「北朝鮮が日本を威嚇する3つの理由」

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日米韓同盟、アキレス腱は日本か

北朝鮮が9月15日、日本上空を通過する弾道ミサイルを発射した。8月29日に続き2回目だ。米国が、北朝鮮の経済を支える中国に圧力を強める中、北朝鮮は、米国と緊密な協力関係にある日本を威嚇し、上空に向けてミサイルを発射するという構図ができあがりつつある。北朝鮮が日本を狙う理由は何なのか?

安倍首相が、北朝鮮による弾道ミサイル発射の報告を受けたのは、インド訪問の帰途、政府専用機に乗っていた時だった。機内から国民への情報提供などを指示し、専用機から降りたあとは、首相官邸で記者団に「北朝鮮の暴挙は断じて容認できない」と厳しく非難した。

首相は、インドでも、モディ首相との会談で核・ミサイル開発を進める北朝鮮に対し、国連安全保障理事会の追加制裁決議を完全に履行して、圧力を最大化するよう国際社会に訴える共同声明を発表したばかりだった。

安倍首相の「圧力強化路線」は、トランプ米大統領と歩調を合わせたもので、11日にまとまった新たな対北朝鮮国連制裁決議でも、首相や河野太郎外相らが総出で、関係国に決議採択を働き掛けている。

ところが北朝鮮は最近、米国ではなく、日本を批判の対象にするケースが目立つ。

たとえば、朝鮮中央通信(KCNA)は9月14日、「日本列島は核爆弾により海に沈められなければならない。日本はもはやわが国の近くに存在する必要はない」とする北朝鮮の朝鮮アジア太平洋平和委員会による報道官声明を伝えた。

今年に入って北朝鮮は、日本の米軍基地を標的としていることを繰り返し表明している。

さらに朝鮮中央通信は8月9日、「敵基地攻撃能力」保有の検討に言及した小野寺五典防衛相や、安倍晋三首相を名指しで非難し、「日本列島ごときは一瞬で焦土化できる能力を備えて久しい」と威嚇したが、「海に沈没させる」という荒っぽい表現は今回が初めてだ。

その翌日に、ミサイルの発射が行われた。最大高度800キロの高度に達し、北海道上空を飛び越えて3700キロを飛行した。中距離弾道ミサイル「火星12型」との分析が有力だ。

なぜ日本を狙うのか。理由は3つ考えられる。

まずは、北朝鮮がトランプ大統領の出方に不安を感じているためだろう。米国は外交的な手段による問題解決を最優先するとしているが、「あらゆる選択肢を検討している」として、武力行使も排除していない。

今回の国連安保理の決議採択についてもトランプ氏は12日、「とても小さな一歩で、大きな取引ではない。どれだけ影響があるか分からない」「最終的に起きないといけないことと比べると、とるに足らない」と不満を表明している。

この状態で、北朝鮮がこれまで主張してきたように、米軍基地のあるグアムに向かってミサイルを発射した場合、強烈な反撃を加えられる危険性もある。このため、攻撃力が向上していることだけを示したかっただろう。

2つ目は、米国と直接対決するよりも、日本をターゲットにすることで米国の動きを抑えられると考えている可能性だ。韓国には4万人の在韓米軍がおり、THAAD (サード=終末高高度防衛)という強力なミサイル防衛システムも導入されている。

しかし日本は、ミサイル防衛システムが不十分なうえ、国民も不慣れなため混乱を引き起こすことができ、米国も北朝鮮への行動を抑制すると読んでいるのではないか。いわば日米韓の協力体制における「アキレス腱」を狙う戦略だ。

3つ目は、北朝鮮が、米国との対話を模索しはじめているのかもしれない。

北朝鮮は、9月3日、大規模な核実験を行い、「大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載する水爆実験に成功した」と主張している。ここに来てミサイル発射の成功率も上がっている。

いったんこの辺で米国との接触を図り、北朝鮮への体制保証や、核保有国としての受け入れるよう迫ろうと考えているーこんな可能性もありそうだ。 

国連安全保障理事会は、日本政府からの要請を受けて今回の弾道ミサイルの発射にかんする緊急会合を開く。しかし、核実験にに比べ、ミサイルの発射については各国の姿勢がバラバラなため、発射を「強く非難する」とともに、発射の即時停止を求める議長声明を採択する程度しかできないだろう。

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