分岐路に立つ「危機感」が争点である

画像の説明 いよいよ今日、衆院選の公示日を迎え、師走の選挙戦が本格的にスタートする。12月14日の投票日まで比較的短い選挙期間であるが、活発な論戦を期待したい。

とはいえ、公示日を迎えると実質的に選挙戦は終盤に入ったとも言われる。今回の総選挙の意義については、すでに多くの議論がなされている。その1つとして当初、野党やマスコミの一部からは「大義なき解散」とか「なぜ今なのか」といった疑問が提起された。しかし私には、このような議論があること自体が、今、この国に一番足りないものが何かを教えているように感じられた。それは「危機感」ということである。

最後の希望のアベノミクス

このことは野党・マスコミだけでなく与党の一部、あるいは国民の中にも広く見いだされた。

「なぜ今、こんなに多くの議席を持っているのに解散などするのか」「任期があと2年以上あるのに、なぜわざわざ」などといった声が聞かれた。しかし解散表明前日の11月17日に内閣府が発表した数字は、日本経済あるいはこの国自体が「危機」に直面していることを示すものであった。

今年7月から9月の第3四半期の国内総生産(GDP)成長率が前期に続いてマイナス成長、それも年率でマイナス1・6%という予想外のものであった。4月に5%から8%に引き上げられた消費税の導入が依然、成長の足を引っ張っており、日本経済がこの2年間、デフレ脱却へ向かっていた勢いがここで失速する可能性が浮上した、ということだ。

当然、来年10月に予定されていた消費税10%への再引き上げは先延ばしせざるを得ず、社会保障をはじめとするさまざまな施策にも影響が及ぶことになる。

しかしそれ以上に、今や「この国の悲願」ともいえる経済再生と持続的成長の確保という、かけがえのない重要な国家目標が成否の分岐路に立っていることを、われわれはもっと強く自覚しなければならないのではないか。

すでに20年近くにわたる長期のデフレによって日本経済は未曽有の低迷を続けており、この2年間アベノミクスの発動によって、ようやく光明が見え始めていた。

そこへ先のような数値が報じられたのである。20年ぶりに成果を生み始めたアベノミクスが、日本の未来にとって、いわば「最後の希望」なのであり、もしこれが失速すれば「日本の底が抜ける」ような事態になるのではないか、ということが分かるはずだ。

失ってはならない成長の展望

今後も「この道しかない」とし、アベノミクスに賭けるのか、それとも、もと来た道へと引き返すのか。選挙の大義、争点はまさにこれなのだ。

それゆえアベノミクスを批判する野党は、ぜひとも、それに代わる具体的な代案を出さねばならないのである。いずれにせよ、日本が20年ぶりに「成長する経済」を取り戻せるのか否か、いまこの国は歴史的な分岐路に立っている。

「危機」と「破局」は違う。危機(クライシス)とは、まさに破局が始まる臨界点のことで、悪くすると破滅的な結末に至る重大局面を意味する。もしここで日本が成長への展望を失ってしまえば、少子化の進行と財政危機の頻発の中で不可逆的な国家衰退の道を辿(たど)るだろう。

21世紀の世界において、経済成長のない国は、中東やアフリカの「破綻国家」と同様、国際社会においてはまともな存在感を発揮できず、領土問題など国の存立それ自体にも影を及ぼすことになる。

この観点から、日本におけるエネルギー政策をめぐる議論の現状には、差し迫った疑問を感じないわけにはいかない。適切なエネルギー源の確保は、その国の経済成長の要石である。安全性を確認された原発の早期の再稼働は、今やこの国の存立と未来を確保するための重要な課題となっている。

歴史的成果あげた安倍外交

安倍晋三政権は4月に改定されたエネルギー基本計画に則(のっと)って選挙公約を発表している。解散の記者会見を見ても安倍首相のスタンスは、この点でも「この道しかない」とはっきりしている。野党も態度を明確にして、有権者に明瞭な選択肢を示すべきである。

もう1つ、解散・総選挙の重要な大義として、この2年間にわたる活発な「安倍外交」の成果を問う、ということが挙げられる。

まさにこの11月、北京で安倍首相と中国の習近平国家主席との日中首脳会談がほぼ3年ぶりに実現した。沖縄県・尖閣諸島や歴史問題で一方的な条件を付け、首脳会談の開催を拒んできた中国と韓国に対し、「法の支配」や「人権」など普遍的価値を掲げて展開した安倍首相の「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」がついに対話のドアを開けさせることに成功したのである。

日本外交の歴史的成果といっても過言ではない。俗に外交は票にならないという。であれば、次のように言おう。

この選挙の真の争点、それはまさに安倍晋三という指導者その人への信任なのである。

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