集落側には自治会のような住民組織がなく、住民代表もいないため、府の交渉は一軒一軒との個別対応を迫られている。生活の基盤にかかわる問題でもあり、住民側との協議は難航しているという。

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