「戦争危機」

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韓国の文政権の対話路線を無視するかのように、北朝鮮のミサイル発射が続いてる。

7月28日深夜11時41分頃、日本公海上に落ちた北朝鮮のミサイルは、7月4日に打ち上げられた「火星-14型」よりさらに進化した大陸間弾道ミサイル(ICBM)であることが明らかになった。 韓国国防部によると、今回のミサイルの最高高度は3700キロ、飛行距離は1000キロ以上で、4日に発射された「火星-14型」より高度は900キロ近くも上がり、飛行距離は60キロ以上も延びた。

韓国国防部は弾道ミサイルの最高高度に3~4を乗じて射程を計算する方式を採用、それによると射程距離は一万キロ以上になるものと推定した。平壌からアラスカまで6000km、サンフランシスコまでは9000キロほどの距離であることを考慮すれば、今回のミサイル実験の成功で北朝鮮はもはや米本土を十分に攻撃できるミサイルを保有することになったと言える。

北朝鮮が今後追加的な核実験を続け、このミサイルに搭載する核弾頭の小型化や性能改良に成功すれば、米本土は北朝鮮の核の直接的な脅威に置かれることになる。

このように急速に発達する北朝鮮のミサイルや核兵器の脅威を前に、米国をはじめとする全世界が緊張を強いられている。特に国家の安保を米韓同盟と米国の核の傘に絶対的に頼っている韓国としては、今回発射されたICBMが東アジアの安保の「ゲームチェンジャー(GAME CHANGER=状況を覆すことができる変数)」になりかねないという危機感をもって受け止められている。

核弾頭を装着したICBMが米本土を狙う状況になれば、米国は対北朝鮮政策の全面的な修正を図る可能性があり、場合によっては在韓米軍の撤退や米韓同盟の破棄のような絶体絶命的危機に発展しかねない。

これまで対北朝鮮融和政策を基調とし、対話を通じた核問題の解決に力を注いできた文在寅(ムン・ジェイン)政権も、今回のICBM追加発射を「レッドラインの臨界点まで辿り着いた挑発」と見なし、迅速に対応する姿を見せた。

文在寅大統領は29日未明の午前1時にNSC(国家安全保障)会議を緊急招集した。
 ①THAADの追加配備
 ②戦略兵器を用いた米韓連合軍による強力な軍事訓練の展開
 ③韓米間の対北朝鮮抑止力の強化方策についての協議
 ④必要に応じた独自の対北朝鮮制裁案の検討
 などを取り決めた。

ミサイル発射直前までは南北軍事会談の開催や、秋夕(韓国の旧盆:今年は10月4日)に合わせた離散家族再会事業、来年1月をめどにした平昌五輪の南北合同チーム構成の提案など、北朝鮮に絶えず対話や交流を求めてきた韓国政府だったが、ここにきて予想を上回る強硬な対応に出ざるえなかったのだろう。

特に、ミサイル発射当日の28日午前には現在中断されているTHAAD配備について、最短でも10ヵ月~15ヵ月もかかるとされる環境アセスの手続きを踏むと発表していたにもかかわらず、わずか15時間半後に「即刻的な追加配備」に急旋回したことは、文政権の対北朝鮮政策に大きな変化が起こったような印象を与えた。

韓国のマスコミは、今度こそ文政権の対北朝鮮路線が対話中心から強硬対応へ転じたと分析し、対話と制裁を並行して問題を解決していくという文政権の対北政策の基調である「ベルリン構想」の修正が避けられないという観測を示した。

しかし、大統領府と関連省庁の雰囲気はマスコミの予測とは違っていた。大統領府は数回にわたって、ベルリン構想の動力が失われないように対話の手綱を手放さないという文大統領の意思は明確だと明らかにした。

主務省庁である統一部も、対話と制裁を並行するという既存の方針に変わりはないとしながら、米国の対北朝鮮政策もベルリン構想と大きく変わらないと主張した。

さらに、北朝鮮に対しては南北離散家族再会や赤十字会談に応じることを重ねて促した。

文化観光体育部は30日、平昌五輪に対する世論調査の結果を発表し、国民のほぼ50%が北朝鮮の平昌五輪参加を肯定的に見ていると評価、平昌五輪を通じた南北交流に対する期待を手放さないように見えた。

THAAD配備についても、当初の強硬対応が嘘であったかのように遅々として進んでいない。 29日に大統領がTHAADの追加配備を指示したにも関わらず、現在まで国防部や大統領府は何の後続措置も出していない。

大統領府は主務省庁である国防部がすべきことだという立場だが、一方で国防部では、前回直前までTHAAD発射台の追加搬入を大統領府に報告しなかったと厳しく追及されたことに懲りてか、今回は具体的な配備時期や計画を発表せず、大統領府の顔色ばかりうかがっている様子だ。

与党・民主党ではTHAAD配備に反対してきた議員たちを中心に、今回の追加配備の指示に対する反発が起きている。大統領府は「臨時」配備だという点を強調し、最終決定は環境アセスを経てから行うと反対世論に対して説得を続けているが、星州(ソンジュ)に集結しているTHAAD配備に反対する各団体は、命をかけてでも阻止すると「強力闘争」を予告している。

8月15日には今一度、ソウルの米国大使館を包囲しての大規模なデモを展開する計画も立てられている。

米国と日本の首脳が緊急の電話会談を持ち、北朝鮮問題対応についての意見を交換していた間、文在寅大統領は予定より1日遅れた30日から6泊7日間の夏休みに入った。「休暇を取り消せば、国民に余計な不安を引き起こしかねない」という理由で大統領府を去ったのだ。

トランプ大統領と文在寅大統領が未だに電話会談を行っていないことに対し、北朝鮮との対話のスタンスを維持しようとする韓国政府が、トランプ大統領の機嫌を損ねたのではないかという推測も起きている。

野党や保守的な一部マスコミからは、北朝鮮問題をめぐる国際社会の議論から韓国が疎外される「コリア・パッシング(KOREA PASSING)」が憂慮されるとして批判の声が起きており、文在寅政権の対北朝鮮路線の根本的な変化が強く求められている。

7日、休暇から復帰した文大統領はやっとトランプ大統領と電話会談を行った。大統領府は「北朝鮮の相次ぐ挑発による韓半島の厳重な安保状況認識を共有し、韓米両国の協力及び対応策を集中的に協議した」と、その内容を伝え、コリアパッシングの憂慮を否定した。

8月4日に発表された韓国ギャラップの最新の世論調査によると、文大統領に対する韓国国民の支持率は77%と、依然として高い水準を保っている。高い支持率は、制裁より対話に重点を置いている既存の対北朝鮮路線を維持できる原動力になっている。

しかし、同世論調査では、THAADの追加配備に賛成する意見も72%に達している。これは、韓国国民が期待している対北朝鮮政策は、文在寅政権のそれとは異なるかもしれないことを暗示する。

北朝鮮の度重なる挑発で深刻な安保危機に直面している韓国の国民は、文政府の対話中心の対北朝鮮路線をいつまで支持してくれるのだろうか。

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