「河野洋平元衆院議長の無情」

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まだこんなことを言うのかと心底あきれた。河野洋平元衆院議長が13日に東京都内での講演で、次のように述べた件である。
 
「植民地問題の処理もできていない国に、ただ(拉致被害者を)帰せ、帰せと言っても問題は解決しない。国と国の関係を正して、帰してもらうという手順を踏まざるを得ない」
 
まずは、国交正常化と戦後賠償を優先しろということだろう。だが、実際には北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、12日の米朝首脳会談でトランプ米大統領に「安倍晋三首相と会ってもよい」と語っていた。
どこかで聞いた理屈
 
トランプ氏は会談で金氏に「安倍首相は拉致問題を解決しない限り、経済支援には応じない」と伝えたにもかかわらずである。トランプ氏は、首相に「金氏はオープンだった」とも述べたとされる。事態が大きく動くかもしれない時に、河野氏の発言は、まるで的外れだというしかない。
 
また、今回の河野氏の言い分は、どこかで聞いたことがあるような理屈だと感じた人も少なくないだろう。

立憲民主党の辻元清美国対委員長が社民党所属議員時代の平成13年11月、インターネットに掲載されたインタビューでこう述べたことを連想した。

「北朝鮮には(戦後)補償も何もしていないのだから、そのことをセットにせず『9人、10人帰せ』ばかり言ってもフェアじゃない」
 
この後、辻元氏は批判を浴びて一応反省を示したが、13日には米朝会談の感想について、こう人ごとのように述べている。
 
「日本が蚊帳の外に置かれているような外交になっている。自分たちが今まで言ってきたことのメンツは捨てなさい。実を取る外交に転換してほしい。人頼みはあかんのちゃいますか」
 
そして河野氏の今回の発言は、辻元氏の17年近く前の言葉と似通っている。いずれもこれから日朝交渉を進めようという政府の足を引っ張り、北朝鮮を利する発言ではないか。

甘い意見はいらない
 
安倍首相は20年6月の都内での講演で、北朝鮮におもねるような政策を唱える国会議員らをこう強く批判している。
 
「政府以外の人たち、特に有力な国会議員は政府より甘いことを言ってはいけない。政府より甘いことをほかの議員が言ってしまえば、北朝鮮はその甘い意見に乗って『有力な国会議員がこう言っているじゃないか。ここまで下りてきて当然でしょう。さらに譲歩しなさい』ということになる。これは交渉の常識だ」

むしろ政府より厳しめの発言をして、政府が日朝交渉の際に「これだけ強い反対があるのを押し切って話を進めている」と言えるようにするのが筋だろう。
 
拉致問題をめぐっては11年12月、外務省アジア局長に内定していた槙田邦彦氏が自民党外交部会で、こう言い放ったことがある。
 
「たった10人のことで日朝国交正常化交渉が止まっていいのか。拉致にこだわり国交正常化が進まないのは国益に反する」
 
これも批判を受けたが、後に別の外務省幹部から意外なことを告げられた。
 
「あれはもともと、(外相時代の)河野氏のセリフだった。槙田氏はそれを引用した形だ」

同胞の生命や人権にかかわる国家の主権問題を矮小(わいしょう)化して犯罪国家に忖度(そんたく)して自国にばかり譲歩を求める政治家とは、いったい何だろうか。彼らが考える国益とは何なのか、どうしても理解できない。

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