「米軍から学ぶ」

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米軍で採用され、空軍のマニュアルにも記載されているメール作法を紹介。内容を瞬時に把握させる簡潔明瞭な書き方は、ビジネスにも役立つはずだ。

軍隊では、下手な構成のeメールは作戦の成否を左右しかねない。

私は軍務に就いていた頃、任務の成功率を最大化するためのメール構成を学んだ。そして退役後は、それらの知識を会社でのメールにも適用してきた。その結果、より簡潔明瞭なメール文章を書けるようになり、同僚とクライアントから質の高い返事を迅速に引き出すことができている。

軍事レベルの明確さでメールを構成するポイントを、以下に3つ挙げよう。

1.件名にキーワードを含める
メールの受信者が最初に目にするのは、送信者名と件名だ。したがって件名には、メールの目的、そして具体的に何をしてほしいのかを明記することが必須である。

軍人はメールの場合、メールの性質を表すキーワードを件名に入れる。以下はその数例だ。
・行動(ACTION):受信者に何らかの行動を義務づける
・署名(SIGN):受信者の署名を要する
・情報(INFO):情報提供を目的とし、返信や行動は要しない
・決定(DECISION):受信者による意思決定を要する
・申請(REQUEST):受信者に許可や承認を求める
・調整(COORD):受信者による調整、または受信者との調整を要する
 部下に最新状況をメールするときには、件名を「【情報】最新状況」としてみよう。

上司への休暇願いであれば、「【申請】休暇」がよい。プロジェクトマネジャーが、週次の実施報告書に対する回答をメンバーたちに義務づける場合は、「【行動】週間実施報告書」だ。

こうした区別をわざわざ大文字にしてまで強調する必要はあるのか、と思われるかもしれない。しかし、こうすれば受信箱で間違いなく目立ち、相手にメールの目的が何かを考えさせずに済む。そして、相手の受信箱を散らかす前に、自分が本当に望んでいることは何かを吟味することにもなる。

なぜ「はじめに結論を述べる」のか?
 
2.はじめに結論を述べる

軍勤務者はメールの冒頭に、BLUF(Bottom Line Up Front:はじめに結論を述べる)と呼ばれる、短くて歯切れのよい文を置く(軍ではあらゆるものに頭字語がある)。

この部分で、メールの目的と必要な行動を述べる。BLUFでは5Wをただちに示さねばならない。who(誰が)、what(何を)、where(どこで)、when(いつ)、why(なぜ)だ。そして効果的なBLUFは、読み手にとって最も重要な情報のみを抜き出す。

このBLUFを見れば、告知内容、決定事項、新制度の発効日がすぐにわかる。読み手は必ずしも、この決定に至った背景情報を知りたいとは思っていない。「このメールは自分にどう影響するのか」を知りたいだろうから、BLUFは毎回それに答えなくてはならない。

私は、社用のメールではBLUFという頭字語は使わない。受信者にはその意味がわかりにくいからだ。代わりに、「結論(Bottom Line)」を太字でメールの冒頭に記している。場合によっては結論を黄色でハイライトして、要点を強調する。以下はBLUFを社用メールに応用した例文だ。

件名:【情報】在宅勤務
シャノンへ
結論:当社では12月1日から、従業員が在宅勤務できる日数を週3日から週1日に減らします。
背景:
・この取り組みは、チームの士気を高め協働を促進するためです。
・経営委員会の全メンバーが、この決定を支持しています。

シャノンは【情報】という表示を見て、回答不要であることを知る。そして結論を読めば、情報をすぐに把握できる。この件は会社の方針の大きな変更であるため、背景事情が示されている。これが最終決定であり経営陣に支持されていること、そして、会社にプラスの効果が及ぶよう意図されていることだ。

いかに「無駄を省く」のか?

3.無駄を省く

軍人は、メールは短いほうが効果的であることを理解している。このため全文を1つのウィンドウに納め、受信者に画面をスクロールさせずに済むよう努める。そして、受動態を使うと文が長くなりやすいので、なるべく避ける。

空軍のマニュアルから引用すれば、「動詞の受動態は文を長くわかりにくいものにするだけでなく、しばしば混乱を招く」のだ。

代わりに能動態を使い、動詞よりも名詞を先に置こう。すると行動の主体が明確になる。能動態を使うことで、「動詞に仕事をさせる」(補足的な語句がいらないようにする)のだ。たとえば軍勤務者は、「工場はF18によって爆撃された」ではなく、「F18が工場を爆撃した」と言う。

短いメールのほうが通常は効果的なのだが、長文のメールが多く目につく。それは軍でさえ例外ではない。説明を加える必要があるなら、BLUFの後に背景情報として箇条書きすべきだ。そうすれば先の例文のように、受信者はすぐにメッセージを把握できる。

最後のポイントとして、軍勤務者は添付文書をファイルにして送るよりも、(保存先の)リンクを貼る。受信箱の容量への負担を避けるためだ。受信者は当該文書があるサイトへのアクセスを強いられるわけだが、そこには文書の最新バージョンが保存されているはずだ。加えて、そのサイトでは受信者がファイル閲覧のためのしかるべきセキュリティ証明を所持しているかが問われる。したがって、閲覧を許されていない相手に誤ってファイルを送ることもなくなる。

以下の社用メールの例では、キーワード付きの件名、結論、背景の箇条書き、能動態を使っている。

件名:【情報】会議の変更
シャノンへ
結論:週次の報告会議を、CFOの予定に合わせて木曜日の午後2時(米中部標準時)としました。
背景:
・他の時間帯も検討しましたが、この時間だけが可能です。あなたも電話で参加し、損益計算書について説明してください。
・CFOは、木曜日はボストンにいて、社外で経営委員会と会う予定です。
・彼は電話会議の前に、こちら(リンクを挿入)の財務報告書に目を通したいそうです。

米軍のメール作法を取り入れることで、文書に真の明確さがもたらされる。そして、同僚やクライアントのメールにも、同じ効果を及ぼすだろう。

HBR.ORG原文:How to Write Email with Military Precision November 22, 2016

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