2018年11月1日よりタイトルをWCA(世界の時事)に変更しました。
三権分立もあったもんじゃない
「週刊文春」の編集長を7年間やったけれど、政権からのプレッシャーはなかった。スポンサー筋の記事を掲載する際に、広告代理店を通じて「タイトルを柔らかくしてくれないか」とか「名前は匿名にしてほしい」という要望はあって、それには応じていた。
タイトルを少し変えようと、例えば「佐藤社長」という表現を「A社長」としようと、読者にはあまり関係ないからだ。「記事をやめろ」という要望には応じられないが、それはさすがにいってはこなかった。
加藤達也前ソウル支局長(現東京本社社会部編集委員)がソウル中央地検に名誉毀損(きそん)で在宅起訴された。韓国政府が産経新聞の日頃の論調をお気に召さなかったのは確かだろう。朴(パク)槿(ク)恵(ネ)大統領は「在宅起訴してほしくない」と表明することもできるわけで、そのような対応をしなかったことは逆に、検察に在宅起訴をやらせたと疑われてもしかたがないのではないか。
セウォル号の沈没事故当日、朴大統領の所在や動向が7時間分からないという「空白の7時間」について、公人である大統領であれば、はっきりすべきだろう。もしやましいことがないのなら、「その時間はここにいてこういうことをしてた」と説明すればいいが、今も説明していない。
慰安婦問題や徴用工の問題で、韓国の司法が政権の意向に左右されるというケースは過去にもあった。三権分立も何もあったもんじゃない。検察も大統領の顔色を見ている。
朴大統領は個人的な意見としてでも、「在宅起訴はやらないほうがよかった」ということぐらいは表明してもいい。
長期間にわたって、加藤前支局長を国外に出さないというのは、証拠隠滅や逃亡の恐れもないのに非常におかしな話で許されない。加藤前支局長は検察の事情聴取にもきちんと応じており、留め置く理由はない。
改めて産経新聞の対応を見直した。社としても加藤前支局長個人としても負担は大きいだろうが、何とか頑張ってほしい。