「中比」

画像の説明 比の対中外交 価値観共有を難しくした

この国との間で「法の支配」の基本的原則と、民主主義の価値観を共有できるのか。懸念を抱かざるを得ない。

フィリピンのドゥテルテ大統領が就任後初となる中国訪問で、南シナ海問題を「2国間の対話と協議」に委ねるとする、習近平国家主席の提案に応じた。

それだけではない。人民大会堂での経済フォーラムでは、「軍事的にも経済的にも米国と決別する」と言い切った。

いずれもフィリピンが中国からの経済支援を期待し、関係改善を優先させたものといえる。

中国の南シナ海支配を否定したオランダ・ハーグの仲裁裁判所の裁定で、フィリピンは自ら手にした「勝訴」を事実上棚上げしたことになる。それは中国ペースの外交に乗ったのと同じだ。

中国は、南シナ海を「平和で自由な海」として守る国際秩序の法的枠組みを無視しつづけている。ドゥテルテ氏の姿勢はそれに手を貸すもので、地域における脅威を増大させかねない。

カービー米国務省報道官が不快感を表明したのは当然である。

南シナ海問題は、フィリピンなど当事国・地域の領有権問題にとどまらない。中国の進める人工島の造成や軍事拠点化は、日米など域外国にとっても、航行の自由をはじめとする法的権利を脅かすものだからだ。

こうした情勢認識を共有し、アキノ前政権との間で米国は軍事協力の強化に踏み切った。日本が供与する巡視船は、フィリピンへの引き渡しが始まっている。

暴言癖にとどまらず、ドゥテルテ氏の外交対応は著しく一貫性を欠いている。日米としては迷走するフィリピンを落ち着かせ、南シナ海が中国の支配海域となることを全力で防がねばならない。

フィリピンが本気で「米国との決別」を目指すというなら、米国と同盟関係にある日本も、従来の対比姿勢を維持することは困難になるだろう。

ドゥテルテ氏は25日から日本を訪問し、安倍晋三首相らと会談する。この機会に、日本側は同氏に対中、対米姿勢の発言の真意をただすと同時に、翻意を求める努力を尽くす必要がある。

見識に欠けるドゥテルテ氏の外交姿勢を静観していたのでは、日本自身の国益と、国際秩序が脅かされる。

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