「金正恩がわざわざ訪露してまでプーチンと「世間話」をした理由」

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金正恩がわざわざ訪露してまでプーチンと「世間話」をした理由

段階的非核化を主張するもアメリカからは受け入れられず、すがるようにロシアに出向きプーチン大統領と会談を行った北朝鮮の金正恩委員長。しかし合意文書等の発表もなく、あくまで「意見交換のみ」に終わり、その成果に対して疑問視する声も各所から上がっています。そもそもこの会談の意図はどこにあったのでしょうか。

金正恩プーチン会談の目的は?

皆さんご存知と思いますが、金正恩が訪ロし、プーチンと会談しました。
プーチン氏、経済・人道分野での協力の可能性に言及 

ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長による初めての首脳会談が25日、ウラジオストクのルースキー島で開かれた。2月の米朝首脳会談決裂を受け、朝鮮半島の平和体制構築について意見交換し、地域の安定に向けた連携強化で一致。金委員長が自国の非核化を含む「朝鮮半島情勢の共同管理」の意義を強調するのに同調してプーチン氏も半島問題での外交的解決で積極的役割を果たすと表明し、両国の協力関係を強調した。

金とプーチンの単独会談が2時間。閣僚を交えた拡大会合が1時間半。計3時間半話し合ったそうです。
合意文書はなく、朝鮮半島情勢、非核化、経済・軍事協などについて、「意見交換」したということですね。

金正恩の意図

金は、何のためにロシアに行ったのでしょうか?それを理解するためには、彼の現状を知っておく必要があります。北は、「段階的非核化」を主張している。なんでしょうか?

いきなり完全非核化はしない。北は、少し非核化する。国連安保理は、少し制裁を解除する。北は、また少し非核化する。国連安保理は、また少し制裁を解除する。このプロセスを繰り返しながら、最終的に完全非核化をする。

もちろんウソです。金が少し非核化して、一部制裁解除が実現すれば、中国・ロシア・韓国から大金が流れ込んでくるでしょう。金が入ってくれば、核兵器を手放す理由がなくなってしまう。
アメリカ、日本は、あわてて再び制裁を強化しようとするでしょう。しかし今度は、拒否権をもつ中国、ロシアが反対するので、制裁を再強化できなくなってしまう。

だから、金は、「段階的非核化」。

「もう一部非核化したのだから、制裁を解除してくれ!」とトランプにいった。しかし、アメリカは過去に何度もだまされた経験があるので、段階的非核化に応じなかった。結果、金の北朝鮮は、経済的に非常に苦しい状況になってしまった。

彼は、何を目指してロシアに来たのでしょうか?

一つは、もちろん「経済支援」を受けるためでしょう。実際、北が存続しているのは、中国とロシアが制裁違反の支援をつづけているからです。もう一つは、プーチンとつながることで、アメリカをけん制すること。
米朝関係がこのままだと、北はじり貧になってしまいます。

しかし、核実験、ミサイル実験を再開すると、アメリカが攻めてくる可能性がある。その時、「俺のバックにはプーチンがいるぞ!」「俺のうしろには習近平がいるぞ!」というのは、一定の抑止力になります。トランプだって、中ロ北をまとめて敵にまわしたくないでしょう。

アメリカを信用していないプーチン

プーチンの意図
では、プーチンの立場はどうなのでしょうか?

ロシアは、中国、韓国と共に「段階的非核化」を支持しています。なぜ?「完全非核化」すれば、アメリカが北朝鮮を攻めてくると信じているからです。なぜ?

プーチンのトラウマは、「NATO拡大」です。1990年10月、ソ連は、西ドイツが東ドイツを編入することを認めました。西ドイツは資本主義陣営であり、東ドイツはソ連側の共産主義陣営だった。

ソ連は、条件つきで、西が東を吸収することを許可した。条件とは、「NATOを東に拡大しないこと」です。アメリカは、確約しました。

ところが、1999年、2004年、NATOは大拡大。いまでは、東欧のほとんどの国、そして、旧ソ連のバルト三国までNATOに加盟してしまった。
結果、ロシアは29か国からなる「反ロシア軍事ブロック」と対峙することになった。これがトラウマで、プーチンは、決してアメリカを信用できないのです。

そして、リビアのカダフィの例もあります。カダフィは03年、核兵器開発を停止し、欧米と和解しました。しかし8年後の2011年、NATO軍の空爆を受け、欧米が支援する反体制派に捕まって殺された。というわけで、プーチンは、「段階的非核化支持」なのです。

それって、つまりプーチンは、「北の核保有を事実上認めている」ということでしょうか?だって、金は、アメリカをだまそうとしていて、全然完全非核化する意志がないのでしょう?そう、プーチンは、言葉には出さなくても事実上北の核保有を容認していることになります。なぜ?

ロシアから西を見ると、29か国の超巨大反ロ軍事ブロックが迫っている。彼からみると東だって油断できない。アメリカの同盟国、日本、韓国がいるからです。

そんなプーチンから見ると、北朝鮮は、アメリカ国の侵略を止めてくれる「緩衝国家」です。緩衝国家は弱いより強い方がいいに決まっていますね。日本だって、かつてロシアの南下政策を止めるために、韓国が強くなってくれることを望んでいたのです。

というわけで、プーチン、口では、「北の非核化を望む」といいつつ「段階的非核化論」を支持。これは、つまり「北が核をもったまま制裁を解除し、経済支援できる状況にして、救う」という意味。(「では、なぜロシアは、そもそも安保理の北朝鮮制裁に拒否権を使わなかったのだ?」という疑問はでるでしょう。

2017年、核実験、ミサイル実験を狂ったように繰り返す北は「絶対悪」の存在でした。これを守ることは、ロシアにも難しかった。そして、日本や韓国に、「核武装の口実」を与えないようロシアと中国は、表向き「北の核武装に反対」の立場をとらざるを得ないのです)。

アメリカの制裁に怯えるロシア

表に出せない事情
金とプーチンは会いましたが、合意文書はなかった。これはなぜでしょうか?

北は国連安保理の厳しい制裁下にある。だから、ロシアは、表立って「経済支援を実施する」とはいえない。そういったら、「安保理決議違反」で、アメリカは対ロシア制裁を強化するでしょう。(国連安保理は、ロシアに制裁できません。なぜならロシアと中国が拒否権を使うから。しかし、アメリカと欧州は、独自制裁を強化することはできます)。

だから、表向きは、「世間話しただけ」ということになった。
実際は、「制裁違反のこっそり支援を増やすこと」などで合意した可能性はあります。しかし、私には証拠もありませんし、断言することもできません。

ロシアにとって、「緩衝国家」北朝鮮が存続することは、間違いなく「国益」です。さらに、金体制が存続することも「国益」でしょう。ですから、プーチンは、これからも金支援をつづけていくことでしょう。そして、ロシア、中国、北朝鮮、韓国で「段階的非核化論」を拡散し、「アメリカだまし」を目指します。

日本はいままでどおり、ぶれることなく、「完全非核化したら、制裁解除、体制保証、経済支援だ!」でいきましょう。それが日本の国益です。

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