「サイバー亡命」広がる韓国

画像の説明 監視嫌い通信アプリ変更

韓国では大統領の発言が発端で、「サイバー亡命」が広がっているという。物騒な呼び名だが、「カカオトーク」や「LINE」といった無料通信アプリの乗り換えの話だ。何が起きているのか。

「国民を代表する大統領に対するぼうとく的な発言も度を越している」

朴槿恵(パククネ)大統領が閣議でこう発言したのは9月。旅客船セウォル号の事故後、ネット上では大統領や政府への批判・中傷が噴出した。産経新聞前ソウル支局長に対する捜査も表面化。発言の2日後、最高検が「ネット上の名誉毀損(きそん)を積極的に取り締まる」と表明し、さらに1週間後、専門の捜査チームを立ち上げた。

韓国は人口約4900万人のうち、利用者数が3500万人に上るという無料通信アプリ大国。9割は韓国企業ダウムカカオが運営するカカオトークの利用者とされ、多くが自らも監視対象になると思い込んだ。

ソウルの会社員、朴賢貞さん(30)もそんな一人。「カカオトークはプライバシーが侵害されるみたいで気持ちが悪い」。10月初め、ドイツのアプリ「テレグラム」も利用し始めた。

会社員の崔敏英さん(33)は親友とのやりとりや大事な商談はテレグラムでするようになった。カカオトークを使っていた友人たちから、「テレグラムに加わりました」との知らせが今も1日1人ほどのペースで届く。

韓国の野党国会議員の調べでは、韓国系6社の通信アプリの1日平均の利用者は9月末から1週間で約170万人減ったという。

ダウムカカオは10月、昨年から今年上半期まで、裁判所の令状に基づいて約140件の常時監視に応じ、検察や情報機関に約3900件の通信記録を提出したことを認めた。李碩祐・共同代表は記者会見で、令状請求から発付までに3~4日かかるため、「データの保存期間を2~3日間に短縮する」「今後、令状には応じない」と表明。これに対して、金鎮太・検察総長は国会で「協力しないなら直接監視する」と強硬な姿勢を示した。

プライバシーの問題に詳しい高麗大の朴魯馨教授は、最高検が問題視するのは不特定多数が目にするネット掲示板などでの誹謗(ひぼう)・中傷だとして、「通信アプリの監視は北朝鮮のスパイや麻薬犯罪の容疑者が対象で、一般の人はほとんど関係ない」と指摘。国は監視対象の範囲などを定めた法整備を急ぐ▽通信企業は利用者の人権保護に尽くす▽利用者はプライバシーを自ら守る意識を持つ――ことを提案する。

日本での事情はどうか。

カカオトークのプライバシーポリシーは、日本の利用者の全ての情報が韓国内で処理され、保存されると記す。ダウムカカオの担当者は、韓国と海外の利用者を区別せず、プライバシー保護に努めるとした。

国内加入者数が最多の5400万人のLINE(東京)は、情報を蓄積するサーバーが国内にある。担当者は利用者情報の捜査機関への提供について、「日本の裁判所の令状に基づいて捜査当局が差し押さえを実行した際、可能であれば対応している」。韓国での事態を受けた対策は「特にない」と言う。

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