「中国の隠蔽はいつまでも続かない」

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中国の隠蔽はいつまでも続かない

1.武漢ウイルスの施設漏洩説には科学的根拠はない

2月20日、中国外務省の耿爽副報道局長はネット上の記者会見で、新型コロナウイルスが研究施設から漏洩した「生物兵器用ウイルス」だと疑う見方があることについて、「無知なでたらめだ……世界の多くの有名な医学専門家が『施設からの漏洩』説は科学的根拠がないと考えている……国際社会には『政治的ウイルス』に共に反対するよう希望する」と反論しました。

確かに医学専門家には『施設からの漏洩』説は科学的根拠がないという人はいるのでしょうけれども、それと同様に『施設からの漏洩』説を主張する専門家もいます。

『施設からの漏洩』説に根拠がなく、そういう専門家が少数派なのであれば、無視していればいいだけなのに、むきになって反論するあたり、やはり図星なのかと勘繰られても仕方ありません。

そもそも、否定するのなら、自分でその証拠を出せばいいだけで、わざわざ外国に味方しろなどという必要もありません。

実際、中国には漏洩させた前科があります。

2004年4月に北京市と安徽省でSARS感染者が増加した当時、中国衛生部は中国疾病予防管理センターの実験室からウイルスが漏洩したことが原因だとして調査を行うと発表。

その後、7月9日、中国疾病予防管理センター傘下のウイルス予防管理センターの研究員がセンターのP3実験室からSARSウイルスを持ち出し、一般の実験室で研究を行ったあと、感染が広がったとの調査結果が報じられています。

中国政府がやるべきは、武漢のウイルス研究所に海外プレスを入れて公開させ、アメリカのCDCなり何なり海外の専門家調査チームに安全調査をさせればよいだけです。政治的ウイルス云々を嘯く前に情報公開といったやることをやれなければ、疑いの目は晴れることはないと思いますね。

2.実験室の管理は非常に粗雑だ

2月4日、中国のオンラインゲーム開発会社、多益網絡股份有限公司会長の徐波氏は、SNS上で武漢市のP4実験室が新型肺炎の「源」だと批判しました。

徐波氏は中国の生物学者・李寧氏が実験用動物を不正に販売した事件を指摘。武漢ウイルス研究所は実験用動物の管理がずさんで、ウイルスを持つ動物が市場に出回ったことが新型肺炎の感染拡大につながったと主張しています。

実験用動物の不正販売を行った李寧氏には今年1月2日に「横領罪」の有罪判決が下されているのですけれども、判決文では、2008年7月~2012年2月まで、李寧氏は研究プロジェクトを通して、勤務先の中国農業大学から研究費補助金を得て、実験に使う牛や豚を購入。

その後、実験を終えた豚や牛、その牛から搾取した牛乳を養豚場などの業者に売却し、収益1000万元(約1億5764万円)余りを着服したとしています。更に、嘘の領収書などを提出して、大学側から2700万元(約4億2564万円)の研究費を騙し取ったとされています。

相手が中国農業大学でウイルス研究所ではありませんけれども、大学の実験で使った動物をそのまま業者に横流しする感覚が信じられません。しかも、判決文には業者に売られた実験用動物がどのような実験に使われたのか、実験終了後になぜ殺処分を行わなかったのか、また、業者に渡った後の用途についての言及すらないそうで、もう無茶苦茶です。

筆者は「石正麗、誰でも騙されると思うなよ」のエントリーで、武漢ウイルス研究室の現役研究員の一人である武小華博士が、同じく武漢ウイルス研究室の石正麗研究員を告発したことを取り上げましたけれども、その武小華博士は、SNSで、実験室の管理が非常に粗雑だと述べています。

なんでも、「実験用動物、例えば犬をペットとして転売している。医療廃棄物の火葬処分は経費が高くなるから、動物の死体をいい加減に処分する。さらに、野生動物として売ったりすることもある。SPF鶏の卵を茹でて食べる研究員も、実験用の豚を殺して食べる研究員もいる」という実態だそうです。もう信じられないを通り越して、あり得ない。あってはいけない。

これが本当なのであれば、中国はP4実験室など全く持ってはならない国だと世界は断言してしかるべきです。

3.隠蔽を続ける中国共産党

それでも中国は必死で言論統制し隠蔽を続けています。

2月19日、中国外務省はウォール・ストリート・ジャーナルの北京駐在記者3人を「人種差別的」な意見記事を掲載したとして国外退去処分にしたと発表しました。

問題となったのは、今月3日に掲載された記事で、中国政府による、致命的な新型ウイルスのアウトブレイクへの初期対応について、「秘密主義で利己的」なものであり、中国への国際的信認を「揺るがした」とするものです。

中国外務省の耿爽報道官は、この記事は「人種差別的」で、国内で2000人以上が死亡しているアウトブレイクに対抗するための中国の取り組みを「侮辱した」とし、ウォール・ストリート・ジャーナルに対し、複数回にわたり謝罪を求めたが、拒否されたと説明しています。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、退去を命じられたのは、該当の記事を執筆していない、米国籍のジョシュ・チン副支局長とチャオ・デン記者、オーストラリア国籍のフィリップ・ウェン記者だそうで、5日以内に中国から退去するよう命じられたとしています。

ただ、前日の4日、亜米利加国務省が、アメリカ国内で活動する中国国営の新華社通信や中国グローバルテレビジョンネットワーク(CGTN)を含む5報道機関について、中国共産党政権の対外宣伝工作機関であるとして、全従業員リストの提出を義務づけ、アメリカ国内での活動内容を司法省に届け出させる新たな措置をとっていますから、その意趣返し的な側面もあるとは思います。

ただ、アメリカは、中国の報道機関に対し、報道活動自体への規制をしていないのに対し、中国は国外追放ですからね。中国の隠蔽体質がまた一つ明るみになった訳ですけれども、今の国際社会でその態度がいつまでも通用するとは思えません。

ウォール・ストリート・ジャーナル記者の追放について、アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は「成熟した、責任感のある国々は、事実を自由に報道したり、意見を述べるということを理解している。正しい対応とは、言論を規制することではなく、反論を示すことだ」と批判。

ウォール・ストリート・ジャーナルの発行人、ウィリアム・ルイス氏は、今回の中国の対応に「我々の意見ページでは、定期的に賛成派あるいは反対派の意見記事を掲載している。今回の記事の見出しについて怒りを買おうという意図はなかった。……一方で、中国国民の間で動揺や懸念を引き起こしたのは明らかであり、我々は遺憾に思う」と意見記事と報道部門は「完全に別物」だと声明で強調しています。

全てを明らかにした上で、間違いを質していくアメリカと、隠蔽して最初からなかったことにする中国と、その向かう方向は真逆です。

今回の新型コロナウイルスのように世界中に迷惑を掛ける事案では、隠蔽しても批判されるだけです。中国が今の態度を取り続ける限り、今後、いくら中国が新型コロナウイルスの終息宣言を出したとしても、世界はまだ何かを隠しているんじゃないかと疑いの目を向け、一定の警戒感を抱くのではないかと思いますね。

日比野庵

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