「北朝鮮のICBM発射について 」

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11月29日未明、北朝鮮は平壌近郊の平安南道平城付近から弾道ミサイル1発を発射しました。

ミサイルは「ロフテッド軌道」で発射したとみられ、約50分間飛行。最高高度は約4500キロに達しました。ミサイルは青森県西方沖250キロの日本の排他的経済水域内の日本海に落下したと推定されています。

北朝鮮の朝鮮中央テレビは金正恩朝鮮労働党委員長の立ち会いの下、新型のICBM「火星15」の発射実験に成功したとする政府声明を発表し、「米本土全域を攻撃できる……超大型の重量級核弾頭を搭載可能」と述べました。

「ロフテッド軌道」で発射したのは、アメリカを直接刺激はしたくないが、攻撃能力があることを見せるためだったからだと思いますね。

8月に北朝鮮がグアムを狙うと宣言したとき、アメリカは直ぐさま報復すると声明を出しましたからね。それが効いているのだと思います。

それでも、ニューヨークの国連本部のそばにオフィスを構えている北朝鮮国連代表部のある外交官はNNNの取材に対し「ミサイルは日本でなくアメリカに向け発射したものだ……アメリカが挑発をやめない限り北朝鮮はミサイル開発を続ける」と述べています。これが本音でしょうね。

今回のミサイルは「ロフテッド軌道」で飛ばしているので、当然、飛距離そのものは1000キロ程度しか飛んでいないのですけれども、高度はこれまでの最高高度に達しています。

アメリカの政策研究機関「憂慮する科学者同盟」のミサイル技術専門家デビッド・ライト氏は「通常軌道で発射された場合、飛距離が13000キロ以上になる……ワシントンだけでなく、米本土のどの場所にも到達可能だ」とコメントしています。

ただし、今回は弾頭部分が軽量だった可能性があるとも指摘した上で「実際の核弾頭ははるかに重く、これほど長距離を飛ばすことはできない」としています。

また、アメリカのジョンズ・ホプキンス大の北朝鮮問題研究グループ「38ノース」のアナリスト、マイケル・エルマン氏は「ミサイルの性能と信頼性を確立するにはもっと多くの実験が必要だ」と完成に1年以上かかるとの見方を示しています。

これらの分析の通りだとすると、北朝鮮のミサイルは実用にはまだ達していないという見方も出来ます。けれども、北朝鮮は発射する度に性能を向上させていることは確かですし、「38ノース」の分析でも完成まで1年以上といった猶予しか示していません。10年単位ではないのですね。

安倍総理はトランプ大統領と電話で会談し、北朝鮮への圧力強化を重ねて確認。中国のさらなる役割が重要との認識を共有しました。そして官邸で記者団に「断じて容認できない……いかなる挑発行為にも屈することなく、圧力を最大限まで高めていく」と強調しました。

またアメリカのトランプ大統領も「この状況にわれわれは対処していく」と述べました。ただ記者団から北朝鮮への対応が変わるかどうが問われると「われわれの対応は何も変わらない。非常に深刻な事態だととらえている」とも述べています。

確かに深刻な事態です。

日経論説委員の鈴置高史氏は、核兵器による報復が恐ろしくて容易に核で先制攻撃できない、即ち「相互確証破壊」は「『先制核攻撃すれば自らも悲惨な目に遭う』と冷静に判断する常識を相手も持つ」ことが大前提であり、自分が気に入らないことがあると「先制核攻撃するぞ」と威嚇する非常識な北朝鮮相手には成り立たないと警鐘を鳴らしています。

中国からの特使を撥ね付けたタイミングでのミサイルの発射。対外的には対話などしないというメッセージになります。

北朝鮮との対話路線を探るティラーソン国務長官は今回のミサイル発射について「現時点において、外交的な選択肢は引き続き実行可能であり、開かれている。米国は、非核化および北朝鮮の好戦的な行動を終わらせるための平和的な道筋を見つけることに引き続き力を尽くす」との声明を出していますけれども、その道筋はもう殆ど残されていないようにも感じます。

あるとすれば、先日ジンバブエで起こったような軍事クーデターくらいでしょう。

少なくとも半島有事へ針が進んだことは間違いないと思いますね。

日比野庵

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