「世界金融」

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ボリビア大統領はなぜ今「IMFと世界銀行からの自立」を宣言したのか?

ボリビア大統領が「IMF・世界銀行からの自立宣言」を行いました。南米の片隅で起きたことですが、いかに米ドル・米国が弱体化しているかを推し測れます

米国一強の時代は終わった。世界は緩慢な地殻変動を起こしている

ボリビア大統領「国際金融組織からの自立宣言」

ボリビア大統領が「国際金融組織からの自立宣言」を行ったとの報道がありました。南米の片隅で起きていることであり、大きな動きとは言えないでしょう。しかし世界は緩慢ですが、地殻変動を起こしています。

報道のポイントは下記の通りです。

ボリビアのEvo Morales大統領は、IMF国際通貨基金及び世界銀行はボリビアに有害な影響をもたらすので、そこからの自立をすると同国のテレビ報道で語った。

Morales大統領は、自身のツイートで「1944年にブレトンウッズ体制は終焉し、IMFと世界銀行が誕生したが、それ以来、この2つの組織がボリビアの経済や世界経済の運命を握ってきた。しかし現在、ボリビアとしては、この2つの組織からの完全独立を宣言することができるようになった」と述べている。

Morales大統領は「この2つの金貸し組織に対して、ボリビアは大きく依存してきた。それは、ボリビア政府中枢にIMFの事務所が置かれていただけでなく、政府閣議にさえもIMFの役人が出席してきたことで、充分に理解できることである」とも述べている。

現在、ボリビアは南米共同市場(Souther Common Market)に加盟する動きを進めている。

過去に対外債務で苦しんだボリビアは、借金返済の一環として、2000年に米国のBechitel社によってボリビアの最大都市Cochabambaの上水道の水利権を召し上げられるという事態に発展して大騒乱となったことがある。

この抵抗運動の発端は、IMFと世界銀行が採った経済政策(債務返済手段としての)が原因であった。当時の抵抗運動の主眼は、水利権の収奪に対するものだけでなく、公的サービスの削減、国営事業の民営化、給与引き下げ、労働者の権利の収奪等の国民窮乏化政策に対してのものであった。

2006年にMorales大統領が政権を握り、医療健康、教育プログラム、貧困対策プログラムに関する支出は45%伸びている。石油産業の国営化により、貧困層は60%から40%に減り、文盲率は13%から3%へ、GDP成長率は年率5%(過去の3倍)に伸び、最低賃金は4倍となっている。

記事に登場するSouthern Common Market(MERCOSUR)とは、南米諸国家の共通市場圏を作ろうとする動きです。正式加盟国は、Argentina, Brazil, Paraguay, Uruguay, Venezuela。正式加盟国ではないが準加盟国になっているのは、Bolivia, Chile, Colombia, Ecuador, Peru. Mexicoとなっています。

<ボリビアの最低月額賃金の推移>

IMF(国際通貨基金)や世界銀行という貸し手は、世界覇権通貨の米ドル支配の根幹部分です。南米の国家がここからの独立を公言することなど、以前には考えられなかったことです。いかに米ドル、米国が弱体化しているかが推し測られます。

南米の小国の叫びなど、ごまめの歯軋りと言えましょう。しかし今の世界は、緩慢であっても地殻変動を起しているのです。

米国一強時代の終焉。イランとイラクの「軍事協力」は何を意味するのか?

米国一強時代の終焉。イランとイラクが軍事協力で合意

米国一強の時代は終焉し、各国は力の均衡を求めるべく流動化しています。イランとイラク「軍事協力の合意」の報道を紹介します。

報道のポイントは下記の通りです。

2017年7月23日、イラン・イラク間の軍事協力の合意文書に、両国の代表としてイラクのErfan al-Hiyali防衛相とイランのHossein Dehqan防衛相が署名を交わした。

イスラム国との戦闘において、イラン・イラク両国は協力して軍事行動を取ってきた経験を活かして、今後もさらに国境防衛、訓練、兵站、技術、軍事的支援等の軍事的同盟関係を強化するとのことである。

イラクのNouri al-Maliki副大統領は、イスラム国討伐、モスルでの勝利は米国が達成したものではなく、イラク兵士及びイラク空軍が勝ち得たものであると発言。これは米国のモスルで勝利したという主張を、真っ向から否定するものである。

また、Maliki副大統領は、米国が軍事的影響を維持するためにイラク国内に複数の軍事基地を設営する計画に対しても拒否し、「今後もイラク国内に米軍基地を設営することに反対する」と述べた。

これは米国が、モスル奪還後も米国軍のイラク駐留プランを公言していることに反発したものである。

イラクとしては、戦乱が収まれば「さっさと外国軍は帰国して欲しい」との気持ちでしょう。搾取されるのが、明々白々だからです。

「軍事的・政治的同盟」を望むイラクがロシアに急接近、進む世界の多極化

イラクがロシアに急接近

力の均衡を望むイラクの新たな動きを紹介します。イラクがロシアに接近しています。

報道のポイントは下記の通りです。

イラクがロシアと軍事的及び政治的同盟関係を望む動きを示した。最近イラクは、イラン、ロシア、シリアに接近しており、他方で米国から距離を置く動きを活発にしている。

イラクのNouri al-Maliki副大統領はロシアを訪問し、ロシア連邦との軍事的・政治的同盟関係を築きたいと公言した。

Maliki副大統領は、ロシア連邦議会上院議長のValentina Matvienko女史と会談後、「ロシアとイラクは昔から歴史的に強い関係があり、我国にロシアの政治的、軍事的なプレゼンス(駐留との意味も含まれる)を望んでいる。これにより、均衡が生まれ、それが中近東地域諸国の利益となる」と述べた。

さらに、ロシアのSergey Lavrov外相との会議で、Maliki副大統領はイラクが“外国からの制裁”を受けないように、イラクはロシアと緊密に協力する重要性について述べた。イランとイラクの緊密な関係を仮定すると、同副大統領が警告する相手は米国となる。

これはつい最近、イラクはイランと軍事同盟を締結しているからである。
また、イラク副大統領は、最近のシリアにおけるロシアの役割を高く評価していた。

イラクの最近の政情は安定しており、米国は、政治的な影響力を次第に失っている。

Maliki副大統領は、イスラム国退治においても、イランの果たした役割を称賛し、米国を非難している。そしてさらにロシアとの関係も改善し、良い協力関係を構築したいと望んでいるのだ。

イラクは、米国によって最もコントロールされている中近東国家とみなされているが、序序にその独立国家としての意識が高まり、米国の手の中からすり抜けようと動いているのだ。

もしMaliki副大統領の願いがかなって、米国がイラクから撤退すれば、1975年の南ベトナムからの撤退以来、最も劇的な撤退劇となるだろう。

このように、米国一強から、多極化しているのです。緩慢な速度ですから、なかなか気付きにくいのですが、この勢いは少しづつ増しています。

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