農家が貪るおいし過ぎる特権

画像の説明 税金減免に、農地成金が続出

農家は特権階級といったら驚くだろうか。実は彼らは税制などさまざまな面で優遇されている。農政改革が進む一方、農家がむさぼるおいし過ぎる特権は変わらぬままだ。

「農家の特権ですか? 確かに、たくさんありますね」。ガハハと笑いながらそう打ち明けるのは、埼玉県内に住む会社員の田中大作さん(仮名)。同居する親が兼業農家をやっているらしい。

一般的に農家の特権といえば、「トーゴーサン(10:5:3)」という言葉を思い出す人がいるかもしれない。

これは所得に対しての税務署の捕捉率を指す用語だ。サラリーマンは源泉徴収されるため、所得の10割を捕捉されて強制的に税金を取られているが、私生活の飲み食いなどまで経費処理できる自営業者は5割、農家に至っては3割しか捕捉されていないことを表しているわけだ。

実際の捕捉率はもっと高いといわれているが、それでも全てを強制的に差し引かれるサラリーマンとは雲泥の差だ。

農家の特権はもちろんそれだけではない。

「うちは“農電”を使うから、光熱費なんかもただ同然なんです」と田中さんは明かす。

農電とは農事用電力のことで、田植えでポンプを使う際などに格安で契約できる農家向けの優遇電力だ。これを家庭用にも流用しているというのだ。

しかしなぜ、農作業用の電気を自宅で使用できるのか。よくよく聞いてみると、さらなるグレーな特権が浮上してきた。

「これは本当に言いたくないんですけど、実は、うちの自宅は建てる際に宅地としてではなくて、農作業所として申請しているんです。その方が、税金が大幅に優遇されるから」

農家の間では広く知られた伝統的な節税の手口だそうで、その際のマニュアルもあるという。

「許可が下りるまでは、風呂などの水回りは作らないんです。許可が出てから、水回りを設置すれば大丈夫」

こう聞いていると、グレーというより、完全なるクロなのだが、田中さんにも言い分はある。

「もちろん自宅として住んでいますが、本当に農作業もしてるんです。たまに。だからクロではなくて、グレーなんです」。苦しい言い分である……。さて、税金の話が出てきたので、話題を移そう。

農地が生産緑地なら固定資産税、相続税も優遇

農地が生産緑地なら固定資産税、相続税も優遇される農家

「固定資産税ですか? これもただみたいなもんです。広い土地を持っていても、数百円程度だったと思います」と田中さん。

実際、農家は税制面でも優遇されている。

例えば、東京、大阪、名古屋の三大都市圏の特定市の市街化区域内にある都市農地は、宅地などへの転用が許可される「宅地化農地」と、農地として保全していくことを目的とする「生産緑地」に区分されている。

「宅地化農地」については当然、宅地並みの課税となる。一方で、「生産緑地」の指定を受けた農地については、「宅地並み評価」ではなく「農地評価」として、固定資産税は田中さんの言う通り、大幅に軽減されることになる。

田中家も、宅地並み課税を受けるような農地を一つでも持っていれば、兼業農家が稼げる程度の農業収入は固定資産税の支払いで一気に吹っ飛ぶはずである。

それが一転、1反の農地で数十万円の固定資産税がかかるケースでも、「生産緑地」の指定を受けた農地であれば、数百円程度の税負担で済むというのだから、うらやましい限りである。

農家にとっての「最大の特権」とは

また、相続税についても、農地には納税猶予制度がある。納税猶予とは、相続人が取得した農地で引き続き営農するなら、相続税の納税を猶予するという特権である。

三大都市圏の特定市の場合、「生産緑地」と市街化区域外の農地では生涯適用されるが、市街化区域内の農地では適用がない。適用条件を勘違いしていたら、大変なことになりそうだ。

納税猶予が認められれば、事実上、相続税を免除されるのと同じことを意味する。他業種では絶対に考えられない。まさに農家だけに認められた優遇措置といえるだろう。

しかし、農家にとっての最大の特権は、別にあると田中さんは考えている。

埼玉県内を走る圏央道。建設工事に伴う用地買収で"農地成り金"が続出している

「最近うちの周りでは圏央道の工事が進んでいて、持っていた農地が用地買収されて、農地成り金になった農家がゴロゴロいる。けっこういい金額の提示があったらしいよ」

農地という巨額の現金に化ける可能性がある“打ち出の小づち”を格安の保有コストで持てること。これこそが農家の最大の特権だと田中さんは言うのだ。

実際にここ最近、農地の転用期待から、農業をしないのに農地を手放さない「土地持ち非農家」が増加している。

その多くは公務員として地元の役所に勤めつつ、自分の農地が高速道路やショッピングセンターに化けないかと、農地成り金を夢見ている“偽装農家”なのだ。農政改革を推し進める政府には、ぜひとも農家の特権にもメスを入れてほしいものである。

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