日立、国際化へ脱「年功制」

画像の説明 管理職の賃金、職務に応じ決定

日立の管理職の賃金はこう変わる

日立製作所は26日、管理職の賃金について、担当職務ごとにあらかじめ金額を決めておく、新しいしくみに変えると発表した。年齢に応じて賃金が上がる「年功制」をやめて、欧米の大手と同じようにする。高い能力や経験を持つ海外の人材を採用しやすくするねらいだ。

■海外の人材確保狙う

新制度は10月に始める。管理職のポストについて、「責任の重さ」「求められる革新性」「必要とされる知識のレベル」などの要素をもとに、7グループに区分。この区分の中に担当職務(役割)が割り振られる。賃金の額は区分ごとに、あらかじめ決めておく。実際の支払額は、これに各人に期待する「成果」を加味して決めるという。

まず、国内の約1万1千人を対象に採り入れる。その後、海外も含めて広げていく。

これまで、国内で働く管理職の賃金は、約7割を「職能で決まる部分」、3割を部長や課長といった「役職」で決めていた。このうち職能を決める要素には、勤続年数なども含まれていた。

新制度では、勤続年数や年齢といった「年功」につながる要素が無関係になる。

新制度は、米国のゼネラル・エレクトリック(GE)やドイツのシーメンスなど、海外の同業大手を参考につくったという。

日立は、海外事業の比率を高めていくために、グループで働く外国人の社員を、2012年度の約12万人から15年度には15万人に増やす計画だ。ただ、優秀な人材は大手企業どうしで取り合いにもなっている。

中畑英信・人財統括本部長は、「優秀な外国人は、世界共通の人事制度がある会社を目指す」と言い切る。外国人にとってわかりやすいしくみ――。新制度には、日立の海外での拡大戦略がにじんでいる。

■能力・成果重視に転換

かつては年齢とともに賃金が上がる「年功制」が当たり前だった大手製造業も90年代以降、「能力」や「成果」を重視した制度に変えてきた。欧米のライバル企業と人材確保をめぐる競争が激しくなり、賃金のしくみも「国際標準」を目指す企業が増えている。

武田薬品工業は97年、管理職に年俸制を採り入れた。管理職以外の社員についても、「年齢給」を段階的に引き下げ、03年に年功制が消えた。

日産自動車は、フランスのルノーと提携後、00年には管理職の年功制を廃止。04年には、全社員を「成果型賃金」に移した。毎年賃金が増える「定期昇給」は無くなり、「成果につながる能力」を毎年評価した上で、賃金を上げたり下げたりするしくみだ。

年功制は、一つの会社で定年まで働き続ける「終身雇用」が定着した戦後の日本企業で広がった。ただ欧米では、能力や成果に応じた賃金が一般的で、能力よりも長く働いていることが重視される制度はなじみが薄い。

大手製造業は、海外市場開拓の経験や特定の研究に実績を持つ外国人などを、積極的に採用しようとしている。このため能力や成果に軸足を移している。ただ、企業にとってよくても、年功制に慣れ親しんだ日本の労働者には、厳しい面もある制度変更だ。

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