2018年11月1日よりタイトルをWCA(世界の時事)に変更しました。
ミャンマー、中国離れ
鉄道・ダムを凍結
中国の影響力が増す東南アジアで、親中派だったミャンマーが「中国離れ」を加速させている。中国からインド洋へ抜ける鉄道計画を白紙に戻し、東南アジア諸国連合(ASEAN)では対中牽制(けんせい)の声明をまとめた。中国は引き止めに躍起だが、「アジア重視」を掲げて中国に対抗する米国は、ミャンマーの「脱中国依存」を歓迎する。
■民政移管で米に接近
ミャンマーで7月、中国の巨大事業の中止が明らかになった。西部の港町チャウピューから中国雲南省昆明を結ぶ鉄道計画だ。
ミャンマー鉄道省によると、中国が約200億ドル(約2兆400億円)を投じて建設し、50年間運営する計画だったが、地元住民や市民団体の強い反対で棚上げになったという。
鉄道は、ベンガル湾から中国に延びる全長約800キロの天然ガスと石油のパイプラインに沿って建設される予定だった。中国はチャウピューの港湾開発も進めており、インド洋からの輸送路を確保する戦略的な目的もあった。
ミャンマーの軍事政権が国際的な圧力を受けていた時代、中国は軍政にとって最重要国だった。中国は国連安全保障理事会などで軍政を擁護。欧米が制裁強化を図る中、援助や武器供与を続けた。ミャンマー軍政はその見返りに、大規模な開発権益を次々に中国に与えていった。
だが、2011年の民政移管後は中国による巨大事業の見直しが相次ぐ。中国企業が北部カチン州で着工していた総工費36億ドルのミッソンダムは11年9月に凍結。中国企業が投資を回収できない状態だ。中国企業による中部の銅山開発も反対運動で大幅に遅れている。
ミャンマーは今年、ASEANの議長国だが、中国と周辺国が対立する南シナ海の問題について、一連の会議で中国を強く牽制(けんせい)する声明をとりまとめている。ミャンマー戦略国際問題研究所のニュンマウンシェイン所長は「ミャンマーはASEANとともに歩むべきだ。一国への依存は非常に危険だ」と指摘する。
ミャンマーの動きの背景には、「アジア重視」を掲げる米国との急速な関係改善もある。民政移管後、米国は経済制裁を大幅に緩和し、12年11月にはオバマ大統領が現職として初めてミャンマーを訪問した。ミャンマーは、関係を強める日本や欧州諸国も後ろ盾とし、中国に向き合っている格好だ。