南麻布の地下に巨大貯水池

画像の説明 豪雨増加に取り組む東京都の水害対策

各国の大使館が並び、高級住宅街としても知られる東京都港区の南麻布や麻布十番地区。これまでに何度か豪雨発生時に水害に苦しめられたエリアでもある。渋谷を起点に麻布を抜けて東京湾へと流れ込む古川(上流部分は渋谷川)の地下では、浸水被害を防ぐために水を溜めるトンネルの建設が進められている。

東京都は2016年の完成を目指し「古川地下調節池」の建設を進めている。古川のうち恵比寿周辺から古川橋を経て一の橋までの3.3キロメートルの地下に、直径7.5メートルのトンネルを設置し水を貯留する総事業費245億円の施設だ。この貯水トンネルには、13万5000立方メートル、オリンピックの試合で使う50メートルのプール52杯分の水を貯めることができる。

東京都の資料によると、2004年10月の台風の接近に伴う豪雨では東京メトロ南北線の麻布十番駅の地下ホームが冠水し、地下鉄が2時間運休するなど、古川の流域では過去15年間で8回の水害が発生。東京都建設局第一建設事務所の山本聡工事課長は、首都高速道路の橋脚が古川に隣接して並んでおり川幅を広げることは難しいことから「川の下に地下貯水池を作るのがベストだと判断した」と話す。その結果、南北線をくぐるように地下30-40メートルに設置することになった。

豪雨が発生し川から水があふれそうになった場合には、取水施設に設けられた高さ52メートルの立坑を経て地下トンネルに水を誘導し、貯留する。雨がやんだ後は約2キロメートル下流側に設けられた排水施設で水をくみ上げ古川に放流する仕組みだ。

8月10日も活躍

国内には同じような地下調整池はあるものの、海外には水害対策を目的とした同様の事例はない。山本課長は、温暖化の影響で豪雨の発生件数が増えており、地下調節池を活用する頻度が増えていると話す。都内には神田川の地下にも地下調整池があり、通常は利用回数が年1-2回程度だったものが、昨年は5回にまで増加。直近では台風11号の接近で雨量が増えた8月10日に利用されている。

気象庁のデータによると、2010年までの60年間の平均台風接近数は年11個だったのに対し、11-13年の3年間の平均は13個まで増えた。オーストラリア国立大学の気候変動専門家ブラッドリー・オプダイク氏は台風発生数の増加は「温暖化の影響の顕著な例」だと指摘する。

イリノイ大学ハイドロシステム研究所のマーセロ・ガルシア氏は、東京と同様に雨が多く遊休地の少ない香港やシンガポールのような都市にも、地下貯水池による水害対策を応用することが可能だと指摘した。

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