「特赦」

画像の説明 朴槿恵大統領は昨日(12日)、朝鮮半島解放71周年を記念して犯罪者、服役者、前科者らに対する特別赦免(特赦)を実施した。

2013年2月に政権に就いてから3度目の「恩赦」だ。

韓国は1948年の建国以来、これまで延べ96回にわたって特赦を実施してきた。軍事政権から民政に移行した1992年以降だけをみると、金泳三政権は9回で704万人、金大中政権は6回で1、037万人、盧武鉉政権は8回で437万人、李明博政権は7回で470万人、そして朴槿恵政権は今回を含め3回で655万人を赦免している。

この24年間で計33回、その対象者数は延べ3,303万人に達する。韓国の人口は約5千1百万人なので、国民の6割以上がその「恩恵」を授かっている勘定になる。

大統領就任日(2月)や独立運動記念日(3月1日)、解放記念日(8月15日)などの慶祝日に合わせて行われるが、釈迦の誕生日(4月8日)やクリスマス(12月25日)にも実施される場合もある。「罪を罰して、人は罰せず」という言葉を韓国ではよく耳にするが、赦免、恩赦制度があるのはそのためのようだ。赦免、恩赦が滅多にない日本からすれば韓国は「犯罪人天国」に見えるかもしれない。

というのも、過去に反乱首謀罪や天文学的数字の収賄容疑で全斗煥大統領と後任の盧武鉉大統領が金泳三政権下の1996年にそれぞれ死刑判決と無期懲役(その後懲役17に減刑)を宣告され、服役したが、2年後の金大中政権下で特赦され、刑務所から出てきているからだ。

重罪で服役して2年もしないうちに保釈金も積まずに出てきて、「死刑囚」の全元大統領にいたっては金大中大統領の大統領就任式の晴れやかな舞台に「来賓」として登壇していたわけだから日本ではまずあり得ないことだ。

今回も約142万9千人が特赦の対象となったが、過去同様に圧倒的多数は道路交通法違反者でその数は142人万2千人に上る。一般刑事犯は中小及び零細商工人742人を含め4,803人。

財閥では昨年特赦された財閥3位のSKグループの崔泰源会長(背任・横領罪で懲役4年)と10位のハンファグループの金玄中前副会長(背任・横領で懲役4年)それに同グループの洪銅玉・麗川NCC会長(懲役4年)らに続き、今年も20位のCJグループの李在賢会長が特赦されている。

背任・横領で懲役4年、罰金51億ウォンの実刑判決を受けたファンファグループの金升淵会長と崔泰源SKグループ会長の実弟の崔再源首席副会長(横領罪で懲役3年6カ月)、それに中堅財閥であるLIGの具本尚前副会長らは除外された。

除外されたというより、できなかった。金升淵会長は執行猶予の状態にあり、また過去2度の赦免経歴があること、崔再源首席副会長は2週間前に仮釈放されがばかりであること、具本尚前副会長は多くの被害者を出した経済犯であることなどからどうにもならなかったようだ。

李在賢CJグループ会長は2013年7月にソウル中央地検特捜部の調査を受け、1、600億ウォンの租税脱税と背任、横領の嫌疑で拘束、起訴され、懲役2年6カ月、罰金252億ウォンの宣告を受けたが、控訴していた。

李在賢会長は持病を理由に拘束執行停止を10回も申請するなど実際の収監期間は4カ月に過ぎなかった。

従って、病院生活を送っている最中に赦免されたことになる。健康上の問題から、特赦されたが、復権(経営復帰)まで認められたことから国民の間では「不正経済人の特別赦免は経済正義と司法正義の原則から望ましくない」との批判の声が上がっている。特赦の規定では刑の執行率が不足している者は対象外とされているからだ。

財閥のオーナーの場合は、実刑を宣告されても入院→執行猶予→特赦→釈放という過程を辿るケースが多い。

今回特赦から外れたファンファグループの金升淵会長も2012年8月に懲役4年の実刑を宣告されたが、5カ月しか収監されておらず、2013年1月からは健康上の理由による拘束執行停止により民間の病院で治療を受け、2014年2月には懲役3年、執行猶予5年に減刑され、病院から出てきている。

朴大統領は2012年の大統領選挙の公約として「大企業の支配株主・経営者の重大犯罪については赦免権を厳格に制限する」と約束していたが、国民への公約はどうやら守られてないようだ。

今回の特赦の措置が朴大統領の支持率にどう反映するか、興味深い。

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