「バチカン」

せみ 教会の難題、法王果敢 聖職者の性的虐待→法改正し厳罰の姿勢

ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王が、バチカンが抱えてきた「負の遺産」と向き合っている。聖職者による児童への性的虐待問題の対応と、マフィアなど闇社会との決別だ。いずれも難題だが、積年の課題解決に意欲を見せる。

「教会の聖職者の2%が小児性愛者だ。そして、ほかの大多数が口をつぐんでいる。非常に深刻にとらえている」。イタリア有力紙「レプブリカ」はこのほど、法王のこんな驚くべき発言を紹介した。

「聖職者による児童への性的虐待」はバチカンを揺るがしてきた。国連の「子どもの権利委員会」の報告書は、被害者が全世界で数万人に及ぶと指摘。世界中で告発を受けながら、対応は後手にまわってきた。問題を起こした者を異動させるだけで処罰せず、隠匿を図ってきたとすら指摘されている。これに対して、法王はバチカンの刑法を改正。聖職者の身分を取り消すなど、性的虐待を厳しく処罰する姿勢を示す。

今月7日には、自分の宿舎にアイルランド、英国、ドイツの被害者、計6人を迎えてミサをした。被害者との対面は、法王就任後初めてだ。「心から許しを請います。教会の指導者が、報告を受けながら対応してこなかったことをお許しください」と謝罪した。

AP通信によると、被害者のマリー・ケーンさん(43)は「隠匿は今もある。あなたには変化を起こす力がある」と訴えた。被害者団体は、面会を評価しつつ「言うだけなら簡単。法王はまだ何も行動していない」と実行を求める。

■対マフィア 「メンバーは破門」

法王が児童虐待とともに「教会や社会が取り組むべき課題」と語るのが、マフィア組織との対決だ。

マフィア組織の支配地域を相次いで訪問し、「メンバーは破門する」と強い批判を繰り返す。26日にナポリ近郊カゼルタ、6月下旬には伊南部カラブリア州シバリを訪問した。いずれも抗争に巻き込まれ、市民が犠牲になったところだ。

マフィアは構成員に子どもが生まれた時、リーダーが洗礼に立ち会って「ゴッドファーザー」となることで、結束を強めてきた。カラブリア州の大司教はマフィアを弱めるため、「この儀式を10年中断すべきだ」とすら提案する。

また、保守政治家やマフィアの借名口座としてマネーロンダリング(資金洗浄)に悪用されてきた宗教事業協会(IOR)も、法王主導の透明化が進む。

教会の資産を管理し、通称「バチカン銀行」と呼ばれる。財務情報が公開されず、「ベールに包まれている」と批判されてきた。

今月9日、IORのフレイベルク総裁と新総裁となるフランスー氏は、バチカンで異例の会見に臨んだ。

2人は「国際的な会計基準に照らし、口座を徹底的に調べる、という改革の『第1章』を終えた。ガバナンス再編の『第2章』で、完璧な透明性を確保する」と口をそろえた。

IORの年報では、今年6月末の時点で、保有する口座数は約1万6千、総預金額が59億5千万ユーロ(8330億円)。所有者が不明なものなど約2千の口座を1年余で封鎖したという。過去にはこんな情報の公開はほとんどなかった。

法王の対決姿勢に、マフィア側は強く反発する。南部の刑務所では、受刑者200人がミサへの出席を拒否したという。

カラブリア州オッピドマメルティナでは、聖母像を担いで町を行進した男たちが、終身刑で服役中のマフィアのリーダー宅前に止まり、おじぎするなど敬意を表した。法王は「自らへの挑戦」と受け止める。

ロイター通信によると、1993年に当時の法王ヨハネ・パウロ2世がシチリアのマフィアを「いずれ神の裁きに直面する」と批判した際は、ローマの複数の教会で爆破事件が起きた。

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