「金正恩委員長の「財布」とは」

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北朝鮮による資金調達の秘密、金正恩委員長の「財布」とは

北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長がパレードのために到着し、黒のメルセデス・ベンツからレッドカーペットへと足を下す。しかし、北朝鮮の最高指導者に、この最高級のリムジンを売ったのは、誰なのだろうか。

国際的な制裁にもかかわらず、金委員長は素晴らしい生活を送っている。最近も、ピカピカの白いヨットや高価なお酒、高級スキーリゾートのための設備まで購入したとみられている。

国連が2014年に発表した報告書によれば、北朝鮮が2012年に購入した高級品の金額は6億4580万ドル(現在のレートで約710億円)に達するという。

北朝鮮では昨年3月に国民に対して、飢饉の可能性と厳しい経済情勢に備えるよう呼びかけを行ったが、国の指導者には、どうすればこのようなぜいたくな暮らしを送るだけの余裕が生まれるのだろうか。

専門家によれば、こうした種類の購入には、金委員長の「個人的な財布」が使われるという。財布の資金源は、北朝鮮政府が世界各地で行っている非合法な取引だ。北朝鮮は、金融機関に対するハッキングや、武器や薬物の販売、紙幣の偽造、絶滅危惧種の密輸などの犯罪行為を行っているとして非難を浴びている。

こうした資金はまた、北朝鮮の核やミサイルの開発プログラムのための支払いにも利用される。専門家によれば、核開発とミサイル開発は、米国が狙う体制交代を阻止するために必要なことだと北朝鮮は信じているという。

非合法な資金調達は、人目につかない可能性が高く、正確に把握することは不可能に近い。しかし、米議会が2008年に明らかにした報告書によれば、北朝鮮政府が不正な手段で手にした利益は毎年5億~10憶ドルにのぼるとみられる。

米財務省の元幹部で的を絞った金融政策の利用に詳しいアンソニー・ルッジェーロ氏は「北朝鮮は相手が金を出す限り、誰にでも何でも売る」と語る。

米ミズーリ大学の教授で北朝鮮の非合法な財政活動について研究しているシーナ・グレイテンズ氏によれば、そうした収入は、北朝鮮指導層の懐や銀行口座に直接入ってくるという。グレイテンズ氏は、これを排除することができれば、貿易の流れと比べて、より大きな影響を与えることができるだろうとの見方を示す。

専門家によれば、米国側の条件での交渉のテーブルにつかせるために、金委員長に対して本当に圧力をかけるためには、トランプ米大統領はこうした金を追う必要があるという。

しかし、そうした収入を断つことは、世界規模でのモグラたたきのようで、おそらく難しいだろう。

グレイテンズ氏は、北朝鮮は収入を得るために新しく創造的な方法を見つけ出すことが非常にうまいと指摘する。

北朝鮮に圧力をかける
金委員長の父親は、金正日(キムジョンイル)総書記で、映画好きな面などが知られているが、金総書記は、「39号室」と呼ばれる部門を設立した。

米財務省によれば、39号室は、非合法な経済活動や裏金を管理することを通じて、北朝鮮指導層に対して、重要な支援を提供している。

米ハーバードを拠点に活動している北朝鮮の専門家、ジョン・パク氏によれば、こうした金は基本的にありふれた風景の中に隠されているという。

パク氏によれば、北朝鮮の海外のネットワークは国際社会による制裁の圧力に対処する力が非常に高く、その理由の多くは、非合法な取引を合法的な取引の中に紛れ込ませたり、偽装したりする能力のせいだという。

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オバマ前政権も制裁によって狙い撃ちしようと試みたものの、39号室は依然として稼働を続けているとみられている。

ティラーソン国務長官は、北朝鮮政府の制裁逃れを手助けしている第三国への制裁によって、北朝鮮をさらに追い込むことを目指すとの考えを示している。

北朝鮮を追い込むには

ティラーソン長官は第三国に対する制裁がどのような効果をもたらすのか詳細な説明はしていないものの、こうした戦略の一環として、北朝鮮政府との外交的関係を縮小するよう各国に呼びかけている。

北朝鮮の外交官に対しては、その外交的特権を利用して、金や銃器の密輸といった犯罪行為を行っていると非難する声もある。

非合法な金を排除するため、米国は、北朝鮮に犯罪活動の前線となっている大使館を利用する機会を与えないようにすることが必要となりそうだ。

北朝鮮がここ数年、制裁逃れのための独創性を発揮しているのが、東南アジアだ。地元当局や国際機関からは暗殺や密輸などに外交職員が関与したとして北朝鮮を非難する声が上がっている。

東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟している10カ国のうち8カ国に北朝鮮の大使館がある。また、そのほか39カ国にも北朝鮮の大使館が存在する。

オンライン雑誌「ザ・ディプロマット」の専門家によれば、米国は東南アジア諸国に対して、取り締まりや北朝鮮との関係を縮小するように圧力をかけているが、そうした国々では外交面や文化面、経済面などの観点から、依然として北朝鮮との関係は続いているという。

中国の関与

専門家からは、こうした取り組みには、中国の協力も必要だとの見方が出ている。

国連によれば、北朝鮮の輸入の約85%を中国が占める。北朝鮮経済にとっては生命線であり、このことが、米国による北朝鮮への圧力が十分に行き届かない理由のひとつだ。

米中央情報局(CIA)の元副長官デービッド・コーエン氏によれば、国内企業を標的にするだけでなく地域のパワーバランスの混乱につながりかねない広範な措置を取るよう中国を説得することは至難の業といえるという。

コーエン氏は、中国が最も懸念していることは朝鮮半島の不安定化であり、中国は中国の最大利益のために行動すると指摘する。

トランプ大統領は、北朝鮮問題への対応について、中国の習近平(シーチンピン)国家主席に協力を求めている。4月には訪米した習主席をフロリダ州の別荘「マール・ ア・ラーゴ」に招待し、北朝鮮問題についても話し合ったという。

専門家からは、北朝鮮の取り締まりに向けた中国政府の真剣さが非合法活動の抑制の鍵になるとの見方が出ている。

ルッジェーロ氏は、すべては中国にかかっていると指摘。最終的には、北朝鮮による制裁回避に加担している中国の金融機関や企業を追うことが必要になるとの見方を示した。

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