2018年11月1日よりタイトルをWCA(世界の時事)に変更しました。
“ハゲタカ”に金は払わん!
アルゼンチン、30日のデフォルト(債務不履行)を選択する模様・・・
アルゼンチンが、30日にデフォルト(債務不履行)を選択する模様です。
同債券の全額返済を求めていた米ヘッジファンドのNMLキャピタルと、反発するアルゼンチン政府との協議が全く進展せず・・・
期限内の和解に至る見通しがほとんどないため、債務減額に応じた債権者への利払いまで滞ることになる公算が強くなりました。
ロイターがNMLキャピタルに取材したところによれば、アルゼンチン政府側は米国裁判所が任命した調停人を通じた交渉も拒否。同国代表団は「可能な解決策はないとだけ述べた」とのこと。
「本日、アルゼンチンは来週にデフォルトを選択することを明言した」と、NML広報担当は話しています。
経緯が分からない人もいるでしょうから、時系列に沿って簡単に説明します。
<アルゼンチン・デフォルトをめぐる経緯>
発端は2001年、アルゼンチンは財政破綻状態となり、デフォルトを宣言しました。
※「借金を支払いません」と宣言したため、それまで政府が発行したアルゼンチン国債は全て紙くず(無価値)に。
しかしアルゼンチンは2005年と2010年に、以前よりも70%価値の低い新国債を「紙くずとなった国債と交換」という形で、かつての債権者に向けて提供することを決めます。
(借金全額は払えないけど、70%削減でよければ残り3割の部分は返済しますよ、というやつですね。企業の民事再生などでも行われる手法です)
9割以上の債権者が、この債務交換に賛成しましたが・・・
残り8%のヘッジファンドらはこの案を拒否。
中でも同債券を7%保有(安く買い集めた)するヘッジファンドのNMLキャピタルが、全額支払いを求めてアメリカの連邦地裁に訴えを起こしました。
で、米裁判所は「原告の主張を認めます。アルゼンチンは債権者に全額を支払いなさい」。
※アルゼンチンは減額に応じた債権者にだけ利払いをしていたため、債権者を平等に扱う条項(パリパス条項)に違反するという判断。
(アルゼンチン側は上訴するも2014年6月、米国最高裁が上訴を棄却したためアルゼンチンの敗訴が確定)
しかし、アルゼンチンはこのヘッジファンド側の行為を“ハゲタカ”と非難。
彼らに額面どおりの支払いをしたら、(パリパス条項により)減額に応じてくれたほかの債権者にも同じ対応をせざるを得ず・・・
そうなれば我が国は再び財政破綻すると、徹底拒否。
「現時点では、何を言われても支払わない。話し合うつもりもない」
と態度を硬化させ、7月末のデフォルトを迎える(直前の)今に至っています。
ちなみに、アルゼンチン政府は支払い原資の外貨準備を約280億ドル用意しており、
同国大統領も「(少なくとも減額に応じた債権者には)支払う意思があり、デフォルト宣言はしない」と言っているため・・・
前回とは違い、返済条件が整わないことで支払いが出来ない「テクニカル・デフォルト」になると予想されています。
※実際アルゼンチンは、(減額に応じた債権者に向けて)利息分の支払いを金融機関に送金しているが、米裁判所が利払いを禁じてるため米国金融機関で止まっている状態。
国債が再び紙くずという事ではないので、デフォルトの影響も前回ほどは大きくないと見られています。
普通の債権者であれば、借金が払えなくなった国に向かって「国を潰してでも俺にだけ全額払え」とか無茶言いませんからね。
そのうえ、米国裁判所という“虎の威”まで借りた“ハゲタカ”に、アルゼンチン政府側は怒り心頭です。
「デフォルトしてでも“ハゲタカ”には1ペソも払わん!」は偽らざるアルゼンチンの本音でしょう。
アルゼンチンの債務再編には「全ての債権者を平等に取り扱う」パリパス条項がついている(今年12月で期限切れ)ので、これがネックになっているのは確かです。
NMLキャピタルらへの返済を(条項が消える)来年以降に延長することで、他の債権者への利払いを続けるデフォルト回避案もあるのですが・・・
アルゼンチン政府が「ハゲタカ債権者に払うくらいなら、このままテクニカルデフォルトさせる」の結論で動いているので、期待薄と思われます。
(アルゼンチンとしては、半年ほどデフォルト⇒条項が消えたところで、削減に応じてくれた債権者のみに支払いして・・・
「強欲な債権者には最後まで払わない」腹づもりまであるかと。)
さて、債券を買い集めたヘッジファンドはこれで丸損かと言うと・・・
彼らは資金を回収するため、その名の通り「ヘッジをかけている」と思われます。
例えば、①デフォルトで暴落するだろう株式・金融商品を空売りするとか、②デフォルト発生で保険金が支払れるCDS債券を使った、CDSの保険金狙いも考えられます。
デフォルトorデフォルト回避、どちらに転んでも利益が出るように作戦を練って実行するのが、ヘッジファンドなのです。
(もちろん、計画したとおりに100%利益が出るわけではありませんけどね)