アルゼンチン

画像の説明 不安再燃 巨額債務、返済不能の可能性

2001年に財政破綻(はたん)したアルゼンチンで、政府の債務(借金)問題が再燃している。借金を返せなくなるのでは、という不安が強まって株式が売られ、国債は格下げされた。混乱が続けば、世界の主要市場にも動揺が広がるおそれがある。

再び債務問題が浮上したきっかけは、米国の最高裁判所がアルゼンチン政府に対して16日、「投資家に当時の借金を返すべきだ」という高裁判決を支持する判断を示したことだった。

アルゼンチンは01年、借金のために発行した国債が約束通り返せない「債務不履行(デフォルト)」になったと宣言し、破綻した。国債を買っていた投資家の9割超は、返済額を減らす「債務減額」などに応じた。だが、減額を受け入れない投資家のうち、米投資ファンドが全額返済を求めて訴訟を起こしていた。

米最高裁は16日、理由を示さずにアルゼンチン側の上告を棄却し、約13・3億ドル(約1350億円)の支払いを命じた高裁判決が確定する可能性が高まった。

高裁判決が確定し、アルゼンチンがこのファンドの要求通りに返済すれば、債務減額に応じていないほかの投資家からも返済を求められる可能性がある。

そうなれば、支払額は最大150億ドル(約1・5兆円)になるおそれがあり、フェルナンデス大統領は「(米最高裁の判断は)世界の金融システムに影響を及ぼす」と批判した。アルゼンチンがもつ外貨は300億ドル(約3兆円)を下回っており、再び財政難に陥る可能性もある。

これを受けて、16日にはアルゼンチンの株価指数が約10%下がり、国債価格も下落した。米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は17日、アルゼンチンの外貨建て国債の格付けを2段階引き下げ、21段階ある格付けの下から3番目にした。

アルゼンチンはデフォルト以降、国外では国債を発行できない。このため、国債の格下げで大きな損失をかぶる投資家が国外で続出する心配はさほどないとみられている。

日米欧の主要市場は今のところ落ち着いている。18日の東京市場も、株式や円の相場は安定していた。

アルゼンチンは農産物や資源の輸出などで経済成長が続いていて、市場では「まだアルゼンチン問題は、不安材料とはみなされていない」との声が多い。

■中南米への影響も

だが、債務問題でアルゼンチン経済の混乱が続けば、隣国のブラジルなど貿易で結びつきが強い中南米諸国に影響が広がり、世界的な景気減速につながりかねない。

今年1月も、アルゼンチンの通貨安をきっかけに新興国の金融市場全体に不安が広がり、各国で株安や通貨安が起きた。

その後はいったん落ち着きを取り戻したが、最近は再び、市場に変調の兆しが出ている。イラクやウクライナの政治情勢の緊迫化で原油価格が上がっているためだ。中国など新興国の経済成長が鈍っていることへの不安も投資家に根強い。

第一生命経済研究所の西浜徹氏は「今回も、アルゼンチン問題とほかの新興国や産油国の問題とが重なれば、世界経済の懸念材料になる」と指摘する。

<アルゼンチン経済> 主力産業は農業や畜産業で、飼料用とうもろこしや牛肉の生産が多い。2001年の債務不履行(デフォルト)後、経済は持ち直している。

だが、輸出入の2割超を占める隣国ブラジルの景気減速のあおりで、12年以降は成長率が下がった。日本向けには飼料や銅を輸出している。

コメント


認証コード0581

コメントは管理者の承認後に表示されます。