ミャンマー銀行免許

画像の説明 「日本完勝・韓国全敗」の凄まじき明暗の理由

ミャンマーの銀行免許をめぐり、日本完勝、韓国全敗と明暗がクッキリ出た

2011年の民主化後、初めて外銀に対する営業免許交付を決めたミャンマー。申請した12カ国・地域の25行のうち、6カ国9行に交付を決めたが、明暗がクッキリ分かれる結果となった。日本は免許申請した三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクがそろって“合格”し、最多。一方、韓国、インド、台湾などは選に漏れ、とくに3行が申請していた韓国は“全敗”の憂き目をみた。この理由として、金融システムの健全の発展を目指すミャンマー政府が「在日支店で不正が次々と発覚した韓国の銀行を嫌がった」(邦銀関係者)との見方が出ている。

日本の厚遇ぶり際立つ

「選考基準を点数化した結果、9行の中に3行が入っていた。日本だから選んだわけではない」

10月1日、首都ネピドーでの記者会見で中央銀行副総裁はこう強調したが、首をかしげる記者もみられたという。

日本の他に複数行が免許を得た国は、2行のシンガポールのみ。日本に対する厚遇ぶりが際立ったからだ。その一方で、韓国は申請した韓国産業、国民、新韓の3行がことごとく“落選”し、完敗を余儀なくされた。

担保の水増しによる過剰融資、融資先からのリベート…。日本の金融庁は8月末、最大手の国民銀行東京、大阪両支店で多数の不正が見つかったとして、両支店に一部業務停止命令を出した。これを受けて日銀も過去の考査(立ち入り調査)結果を改めて点検した結果、国民銀が実態と異なる資料を提出し、虚偽の説明をするなどの違反行為があったと3日に発表した。

本国の目の届きにくい在日支店の不正融資やマネーロンダリング(資金洗浄)などの“黒い噂”は他の韓国大手銀でもささやかれ、日韓の金融当局が昨年から合同調査に入っていた。

ミャンマーは民主化後、経済開放に取り組んできた。政府は銀行部門を外資に開放する方針を固め、国際通貨基金(IMF)や欧州コンサル会社などと外資参入のスキームを練ってきた。

IMFはミャンマー金融システムの健全な発展を重視。営業免許を申請した外銀各行のコンプライアンス(法令順守)もチェックしたとみられ、邦銀幹部は「在日支店で不正が発覚した韓国大手銀への免許を見送った可能性がある」と打ち明ける。

不正が発覚した韓国銀行

また、韓国の銀行は長年国有化され、アジア通貨危機で経営危機に陥ったため、欧米の投資銀行や邦銀ほど巨大化できていない。このため、韓国最大手企業のサムスン電子の資金需要に応えられず、複数の邦銀が融資しているありさまだ。こうした韓国銀の資金力の乏しさがネックになった可能性もある。

これに対し、3行すべて合格した邦銀。他国とのバランスを考慮すると、当初は1~2行とみられていた。

麻生太郎財務相は3行への交付が決まった後、「(日本の)企業は、それぞれのメーンバンクが出ないと、(融資を受けにくく)進出しにくいという事情を先方に伝えたのが大きかった」と“秘策”を明かした。

日本政府は、「アジアのラストフロンティア(最後の未開拓地)」とされるミャンマーとの関係を築こうと、延滞債務の解消や多額の円借款供与の方針を表明している。最大都市ヤンゴン近郊では、官民で工業団地も造成。安倍晋三首相も親書を送った。邦銀にはこうした追い風があったようだ。

官民セールスが奏功

邦銀の自助努力も大きく、3行とも出張所を置いて現地の銀行と提携してきた。

三菱UFJは、前身の横浜正金銀行が1918年にミャンマーに拠点を設置した歴史を持ち、現在は出張所に格上げしている。ミャンマー事業強化の先陣を切ったのは三井住友。2011年の民主化後、外国銀行で初めてヤンゴンの駐在員事務所を出張所に格上げした。みずほも昨年、駐在員事務所を出張所とし、3行とも着々と準備をしてきた。

3メガの首脳は何度もミャンマーを訪問。麻生財務相は「官民一体のトップセールスが功を奏した」と胸を張る。

邦銀の“完勝”に沸き立つのが、生命保険や損害保険など日本の金融業。日本の生保で初めてミャンマーに駐在員事務所を設置したT&Dホールディングス傘下の太陽生命保険は今月、ミャンマー保険公社に対し、事務効率化のための保険システムを寄贈したと発表した。中堅生保の同社はこれまで海外に進出していなかったが、将来的にミャンマー保険市場が開放されれば、参入を見据える。

他の生損保各社もミャンマー市場に注目しており、関係者からは「3メガの免許取得は生損保進出の追い風になる」と期待する声が少なくない。

ミャンマーの銀行は最大手でも総資産が数千億円程度と小さい。同国に進出する外国企業の資金需要に応えられておらず、外銀への期待は大きい。

2015年にも支店開設

3メガは15年度にも支店を開設し、ミャンマーに進出した日系企業や地元銀行などに対し融資や貿易決済、海外送金などのサービスを始める。だが、先行者メリットを確保しようとすれば、採算を度外視したシェア争奪戦に陥りやすく、韓国大手銀と同じような不正に手を染めてしまう危険性もはらむ。

3メガ“合格”という快挙におごらず、コンプライアンスを徹底し、地元に利益を還元できれば邦銀への信頼度はさらに高まるはずだ。現在は外銀の参入が認められていない個人向け金融サービスの解禁も見えてくる。

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